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今年秋の「iPhone 16」シリーズ、AIよりもゲーミング性能に注目?RAM増量や冷却性能に期待

多根清史アニメライター/ゲームライター
Image:Apple

今月初め、アップルは年次開発者会議WWDCにて独自のAI機能「Apple Intelligence」を発表しました。その特徴は、他社サービスのようにAIとお喋りするよりも「すでにあるアプリを便利にする」ということ。次期iOS 18(iPhone)やiPadOS 18(iPad)、macOS 15(Mac)で利用できる見通しです。

メールで文面を自動的に書き直したり、Safariで見てるウェブの要約をしたり、写真を加工したり……といったビジョンはわくわくするものの、当初は米国のみ、正式版ではなくベータ版。

しかもiOS 18ベータからは「ウェイティングリスト」、つまり順番待ちとの文字列も見つかっています。要するに日本では当分のあいだ縁がないし、たぶん実用になるのも2025年以降になる可能性が高い

そんな華々しい発表の裏で、ゲーマーにとって重要な発表がありました。それがiOS 18の「ゲームモード」です。

Image:Apple
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アップルいわく、特に長時間のプレイセッション中、さらに一貫したフレームレートでゲームの体験を向上させ、AirPodsやゲームコントローラなどのワイヤレスアクセサリの反応を驚くほど向上」させるとのこと。macOSで一足先に導入されていたものが、iPhoneにもやって来るというわけです。

ゲームモードを有効にすると、起動中のアプリのなかでゲームにプロセッサへの最優先アクセス提供し、バックグラウンドの使用リソースを削ることで、ゲーム体験を最適化。さらにAirPodsやBluetoothコントローラの遅延が減り、アクションゲームや音ゲーでのストレスが抑えられそうです

それに合わせて、アップル製デバイスにゲームを移植しやすくする「Game Porting Toolkit 2」発表

まだ詳しくは不明ですが、最新のiPad Proに搭載された「M4」チップでAAA(超大作)タイトルが動かしやすくなる模様。同時にiPhone/iPad/Mac版『バイオハザード7 レジデント イービル』を予告(7月発売)しています。

アップルは大型イベントで、ゲーム専用機やゲーミングPC向けタイトルの移植を目玉にしたがる傾向があります。スマホ向けゲームはさておき、そちらのライブラリが手薄なコンプレックスもあるのでしょう。

が、しょせん移植は「後追い」でしかありません。ましてM4チップ搭載のiPad Proは非常に高価でもあり、「ゲームをやるため」買う客層は考えにくい。全く意味がないとは言いませんが、付加価値以上になるとは考えにくそうです。

オンデバイス処理のためにはRAM増量が欠かせない

写真:REX/アフロ

が、アップルが本気でAI……もといApple Intelligence(アップル社員は「AI」と略すことを拒絶してるとか)やゲームモードに本腰を入れ始めたのは、大きな意義があります。

なぜなら、2つとも次期「iPhone 16」シリーズで「RAM容量を増やすこと」と「冷却システムを強化すること」につながりうるからです。

まず、アップルは生成AIをオンデバイス、すなわち「iPhone内部で処理を完結させる」ことにこだわっている。1つには外部サーバーと通信が不要のためレスポンスが速くなる。もう1つは、サーバーに渡すデータ量を少なく抑える(完全にオンデバイス処理は、あと数年は無理でしょう)ため、プライバシーが守りやすいからです。

生成AIの基礎となるLLM(大規模言語モデル)をデバイス上で動かすには、これまでより多くのRAMが必要になる。それはコストが高いのでメーカーとしては極力避けたいはずであり、アップルも内蔵ストレージをRAM代わりに使う研究論文を発表済み

それでも、iPhone 15標準モデルのRAM 6GBではキツすぎるため、今年秋のiPhone 16シリーズでは8GBに増やすと複数のアナリストが予想しています。すでにiPhone 15 Proモデルは8GB積んでますが、ようやくiPhone 16シリーズでは全モデル8GBになるということ。

もし増量してもAndroidハイエンド機よりは少ないんですが(たとえばGalaxy S24シリーズは8GB~12GB)iPhoneはアップルがハード・ソフト共に開発する垂直統合により効率よく動作するため、問題は少ないでしょう。

グラファイトシートや金属製バッテリケースで冷却システム強化か

写真:イメージマート

AIやゲームに力を入れる余禄の2つ目は、冷却システムを強化せざるを得ないことです。

これまで負荷の高い処理はゲームぐらいに限られていましたが、オンデバイス処理はチップセットやRAM等を長い時間こき使い、少なからず発熱を伴うはず。

iPhoneが熱くなれば手に持ちにくくなるほか、サーマルスロットリング(熱による破損を防ぐために動作クロックを落とす)が起こりモッサリ動作になる恐れもあります。実際、iPhone 15 Proモデルも発売当初は過熱問題が起こり、ソフトウェアアップデートで修正していました

たとえば、グラフェン(結合炭素素子のシート状物質)製の冷却システムを開発しているとの噂もアリ。実際、発売されたばかりのM4 iPad Proには、グラファイトシート(グラフェンを積み重ねたもの)が組み込まれています。

もう1つは、バッテリーの筐体を放熱性能が高い金属製にすること。すでに著名リーカーMajin Bu氏がiPhone 16搭載バッテリーを分解する動画をシェアしていますが、内部には銅(これも放熱性能が高い)で覆われた層があり、その下にはグラファイトシートらしき薄膜がのぞいていました。

正直、日本国内でApple Intelligenceが使えるのは半年以上は先のことになる可能性が高く、どれだけ実用性があるかも未知数です。が、iPhone 16シリーズ、特にiPhone 16 Proモデルが優秀なゲーミングスマートフォンになる期待値はかなり高そうです。

アニメライター/ゲームライター

京都大学法学部大学院修士課程卒。著書に『宇宙政治の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。現在はGadget GateやGet Navi Web、TechnoEdgeで記事を執筆中。

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