近所で火事!から実感した「戸建て住宅地の火災」、そのリアルな怖さ
寒さ厳しい真冬の夜、自宅近くで火災が発生した。
70年生きてきたが、こんなに近くで火災が起きたのは初めて。火事で119番に通報しようと思ったのも、生まれて初めてだった。同様に、間近で火事に遭遇したことがない、という方は多いだろう。そこで、万一のとき役立つこともあろうか、と火災のリアルな怖さや火災に際して求められる心構え、対応を報告したい。
消防車がなかなか来ない……
最初に感じたのは、「冬の火事は気づきにくい」ということだ。外に出れば、バキバキという火事の音がものすごく、炎と煙も大きい。が、窓、雨戸を閉め、カーテンも閉めた室内でテレビを付けていると、異常事態を察知しにくい。わが家では、雨戸を閉めていなかったのでカーテン越しにオレンジ色の炎がゆらめく様子で家人が気づいた。が、雨戸を閉めていたり、テレビに集中していたら、消防車のサイレンが近づくまで気づかなかったろう。
庭に飛び出すと、すでに何人かが外に出ていた。スマホを耳に当てている人もいたので、すでに119番通報がなされていることがわかった。
その後、ご近所さんがそろって口にしたのは、「消防車がなかなか来ない」ということ。119番通報したが、サイレンが聞こえてこない。どうしたんだろう、というのである。
後から考えれば、それは気持ちの問題だった。1秒でも早く消防車に来てもらいたいと切実に願うので、「なかなか来ない」という気持ちになってしまったわけだ。実際に消防車の到着が遅れたわけではない。
してみると、最初、火事かどうか疑わしい状況であっても、ためらわず119番通報をしたほうがよい。消防車は速やかに現場に駆けつけてくれるが、待っているほうは、焦れてしまうからだ。
たくさんの消防車が駆けつける理由
結果的に、消防車は20台以上来てくれた。
火災が起きたのは1軒。それに対し、20台は多いように思いがち。じつは、私もそう思っていた。しかし、その活動を見て、たくさんの消防車に来てもらったほうがよいと考えを改めた。
というのも、放水されるのは火元の家に向けてだけではないからだ。
延焼を防ぐため、隣接する住宅にも大量の水がかけられる。乾燥が進む冬場はなおさら延焼防止の放水が必要と思われた。その日、風がなかったことも幸いしたのか、近隣への延焼はなかった。しかしながら、火事の熱で雨樋が変形したり、外壁が焦げた住宅はあった。
たとえ延焼したとしても、火事の原因が重大な過失でない限り、火元の家に賠償責任はない。それだけに、消防は近隣への延焼防止に注力してくれるのだろう。頭が下がる思いがした。
駐車場の車は、指示で移動させる
消火活動は近隣住戸の庭にも入って行われる。その際、場所によっては、駐車場に止めている車の移動が必要になってくる。
車の移動はあらかじめ行っておくべきか……これは近隣に住む人間にとっては悩みどころとなった。あらかじめ移動させようとして、現場に向かう消防車と鉢合わせになったらマズイ。ご近所さんが火事になっているのに、そそくさとマイカーを避難させようとすることへの後ろめたさもある。
結局、火元に近い家は早々に車を移動させたが、少し離れた家では様子見をする人が多かった。
消防車が到着すると、場所によって、車を移動させることが求められた。一方、そのままでよいといわれるケースも。とにかく移動させたほうがよい、というわけでもないようだ。
後で東京消防庁に確認したのだが、駐車場の車の移動はケースに応じて。こうすべきという正解はないと回答された。迷ったら、消防関係者の指示を待ったほうがよさそうだ。
なお、車を移動させる場合、邪魔にならないよう、なるべく遠くにまで運転してゆきたいと思う。が、火災現場周辺には立ち入り禁止のロープが張られるので、無制限に遠くまで行けるわけではなかった。車を止める場所は、消防や警察によって指示された。
近所で火災が起きたとき、近隣住民は心配でみな外に出てしまう。火元の家族の安否を気遣う人もいる。野次馬とはいえない人が道路に出てくるのだが、消火活動の邪魔になる可能性があるという点では野次馬と変わらない。
心配で外に出たくなるのは当然だが、邪魔にならない庭などに留まることが基本となる。
2時間ほどで鎮火したが……
火災は2時間ほどで消し止められたが、その炎と音は恐ろしかった。
現代の住宅は燃えやすい建材や内装材の使用が厳しく制限されている。火災が起きても、燃え広がらないようにされているわけだ。しかし、家の中には紙や衣類、家具など火がついてしまうものが多い。今回の火災も、灯油ストーブに干していた衣類が被さって起き、またたく間に燃え広がってしまった。
まさに、油断大敵である。防火の知識が広まっている現代においても火事は起きるし、身近で起きた火事はやっぱり怖い。特に木造住宅が建て込む一戸建て住宅地での火事は大きな脅威となることを改めて感じた。