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強い寒気南下で大気不安定の日本列島

饒村曜気象予報士
山陰沖にある発達した積乱雲(4月29日18時50分)

昭和の日の雨

 令和3年(2021年)4月29日の昭和の日は、前線を伴った低気圧が発達しながら日本列島を通過しました(図1)。

図1 地上天気図(4月29日15時)
図1 地上天気図(4月29日15時)

 このため、ほぼ全国的に雨となり、東海地方では150ミリを超えています(図2)。

図2 4月29日24時までの24時間降水量
図2 4月29日24時までの24時間降水量

 普段は雨が少ない4月としては多い雨で、昭和の日から始まるゴールデンウィーク初日は、雨でした。

 春や秋の天気は、低気圧通過による雨の後は、高気圧の通過で晴れるという周期変化をすることが多いのですが、令和3年(2021年)のゴールデンウィークは、低気圧の通過による雨の後は、上空寒気の通過による大気不安定の雨が繰り返す見込みです。

 北海道では、所に依り雨ではなく、雪の可能性があるゴールデンウィークです。

上空寒気

 上空に強い寒気があると、高層天気図では寒冷低気圧と呼ばれる低気圧ができます。

 寒冷低気圧は、下層に行くほどはっきりしなくなりますが、強い寒気の場合は、地上天気図でも前線のない低気圧として表示されます。

 このため、地上天気図で前線を伴わない低気圧があるときは、この低気圧の上空に強い寒気がある可能性がありますので、小さな低気圧であっても要注意です。

 昭和の日に雨をもたらした低気圧が通過後には、日本海に小さな低気圧が出現する予報です(図3)。

図3 予想天気図(5月1日9時の予想)
図3 予想天気図(5月1日9時の予想)

 つまり、上空に寒気がはいってくることを示しています。

 また、5月1日9時に前線上の九州で発生する低気圧によって広い範囲で雨となった後、再び上空に寒気が入ってきます。

 ただ、このときの寒気は、上空約5500メートルで氷点下27度以下と、冬の平均位の寒気です(図4)。

 春の寒気ではありません。

図4 上空約5500メートルの気温分布(5月2日夜と3日朝)
図4 上空約5500メートルの気温分布(5月2日夜と3日朝)

 このため、昼間、晴れて強い日差しがあると、地表付近の温度は25度位まであがる春ですので、冬のような季節外れの寒気によって、上下の温度差が50度を超えます。

 西日本から東日本では落雷や竜巻などの激しい突風、降ひょうに注意が必要なゴールデンウィークの前半です。

タイトル画像、

図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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