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早稲田大学、本来フルバックの河瀬諒介をスタンドオフで起用。手応え語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は昨季の大学選手権時(写真:築田 純/アフロスポーツ)

 大学選手権2連覇を目指す早稲田大学ラグビー部は11月7日、東京・秩父宮ラグビー場で加盟する関東大学対抗戦Aの第5節に挑んだ。筑波大学から50―22で白星を奪い、開幕5連勝を決めた。次戦は11月23日、秩父宮での慶應義塾大学戦となる。

 11月1日に帝京大学との全勝対決を45―29で制した早稲田大学は、この日もランナーへの素早いサポートやスペースを確実に仕留める連続攻撃でペースを握った。ウイングの古賀由教は2トライを決め、攻防の起点となるスクラムも終始、押し勝った。

 注目は3年の河瀬諒介。1年時から最後尾のフルバックで先発してきた大型ランナーが、今季初先発となったこの日、司令塔のスタンドオフに入ってプレー。自陣の深い位置からでも思い切りのよい走りで狭い区画をえぐるなど、個性を発揮した。トライ直後のコンバージョンゴールは8本中4本。

 試合後の会見には、相良南海夫監督、ロックの下川甲嗣副将、河瀬の3名が登壇。サプライズと見られる起用に関し、質問が集中した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

相良

「本日も無事に試合ができたことに、まず喜ばしく思っています。(明治大学と日本体育大学との)第2試合が残念ながら新型コロナウイルスの関係で中止になったことで、(出場辞退した)日本体育大学の関係者の方にはとにかく早く回復して、いい風に戻って欲しいと切に願っています。

 今日の試合では筑波大学さんのディフェンス、ブレイクダウン、バックスの展開力にかなり警戒していたんですが、我々としてその圧に負けずにしっかり仕掛けていく意識して望んだ結果、勝利でき、嬉しく思っています」

下川

「先週、帝京大学さん勝利し、チームとして1戦、1戦、成長していこうという意味で、今週は『1人1殺』というテーマで試合に臨みました。アタックではボールキャリーが1対1で勝つ、(援護役は)相手を1キルする(はがす)ことにフォーカスしました。ディフェンスではノミネート(誰がどの相手をチェックするか)を決めて、1人がひとつの仕事を全うする。それを80分間、通してやろうと話していました。試合を通してよかった面はたくさんありましたが、80分を通して…というところに関して、まだまだ気が抜けてしまったり、コミュニケーションのミスがあったりと、まだまだ課題も見つかったので、そこは修正したい。とにかく今日は勝てたことが前向きに捉えられる。きょう出た課題を(受けて)慶應義塾大学戦に向けて、いい準備をしていきたいと思います」

河瀬

「今週のテーマは下川選手が言ったように『1人1殺』と準備していて、それを意識してできていた部分と――後半になると――ミスが多かった部分があった。慶應義塾大学さん(との試合)に向けて、修正したいと思います」

――相良監督が就任以来、筑波大学戦は3シーズン連続で50点以上奪っています。

相良

'''「筑波大学さんは我々に似たしつこくひたむきでというチーム。その部分でどちらが上回るかを意識してこの3年間、意識した結果、我々が上回った。何か相性がいい、やりやすいというのではなく、むしろ泥臭い部分でどっちが上回れるかというテーマでやった結果です」

'''

――トライシーンではパス、オフロードパスがよくつながっているが、どんな練習をしているのか。

下川

「オフロードは日頃の練習から放る側ともらう側の意志が統一されているか(を大事にしている)。そこが統一されているならばパスをしていいという条件を決めて、練習をやっています。きょうの試合でも、するべきところでオフロードを決めて、無理に放らないほうがいいところでは判断してポイントを作ることができていたのかなと思います」

――河瀬選手がスタンドオフで出場。どれくらい準備をしてきたか。自己採点は。

河瀬

「いつ自分が10番(スタンドオフ)に出てもいいようにと結構、前から準備はしていました。自分のきょうのプレーの採点は60点くらいかなと思います」

――その心は。

河瀬

「できたところは、自分の持ち味を出すというところ。ランができたりとか、コンバージョンキックを決められたりとか。あとの40点は、前半、特にてんぱっちゃて、ボールキャリーの数が多くなったり、フォワードやスクラムハーフとのコミュニケーションが取れていなったりしたところかなと」

――過去、スタンドオフでのプレー経験は。

河瀬

「高校2年生の時に1度だけやらせていただきました。1試合です。スタンドオフをやっていた時期は試合がない時だったので、試合は1試合だけです」

――相良監督と下川選手は、河瀬選手のスタンドオフとしてもプレーをどう見るか。また、試合前には何と声をかけたか。

相良

「随分、本人は辛口でしたけども、80分、スタンドオフとしてやり切ってくれたので80点。ゴールキックが予想以上に決まったので90点(一同、笑い)。(河瀬は)もともとアウトサイドのプレーヤーですので、慣れないポジションでもありましたが、試合前は『ミスしてもいいから迷わず思い切りやってくれ』と声を掛けていました。ゲームをコントロールする立場は重責だと思いますが、そこは皆で助け合えばいいからと伝えました。80分やり切ってくれてよかった」

下川

「慣れないポジションだったと思うんですけど、試合前、河瀬には『リラックスして良さを前面に出したら勝てるから』と言っていました。河瀬のよさを十分に出していた。自分としても、やりやすかったです」

――相手との間合いのないスタンドオフのポジション。やってみてどうか。

河瀬

「(相手との)間合いはいつもやっているポジションより近い、というところはあったんですけど、そこはあまり気にせず、自分がボールを持った時の相手の位置、味方の位置を見て、判断できていたと思う。試合中、(立ち位置が)ちょっと浅くなったこともありましたが、そこも修正できたのでよかったと思います」

――ゴールキック、タッチキック、キックオフなど、主力スタンドオフの吉村絋選手の仕事を担った。負担は。

河瀬

「キックの面は絋がずっとやっていますが、(自身も)絋が怪我していなくなった時のために普段から練習していた。緊張することはあまりなかったです」

――相良監督は、河瀬選手のスタンドオフ起用の計画をいつから温めていたのか。

相良

「春シーズンもなく、コロナ禍で、色んなことが起こるという想定のなか、さらに6週間で5試合(という例年にはないタイトな日程)。これは本番の対抗戦ではないことなので、毎週、毎週、いい状態のメンバーを使っていくなかでの河瀬の起用となりました。なので、秘策というよりある意味、正攻法。状態のいいメンバーを選んだ、というのが最大の理由です」

――もともと河瀬選手にスタンドオフの適正があると読んでいたのか。

相良

「キックができるということ。また、ランのオプションがあるプレーヤーがスタンドオフの位置にいるのは相手にとっては嫌なことだと思います。…その辺ですかね。いるメンバーを見た時に、河瀬がその1人になったという形だと思います」

――今後の起用法について。

相良

「いわゆる正スタンドオフの吉村などが軸になってくるとは思います。ただ、いつも再三、言うように、怪我人、発熱が起こりうる。今年は特に、そこ(選手層の確保)に気を遣わなきゃいけない。色んなオプションが持てて、きょうはそれを実践できた。そのなかで勝利できたのは、我々にとって大きいと思います」

――他のスタンドオフ候補の選手が出なかった理由は。

相良

「コンディションの問題という風に思っていただければ結構です」

 相良監督がコロナ禍におけるマネージメントを常々意識していたのは、過去の発言からも明らか。今回の配置が対抗戦終盤、および12月からの参戦が期待される大学選手権でどう活きるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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