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シティはアトレティコを撃破できるのか?ペップ対シメオネの因縁と“異なるスタイル”の激突。

森田泰史スポーツライター
CLでベスト4を目指すシティ(写真:ロイター/アフロ)

ビッグマッチが、迫っている。

チャンピオンズリーグ準々決勝で、アトレティコ・マドリーとマンチェスター・シティが対戦する。今大会屈指の好カードで、まったく異なるプレースタイルの2チームが激突する格好だ。

ドリブルするフェリックス
ドリブルするフェリックス写真:ロイター/アフロ

「アトレティコは相手の特徴を消すのがうまいチームだ。我々のプレーをするのは難しいかも知れない。我々は賢くなる必要がある。タイミングを計らないといけない。彼らは引いて守ることも、時に前からプレスをかけることもできる。何より、相手の特徴を隠すことができる」とはペップ・グアルディオラ監督のコメントだ。

「私はグアルディオラをリスペクトしている。この数年の、試合ごとに見せているシティでの仕事ぶりは素晴らしいものだ。チャンピオンズリーグというのは、困難な大会だ。すべての試合がビッグマッチなんだ」とはディエゴ・シメオネ監督の言葉である。

■異なるプレースタイル

グアルディオラ監督とディエゴ・シメオネ監督は中長期的にチームビルディングを行ってきた。グアルディオラ監督がポゼッションと即時奪回に注力してきた一方で、シメオネ監督は自陣での守備とカウンターをベースに欧州での地位を高めてきた。どちらが正しい、という話ではない。しかし、いずれも信念を貫いてシティとアトレティコを強くしてきた。

ベスト8の抽選が終わり、嫌な予感を抱いたのはシティの方だろう。ボールを握り、攻めて、勝つ。この対極に位置しているのが、シメオネ・アトレティコだからだ。

ゴールを喜ぶシティの選手たち
ゴールを喜ぶシティの選手たち写真:ロイター/アフロ

シティは今夏、セルヒオ・アグエロが退団した。ハリー・ケイン(トッテナム)の獲得に動いていたが、移籍成立には至らなかった。ストライカーの確保に失敗して、グアルディオラ監督は自身のアイデアを深めていくことになった。ベルナルド・シウバ、フィル・フォーデン、ベルナルド・シウバといった選手をファルソ・ヌエベ(偽背番号9/ゼロトップ)に据えて、新たな武器で勝利への方程式を見つけようとした。

今季のチャンピオンズリーグで、シティは8試合23得点10失点を記録。ポゼッション率は60%、パス成功率は91%となっている。

■アトレティコとイングランド勢

対して、アトレティコは8試合で9得点9失点。ポゼッション率は43%で、パス成功率は78%だ。ただ、ボール奪取数ではアトレティコ(338回)がシティ(296回)を上回っている。

「シティは昨シーズン、チャンピオンズリーグの優勝にあと一歩まで迫ったチームだ。偉大な監督と素晴らしい選手がいて、良いフットボールをする。だけど、僕たちは挑戦を好む。それが難しければ難しいほど、僕たちのベストが引き出される」と語るのはアトレティコの主将を務めるコケだ。

「昨シーズンは、チェルシーに敗れた。でも、それを除けば、僕たちとイングランドのチームの相性は悪くない。僕たちが初めてシティと当たるのは事実だ。プレー強度の高い、拮抗したハイレベルな試合になる。こういったゲームはディテールで勝敗が決まる」

2015−16シーズンに対戦したアトレティコとバイエルン
2015−16シーズンに対戦したアトレティコとバイエルン写真:ロイター/アフロ

欧州のトップクラブで指揮を執ってきたグアルディオラ監督とシメオネ監督だが、意外にも対戦数は少ない。

彼らが初めて対峙したのは2011−12シーズンだ。ラ・リーガの一戦で、バルセロナ(グアルディオラ)とアトレティコ(シメオネ)が対戦。その試合では、2−1でバルセロナが勝利している。

そして、2015−16シーズン、チャンピオンズリーグ準決勝で両者は再び顔を合わせた。バイエルン・ミュンヘン(グアルディオラ)対アトレティコ(シメオネ)の一戦では、2試合合計スコア2−2となり、アウェーゴールの差でアトレティコが接戦を制している。

■資金力の差

ただ、資金力という意味では、シティに軍配が上がる。シティは2016年夏にグアルディオラ監督が就任して以降、およそ10億4000万ユーロ(約1350億円)を補強に投じてきた。

ジャック・グリーリッシュ(移籍金1億1700万ユーロ/約152億円)、ロドリ(契約解除金7000万ユーロ/約91億円)、ルベン・ディアス(移籍金6800万ユーロ/約88億円)、リャド・マフレズ(移籍金6780万ユーロ/約87億円)、ジョアン・カンセロ(移籍金6500万ユーロ/約84億円)、アイメリック・ラポルト(契約解除金6500万ユーロ)と才能溢れる選手が次々に加入した。

一方でアトレティコは、近年、ジョアン・フェリックス(移籍金1億2700万ユーロ/約165億円)やトマ・レマル(7200万ユーロ/約93億円)を獲得しているものの、大金を叩いて大物選手を獲得するというのは基本的にない。

グアルディオラとシメオネ
グアルディオラとシメオネ写真:ロイター/アフロ

ペップ・シティは、ポゼッションを突き詰めて欧州の頂点を目指すという浪漫(ロマン)を追っている。他方で、シメオネ・アトレティコが資金力で勝るチームを倒すというところにも、浪漫がある。

ポゼッションとカウンター、2つのプレースタイルが激突する。スタイルと浪漫を賭けた戦いで、スペクタクルが約束されていることだけは確かだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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