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中谷選手が2打席連続3ランを含む4安打6打点!《4/28 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
走攻守に好調の中谷選手。ウエスタン・リーグ首位打者の位置をキープしています。

ジャイアンツ球場で行われたイースタン・巨人とのファーム交流試合を1勝1敗で終えた阪神。25日の1戦目は原口選手と横田選手がともに今季2号のソロホームランを放ったものの、先発した横山投手が3発を浴びるなど7安打9失点(自責8)で4回途中に降板し、13対5の大敗を喫しました。26日は北條選手のチーム単独トップとなる3号ソロも出て3対2の勝利。昨季は甲子園に初めて巨人のファームを迎えましたが、ことしは10年ぶりに乗り込んだジャイアンツ球場で選手たちもいろんな経験をしたでしょう。

ゴールデンウィーク突入の今週は、まず鳴尾浜でのオリックス3連戦です。1軍は甲子園でヤクルト戦ということで28日は新井選手、坂選手、大和選手、伊藤隼選手の4人が1軍から参戦。3打席に立つ予定でしたが、1回と2回で打ちまくったため、なんと3回で3人が3打席を消化。4番の新井選手が3打席目となった4回の攻撃を終えたところで揃って引き揚げた次第です。

3人がマルチヒット、坂選手も犠飛はありましたが、その4回までで3打数3安打6打点だった中谷選手は、どんな気持ちで4人を見送ったのか…と考えずにいられません。そして同級生の江越選手がナイターでプロ1号を放ち、甲子園のお立ち台に。これまた悔しさや、負けるもんかのライバル心が一層強くなったと思われます。「今が旬、早く上げて」という私たちの声が甲子園へ届きますように。いつでも送り出す準備はできていますよ。

では、昼も夜も1992年組のバットが勝利に貢献した28日の、ウエスタン・オリックス戦の試合結果をどうぞ。既に29日の試合も終わっている、こんな時間ですみません。

《ウエスタン公式戦》4月28日

阪神-オリックス 6回戦 (鳴尾浜)

オリ 000 100 000 = 1

阪神 541 000 00X =10 

◆バッテリー

【阪神】○岩貞(1勝2敗)-渡辺-筒井-山本 / 小豆畑

【オリ】●井川(1敗)(1回1/3)-戸田(1回2/3)-平野佳(1回)-鈴木(2回)-大山(1回)-古川(1回) / 斎藤俊-若月(5回~)

◆本塁打 中谷1号3ラン、2号3ラン(井川)

◆二塁打 ブランコ

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]一三:坂  (2-0-1 / 1-0 / 0 / 0) .200

〃三:西田  (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .300

2]中:大和  (3-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .667

〃中:横田  (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .146

3]右:伊藤隼 (3-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .229

〃右:緒方  (2-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .179

4]三一:新井 (3-2-2 / 1-0 / 0 / 0) .667

〃左:一二三 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .118

5]左一:中谷 (5-4-6 / 0-0 / 0 / 0) .373

6]二:北條  (4-1-0 / 1-1 / 0 / 0) .232

7]指:原口  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .125

8]捕:小豆畑 (2-0-1 / 2-1 / 0 / 0) .148

9]遊:植田  (3-2-0 / 0-1 / 0 / 1) .236

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

岩貞 6回 98球 (5-4-2 / 1-1 / 3.43) 145

渡辺 1回 15球 (1-1-0 / 0-0 / 1.93) 138

筒井 1回 28球 (1-0-1 / 0-0 / 5.27) 142

山本 1回 12球 (1-1-0 / 0-0 / 3.38) 140

経過1 井川から10安打で9点

とりあえず試合は2回までに雌雄を決した、と言ってもいいでしょう。オリックスの先発・井川に対し、1回は坂が右飛で1死となったあと大和が左前打、伊藤隼が右前打して一、二塁。新井の左前タイムリーでまず1点。なおも1死一、二塁で中谷がレフトへ高く上がる1号3ラン!さらに北條が左前打し、原口の右前打で一、三塁となって小豆畑が中犠飛。植田は左飛に倒れて攻撃を終了。打者9人でホームランを含む6連打を放ち、一挙5点を奪いました。

2回は先頭の坂が空振り三振、そこから1回とまったく同じ内容です。大和が左前打、伊藤隼が右前打で一、二塁。このあたりで何となく予感めいたものはありましたね。その通りに新井の左前打で大和が生還、続く中谷がこれまたレフトへ同じような打球を打って。打球方向まで同じとは…まるで“デジャブ”です。ここで井川が降板。戸田に北條と原口が抑えられて2回が終わったものの、9対0とリードを広げます。3回には小豆畑が四球を選び、植田の右前打で無死一、二塁として坂の中犠飛で10点目!

ただし4回以降は毎回走者を出しながら追加点がありません。4回は平野佳に対して中谷のショート内野安打と原口の打球でショートの送球エラーなど2死二、三塁と攻めますが、他はすべて三振で無得点。5回と6回はルーキー・鈴木の前に2四球のみでノーヒット。7回は大山から植田が左前打、西田は右前打と連打して1死一、三塁とするも後続を断たれ、8回は中谷の中前打があったものの併殺だなど3人で終了しています。

経過2 投手陣は4回の1失点のみ

前回の中日戦(甲子園)からプレートの立ち位置を三塁寄りに変えた岩貞投手。
前回の中日戦(甲子園)からプレートの立ち位置を三塁寄りに変えた岩貞投手。

一方の岩貞は2回までパーフェクト。3回は先頭の山本にストレートの四球を与え、宮崎はファースト内野安打(新井がセカンドの前で触るも捕れず)で一、二塁としますが後続をしっかり断って無失点。しかし4回、1死からブランコに左翼線二塁打を許し、2死後に奥浪の左前打で一、三塁。続く山本に中前タイムリーを浴びました。さらに宮崎の四球で2死満塁となったあとは斎藤俊を空振り三振!5回は武田に右前打されるも併殺打など3人で片づけ、6回は三者凡退。

7回の渡辺は先頭の山本をショート植田の捕球エラーで出し、1死後に若月の左前打があったものの無失点。8回の筒井も先頭の原大に中前打され、伏見に四球を与えて無死一、二塁としながらも後を抑えました。9回は山本が登板して2死を取ったあと、武田の左前打。しかし最後は堤を二ゴロに打ち取って試合終了です。

岩貞 スラーブとカットが収穫

試合後の岩貞投手。これはわざと怖いめの顔をしているだけです。
試合後の岩貞投手。これはわざと怖いめの顔をしているだけです。

6回5安打1失点でファーム今季初勝利の岩貞投手は「最初に大量点をもらって投げやすい環境でした。スラーブを、カウントを取るのにも決め球にも使えたのが収穫になった。一時期、ちょっと自分の感覚と違う球も多かったんですが、その日の体のコンディションを考えたり体重移動を意識しながらやってきて、いいフォームで投げられたと思う」と話しています。

アウトコースへの球が多かった?と聞かれ「インコースに強いバッターが多かったのもありますが、内に投げるべきところは首を振って投げたり、小豆畑さんと相談しながらいい配球ができたかなと思います」と答えました。失点してしまった4回については「(2死二塁から)奥浪選手に打たれたフォークが高めに浮いた。それがすべてです」と山本選手のタイムリーではなく、その前に2死一三塁とした奥浪選手への失投を猛省。

「あの失点がなければ、もっとイニングを延ばせたと思います。20球は球数を減らせて、もう1イニングか2イニング投げられたかなと。でも逆に切り替えられたのはよかったです。(失点後、宮崎選手は)3―1とカウントがよくなくて半分意識的に歩かせたけど、満塁になって(斎藤俊選手は)インコースのカットボールで空振り三振が取れた。最後の球を計算して投げられた」と言っていました。なおカットボールは「もともと得意球です。最近はカウントを取るのも、決め球の1つとしても使えるように上がってきた」そうです。

小豆畑選手と久保コーチも納得

吉田バッテリーコーチも攻守で成長を口にする小豆畑選手(手前は一二三選手)。
吉田バッテリーコーチも攻守で成長を口にする小豆畑選手(手前は一二三選手)。

リードした小豆畑選手も「カットボールとスラーブで変化をつけられたのがよかった。スライダーは右打者への内だけという考えだったのが変わりました。右打者に“外から入ってくるスライダー”もあって、幅が広がったと思います。それで前半に空振りを取って、振らなくなったら外の真っすぐで攻めるなど使い分けもできた」と振り返ります。奥浪選手へのフォークが抜けた点は「ワンバウンドでもいいというところで甘く入ってしまったかな」と苦笑する小豆畑選手。でも「前より勝負球がしっかり腕を振って投げられていると思います」とのことでした。

久保投手コーチは「エンヤコラ、エンヤコラと一方通行のピッチングではなく、だいぶ変化球を投げるタイミングがつかめてきたかな。この前の甲子園と同じく、よかったですよ。課題をクリアできた。ブルペンから“変化球を投げるタイミングで”全部の調整をしていましたね。本人に聞くと、そうだと。すごくいいよって言いました。自分で考えてやっていたみたいです。見破りましたけど」と笑います。

変化球を投げるタイミングで、真っすぐのピッチング練習もしていたということですか?「つまりバッターからすると、いつも変化球が来る感じで真っすぐが来るんですよ。足がなかなか地面に着かないようにするとか、手と足のタイミングをいろいろ工夫して。ブルペンから自分のプランを持ってきていたことが尊重できる。やりたいことが見える。1から3くらいまで言えば、7や8までわかってくれるわけで、楽になりますね」

ワインドアップで大きく強く

この日は中継ぎでもワインドアップモーションで投げた山本投手。
この日は中継ぎでもワインドアップモーションで投げた山本投手。

山本投手も試行錯誤の真っ最中。きのうはワインドアップモーションでした。「ピッチングの入りが、自分の中でリズムを作りやすいので。社会人時代もワインドアップで投げていて、それが自分のリズムだったからだと思います。先発をしていたフェニックスでもやっていたんですけど」。そういえば昨年10月のフェニックスリーグは先発で3試合、振りかぶっていましたね。それが今回、リリーフでも取り入れたのは「ちょっと小さくなってしまっている気がしたから」だそうです。

「クイックで放ると、前へ行きたい、行きたいで小さくなっていた。ワインドアップだとしっかり後ろに体重を乗せていける。それでも、きょうは久々というのもあって、ちょっと前へいってました。しっかり体重を残して投げるようにしないと」。球速も上がったのでは?「そうですね。スピードも出ると思いますけど、あんまり変わらないんで」と苦笑いしながらも「シュートでも140キロ出ていましたね」と手応えを感じた様子。

「自分は自分、やることをやるだけ」

1回、2回とまったく同じ状況で回ってきて、同じようなレフトへの3ランを放った中谷選手。2打席連続本塁打は「初めてです。人生初」と言っていました。1試合2本もプロでは非公式戦を含めて初体験。そして1試合4安打は「ないですね。育成でもない」という答えでしたが、2013年8月14日の育成試合・大阪学院大学戦(鳴尾浜)で5打数4安打5打点がありますよ。でも公式戦ではなし。6打点もプロ初ですね。昨年6月5日の広島戦(鳴尾浜)で満塁ホームランを含む5打数3安打4打点が公式戦最多でした。

「1本目は詰まりました。スーッときた真っすぐ。2本目は抜けた感じのチェンジアップだと思います。こすったかな、上がりすぎたかなと思ったけど風に乗ってくれました。2打席目も?狙ってないですよ(笑)。チャンスでも、これまでの打席と変わらずに入れた」。1回も2回も前の3人で1点取ったあとの3ランですが、2打席目あたりは新井選手のヒットで「大和さん還らないで~、満塁にして~」なんてことをチラッと考えたりは…?「まったく」。即答されました。ですよねぇ。

中谷選手は今、守備で外野もファーストもこなしています。
中谷選手は今、守備で外野もファーストもこなしています。

昨年はウエスタン開幕直後の3月25日(ナゴヤ)に、中日・山井投手からチーム1号を打ったんですが、ことしはこれが1号と2号。「打っていなかったから、とりあえず1本出てよかった」と笑顔を見せます。ホームランは欲しかった?「そうですね。長打を求められていると思うので。でも狙うことなく長打になっているのがいいかなと」。中谷選手の前で1軍選手たちが3連打しましたね。「みんなが打っていたんで続こうという気持ちでした。悪い時は1発、と狙ったりしてしまったけど、今はしっかり準備して入れています」

続けて「ちょいちょいフォームを変えてはいますが、試合で打席に入ったら考えすぎず、ピッチャーと勝負することだけに集中しています。きょうもピッチャーといい感じで勝負できたと思う」と好調の要因を表現しました。先日までファームにいた同級生の江越選手について「意識はしていないけど、いい刺激を受けながら自分は自分と考えていますね。やることをやるだけ」と中谷選手。

記者陣から「1軍に行くなら今でしょう!」と振られても「1打席、1打席をムダにしたくないと思っています」という淡々とした答えが返ってきました。“打つ”ために準備をして、打席では“打つ”ことに集中、1球1球に全身全霊を傾けて“打つ”。そんな思いが伝わってきますね。

そろそろ1軍で経験を

古屋監督は「センター中心に打っているのがいい。最後のセンターへのヒットが一番よかった。成長しているところ。2本のホームランは風もあったとは思うけど、振り切っているからあそこまで飛んだんだろう」と振り返りました。それから「中谷は長距離というよりは中距離バッターかな。脚力や守備力もあるし、総合的に勝負していくタイプ」と分析。「平田ヘッド、見てくれたかなあ。いいアピールになったと思いますよ」

また掛布DCも「形ができつつあるね。例えば横田にはまだそれを求めていないけど、彼はもう数字にもこだわっていかなくてはいけない選手。最後のセンター前ヒットは褒めてあげました」とのこと。この日の5打数4安打6打点で、リーグトップをキープしている打率は.373となっています。八木打撃コーチは「結果が出ているから余裕を持って打席に入れている。1軍にいってすぐ打てるかどうかはわからないけど、失敗してくればいいんだから。早く経験させてあげたいね」と話していました。この日、視察した平田1軍ヘッドコーチに期待です。

小学校の時に見ていた井川投手

練習を終えて寮に戻っていく北條選手(左)と、楽しげに笑う植田選手。
練習を終えて寮に戻っていく北條選手(左)と、楽しげに笑う植田選手。
カメラに気づいた北條選手は写真用にこのポーズ。いつもありがとう!
カメラに気づいた北條選手は写真用にこのポーズ。いつもありがとう!

先輩方に負けじとマルチヒットの植田選手は、3回無死一塁での右前打は「スライダーで差し込まれました。スライダー来るかな?と少し頭にあったので振れたと思います。ちょっと詰まっていたんですけど。右方向?狙ってないですよ~!」と力強く否定。7回の左前打は「カウント3―1やったんで、真っすぐを打とうと思っていた」そうです。ちなみにエラーについては「ボールに入れていないですねえ。大事にいこうとして抱え込む感じになっているのかも…」と浮かない表情でした。はじいた後で一度つかみ損ねたんですが、あれがなかったらアウトにできたかな?「そう、ですね」

ところで、井川投手は知っていますか?「知ってます。小学校の時、見てましたもん。安藤さんが先発していたり」。植田家の皆さんは阪神ファンですからね。それはもう毎晩、テレビはナイター観戦だったでしょう。では、その井川投手からヒットを打った北條選手にも聞いてみましょう。阪神時代の井川投手は知っていますか?満面の笑みを浮かべながら答えました。「知ってますよ~!サークルチェンジでしょ?」……パワプロ世代ですな。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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