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米サンフランシスコ沖のクルーズ船で新型コロナの集団感染 カリフォルニア州が「非常事態宣言」

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
集団感染が発生した模様のグランド・プリンセス号。写真:latestly.com

 アメリカでは最多の53人の感染者数が確認されているカリフォルニア州で、深刻な事態が発生している。

 2500人乗船(半数がカリフォルニア州の住民)のクルーズ船「グランド・プリンセス」号で、新型コロナウイルスによる集団感染が起きた模様で、船はサンフランシスコ沖に停泊を余儀なくされている。

 カリフォルニア州知事ギャビン・ニューサム氏は、米国時間3月4日、このクルーズ船で「11人の乗客と10人の乗員が症状を見せている。その数は非常に少なく見積もられている可能性がある」と説明した。その症状というのは、インフルエンザや風邪のような症状だという。

船に検査キットを飛ばす

 現在、州衛生当局により乗船者の検査をする準備が進められている。サンフランシスコからメキシコまで乗船し、引き続き、メキシコからハワイへも乗船した62人の乗客は自室に留まるようCDC(米疾病対策センター)から指示されている。

 後述しているが、サンフランシスコからメキシコまで乗船した71歳の男性が新型コロナウイルス感染により死亡したためだ。

 船は、乗客の検査(検査対象は、前述の62人と感染症状を示している乗客、乗員など100人未満と発表された)が終わるまで沖合に停泊させ、着岸させない模様だ。では、どうやって、検査するのかというと、船に検査キットを飛ばし、船内の医療チームに検査させ、検体を送り返してもらい、ラボで検査するというやり方が計画されている。

 そのやり方について、FEMA(米連邦緊急事態管理庁)元上級高官のマーク・ヌーヴォー氏は、ABCニュースで、

「不便なやり方であることに疑問の余地はないが、乗客を守り、世界で7番目に大きいカリフォルニア経済へのウイルス拡散を防ぐ、強く大胆で正しい方法だ」

と評価している。

 「グランド・プリンセス」号は「ダイヤモンド・プリンセス」号も運航しているカーニバル社が運航しており、2月11日にサンフランシスコから出航、メキシコへ向かった。その後、2月の終わりにメキシコからハワイへ向かい、ハワイ4島を訪ねた後、メキシコに戻り、3月7日にサンフランシスコに帰港する予定となっていたが、集団感染の恐れから、メキシコに戻るのを取りやめ、急遽、サンフランシスコに帰港することになった。

カリフォルニア州初の死者も乗船

 ところで、同じ3月4日は、ワシントン州以外では初めてとなるカリフォルニア州で新型コロナウイルスによる死者が確認されて、アメリカで大きなニュースとなっていた。実は、亡くなった71歳の男性(慢性疾患を持っていた)は、2月11日から21日まで、このクルーズ船で、サンフランシスコーメキシコ間を往復した。そのため、州は、CDCと協力して、亡くなった男性と同じルートで乗船していた2500人の乗客へのコンタクトを行っている。

 カーニバル社も、2月11日から21日の間にこのクルーズ船に乗った客は、発熱や咳、呼吸困難などの症状が現れたら医師にコンタクトするよう訴えている。

 また、サンフランシスコ郊外のソノマ郡でも、亡くなった男性と同じルートで乗船した乗客が新型コロナウイルスに感染、現在治療を受けているが、州知事によると「非常に難しい状態」だという。

 クルーズ船での集団感染や州で初の死者が出たという事態を受け、ニューサム州知事は、ワシントン州、フロリダ州に続き「非常事態宣言」を出した。

空港検査官も感染

 また、3月4日、カリフォルニア州では新たに6人の感染が確認されたが、そのうち1人は、ロサンゼルス空港で、到着した乗客のヘルス・スクリーニング検査を行っているCDCの検査官だった。検査官は感染防護用のヘッドギアを身につけていたという。検査官が感染している乗客から感染したのか、市中感染したのかは不明だ。

 「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗船者に対する日本政府の危機管理対応は世界から大きな批判を受けたが、、カリフォルニア州やCDCが、クルーズ船で起きている集団感染にどう対応するのか注目されるところだ。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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