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まもなくXbox携帯ゲーム機が発表?いよいよ任天堂・ソニーと三つ巴のモバイルゲーム機戦争に突入か

多根清史アニメライター/ゲームライター
(写真:ロイター/アフロ)

マイクロソフトがまもなく開催する「Xbox Games Showcase」にて、同社がXbox携帯ゲーム機を発表する予定とのウワサが数日前に報じられ、一部の界わいは色めき立ちました。

それは、ゲーム業界のインサイダー情報で知られるeXtas1s氏のYouTube動画がきっかけ。同氏はXbox関連のリークにも定評があり、2月には「オールデジタル(光学ドライブがない)版の白いXbox Series X」が開発中と報告。のちに裏付けとなる、実物らしき画像も公開していました

今回の報告には、それ以上の詳しい情報は含まれていません。が、マイクロソフトが「Nintendo Switchのようなゲーム機」を準備中とは、人気Podcast Xbox News Cast Podcast(XNC)の共同ホストで、Timeless Gaming Conなどのイベントを主催するMiddle Aged Gamer Guy(MAGG)氏も2月に述べていたこと

MAGG氏は、マイクロソフトは2026年発売に向けて2つのSKU(モデル)を開発中だと主張。そのうち安いものはSurface(ノートPC)チームにより開発され、スイッチのようなドッキングハブを備えるとのこと。さらには、クラウドゲーミングにも対応すると伝えていました。

さらに3月には、Xboxトップのフィル・スペンサー氏が携帯ゲーム機への愛を語り、他社のSteam DeckやROG Ally X等の素晴らしさを称賛。イライラするのはデバイスよりもWindowsのせい(コントローラーでログインできないとか)だとしつつ、携帯ゲーム機を使って外出先で家庭用ゲームをプレイしたい場合、1つのブランドしか買えないのは嫌ですよね?」と、何やら意味深に仄めかしていました

モバイルXboxゲーム機はクラウドゲーミング専用に?

Image:Microsoft
Image:Microsoft

とはいえ、直近に「スイッチみたいなXbox」が発表される可能性は低いはず(外れたらスイマセン)。

少なくともネイティブ、つまり外部サーバーの力に頼らず、独力で現世代Xboxゲームを動かすには携帯ゲーム機のカタチでは無理があります。十分なパワーを持たせれば発熱も消費電力も上がってしまい、「手に持てないほど熱くて1~2時間でバッテリーが切れる」半端モノが生まれるだけでしょう。

今年の年末商戦に間に合わせるためには、クラウドゲーミング=「外部サーバー上で動かしたゲームの画像を受け取り、端末からはプレイヤーの操作入力を送りかえす」デバイスになる可能性が高い。要は、マイクロソフト版PlayStation Portalですね。

ここ最近、海外でもXboxハードはまるで売れていません。前四半期に売れた台数は、PS5の5分の1という見積もりもあるほど。Xbox Series X|Sが劣勢にある状況はユーザーにも認識されていて、スペンサー氏も「家庭用ゲーム事業から撤退するつもりはない」とわざわざ社内で言ったとの報道もありました

Xboxタイトルをネイティブで動かせる、製造コストのかかった新型携帯ゲーム機を投入すれば、傷口を広げることにもなりかねません。が、クラウド専用機であればコストは安くなる上に、収益を上げているゲームサブスクXbox Game Passの利用者を増やすことにも繋がるはず

「携帯ゲーム機戦争」に持ち込めば任天堂が有利

写真:ロイター/アフロ

正直、いまマイクロソフトがどのような新型ゲームハードを出したところで、ゲーム市場に大きなインパクトを与えられるとは思えません。とはいえ、大手ゲームプラットフォーム各社とも、次のフロンティアは携帯ゲーム機にあると見ている現れではあるのでしょう。

ソニーのPlayStation Portalもいまだに品薄が続き、生産台数を絞っているにせよ「需要が供給を上回っている」のは事実のようです。

売れ残りの在庫の山が積み上がっているため生産を一時停止するBloombergに報じられたPlayStation VR2とは大違い。PCゲームに対応するアダプターが8月に発売されますが、最大の強みである視線トラッキングも使えずで8480円(税込)は厳しそうです。

そんなPlayStation Portalで手応えが得られたのか、ソニーもPS4ゲームが動く新型PSPを準備中との噂もありました。厳密にいえば「新型PS Vita」となりますが、成功とはほど遠かったVitaよりもPSPふたたびを目指すでしょう。

かたや「Nintendo Switch後継機」もスイッチの大成功を引き継ぐべく、「携帯ゲーム機と据え置きハードのハイブリッド」という保守的なかたちに落ち着きそうです。いや、このスタイルをゲーム業界に初めて持ち込んだのが任天堂であって、携帯ゲーミングPC各社も後に続いたから「保守的」に見えてしまうんですけどね。

繰り返しになりますが、携帯ゲーム機ではハードのパワーには天井があり、むやみに引き上げられません。筆者の手元にあるROG Allyもパワフルではありますが、1~2時間遊ぶだけで熱くなるしバッテリーが切れます。

この土俵に持ち込めば、グラフィックの解像度やフレームレートよりもシステムの完成度や作り込みに重点が置かれることになり、やはり任天堂の天下が続くのではないでしょうか。

アニメライター/ゲームライター

京都大学法学部大学院修士課程卒。著書に『宇宙政治の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。現在はGadget GateやGet Navi Web、TechnoEdgeで記事を執筆中。

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