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日本国内の佐渡金山世界遺産登録祝賀ムードに水を差す韓国の野党とメディア! その理由は?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
佐渡金山(写真:イメージマート)

 長年の悲願だった「佐渡島の金山」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に正式に登録が認められたことで地元の新潟を含め日本では歓迎、祝賀ムード一色だが、登録に反対せず、賛成したはずの韓国ではどういう訳か、雲行きがおかしい。野党第1党の「共に民主党」は賛成した韓国政府の対応を批判し、またマスコミの反応も総じて冷やかで、「日韓の合意」に問題さえ提起している。まさに、前途多難である。

 当初、遺産登録に反対していた韓国政府は日本政府が朝鮮半島出身者が佐渡金山で労働させられた歴史を現地で展示し、全体の歴史を忠実に反映させることを約束したことで賛成に回ったが、「共に民主党」のNo.2、朴賛大(パク・チャンデ)院内代表は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が賛成したことについて「日本の戦争犯罪の歪曲になすがままに手を挙げたこの政府は大韓民国の政府なのか、日本の総督府なのか見分けが付かない」と、尹政権を揶揄し、厳しく批判していた。

 また、「尹大統領は昨年、オムライス一皿で強制徴用工被害者らの血と泪を売り飛ばし、今度は佐渡金山まで日本に与えてやった」と述べ、「外交無能と惨事に対する真相調査を行い、厳重に責任を問う」と、国会で追及する構えをみせた。

 国会では野党は「共に民主党」(170議席)と最も反日色の強い第2野党「祖国革新党」(12議席)とだけで300議席のうち182議席占めているので今後外交委員会での追及は必至だ。

 問題は世論、マスコミの反応だが、この件を社説で取り上げたのは意外にも少ない。「ハンギョレ新聞」、「世界日報」、「毎日経済」、「韓国日報」、「釜山日報」の5紙と「聯合ニュース」だけで、3大大手紙の「朝鮮日報」と「東亜日報」、それに「中央日報」は社説では扱っていなかった。

 それでも各紙とも内容は日韓両政府にとって実に手厳しいものだった。

 例えば、「韓国日報」(7月29日)は「佐渡鉱山世界遺産登録 日本の歴史歪曲の小細工を容認してはならない」との見出しを掲げ、以下のように主張していた。

 「過去史は韓日関係悪化の主要因である。日本政府が強制動員問題の責任を回避し、消極的な対応で一貫したのは周知の事実である。2015年端島(軍艦島)近代産業施設を世界遺産登録した際、ユネスコの『朝鮮人強制動員の歴史を公表し、犠牲者を追悼するための後続措置を講ぜよ』との勧告が履行されなかったのがその代表的な例だ。2020年に東京に開館した産業遺産センターは強制動員の歴史を知らせる代わりに『韓国人に対する差別はなかった』との日本の歪んだ主張で溢れていた」

 「日本のユネスコ大使は『世界遺産委員会の決定に関する日本のコミットメントを心に留める』と述べていたが、『強制動員』については言及してなかった。一方、我が外交部の高官は『2015年に端島が登録された際、強制労働を認める概念があることから過去の約束を継続していく繋がりは確保した』と主張している。苦痛な歴史が正確かつ適切に記録されるのが我々の目的だ。『端島の事例』が再現すれば、改善の兆しを見せている日韓関係は必然的に大きく後退するであろう。韓国政府も日本の後続措置の履行を注視し、小細工を許してはならない」

 経済紙の「毎日経済」の社説(28日)は「佐渡鉱山『徴用歴史』反映 未来志向的な韓日関係の契機に」と、見出しを見る限りは、歓迎しているように見える。しかし、この社説でも最後には以下のように注文を付けていた。

 「日本政府は我々の要求を受け入れ、現地に朝鮮人徴用労働者らに関する展示館を設置した。日本が今後、展示館をなくしたり、縮小、歪曲したりすることのないように我が政府は持続的に監視すべきである。その上で両国政府は信頼を基盤に韓日関係をより未来志向的に発展させていくべきだ。しかし、安心するのはまだ早い。日本は2015年、日本が軍艦島などの明治時代の産業遺産を世界遺産に登録した時も朝鮮人強制労役を含む『すべての歴史』を知らせると約束していた。しかし、それは守られなかった。日本政府が再び約束を破り、歴史を歪曲するという過ちを犯さないことを願っている。さもなければ、韓日関係は言うまでもなく、北東アジアの安全保障を悪化させた国家として(日本は)烙印を押されることになるであろう」

 この他、「ハンギョレ」(7月28日)が「強制動員の明示もなく佐渡金山世界遺産を認めた政府」、「釜山日報」(7月29日)が「強制労役文言もなく世界遺産に登録された佐渡鉱山」、「世界日報」(7月28日)「佐渡鉱山世界遺産登録 日本は『過去史反省』の後続措置を履行せよ」などの見出しを掲げていたが、最後に韓国政府から財政支援を受けている「聯合ニュース」の社説(7月28日)「佐渡鉱山世界遺産登録 日本の真心のある措置が伴うべき」を引用する。

 「我々は日本の言葉を信じたために後頭部を叩かれたとされる2015年の端島炭鉱登録事例を思い出す。(中略)重要なのは真心である。強制動員の『強制性』が日本の展示物や追悼式開催の過程でどれだけ強調されるのか、依然として不透明な部分がある。世界遺産委員会での日本代表の発言やこれまでに確認された展示物に朝鮮人労働者が『強制労働』に処せられたとの明示的な表現がないとも指摘されている。日本は約束通り、強制動員の犠牲者を追悼するための後続措置を真摯に講じるべきだ。それが韓日関係の回復と速度を加速させる道だ。韓国政府も日本が約束を履行するようもっと強く圧迫し、監視すべきである」

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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