お笑いコンビから吉本新喜劇座員に転身。注目度急上昇の千葉公平を支える「ネガティブは3分」の思考法
お笑いコンビ「ハローバイバイ」「ギンナナ」として活動し、2020年から吉本新喜劇座員に転身した千葉公平さん(48)。昨年の「吉本新喜劇座員総選挙」では座長のアキさんに次いで2位になるなど注目度が急上昇しています。4月1日には座員の鮫島幸恵さんとの結婚、鮫島さんの妊娠も発表し、5月26日には大阪・なんばグランド花月での初イベント「千葉ちゃんと新喜劇ver.弍」も開催します。まさに公私ともに充実の日々ですが「ネガティブは3分まで」という思考法。そして「命の恩人」と語る新喜劇への思いを明かしました。
3分だけ
結婚を発表して、たくさんの方から温かいお言葉をいただきました。ただただありがたいことだと思っています。
新喜劇に入るために東京から大阪に拠点を移しました。その時点で完全に仕事モードになっていたので、結婚して子どもができる。そんなことを自分が望むものではないというか、あきらめてもいました。
でも、それと同時に「老後も一人か…」と思う自分がいることも事実ではある。ありがたいことにアレコレ忘れて夢中になれるくらいお仕事もいただいている。そこに没頭するのが大阪に来る最大の目的でもあったので、充実感を胸に仕事にまい進してきました。
その中で救われたのが「ネガティブな考えは3分まで」という考え方でした。今でも続けていることなんですけど、大阪に移る際にお世話になっている吉本興業の社員さんに言ってもらったんです。
「イヤなことを考えたり、ネガティブになったりすることもあるだろうけど、それは3分まで。3分経ったら、次にどう生かすか。それだけを考える」
例えば、舞台でウケなかった。へこむことですけど、へこむのは3分まで。全く悩まないのもいけない。でも、引きずるのはもっといけない。悩むなら3分。
この考え方が自分には合ったのか、良い方法を教えてもらったと心底思っています。それ専用の砂時計も購入したくらい。
ただ、先日、ふと砂時計の時間が本当に合っているのか気になって、一回ストップウォッチで測ってみたんです。そうしたら、2分45分しかなかった…。
常にちょっと早めに切り上げてたんで、若干悩みが浅かったのかもしれませんけど(笑)、その考え方に幾度となく助けられました。
新しいスイッチ
そうやって日々を過ごす中、去年の春、新喜劇での“天井”に頭が届いたんです。
新喜劇というのは一日2公演とか、3公演とか劇場スケジュールによって舞台の数が決まっています。一カ月に出ることができる数に上限があるわけです。
そこに全部出たら、もうそれ以上出ようがない。いくら夜中に走り回ろうが、新喜劇の舞台の数は決まってますから。たくさん座員がいる中、全公演に出るなんてことも簡単ではないのですが、全部に出たら、もうそれが新喜劇で稼げる額のマックスになるわけです。その“天井”に頭がぶつかりました。
東京時代からしたらありえないくらいいただいてますし、その時点で十分うれしいことなんですけど、芸人としてはやっぱり上を目指したい。
でも、新喜劇の舞台に立ってギャラをもらうという座員本来の稼ぎ方では上限に達した。となると、これからどうしたらいいのか。天井知らずアレコレ目標を立てていたでコンビの時代とはまた違う、難しい問題を突き付けられることにもなりました。
ちょうどその時期にご縁が重なって結婚を意識するようになりました。そこで気づいたんです。今までとは違うスイッチが自分の中にできていることに。
以前、同期の「ガリットチュウ」福島に子どもができた時のことを聞いてたんですけど、今はその気持ちが分かるなと。福島いわく「子どもを授かったら思考回路が変わる」とのことだったんですけど、頑張りのベクトルが向く方向が“自分”ではなく“家族”になる。それを自分の意識として感じたんです。
新喜劇の舞台以外の幅をどう広げるのか。次のステップはどうすべきか。すぐには答えが出ないし、すぐに具現化もできない難しい問題ですけど「う~ん…」と悩む前に「やるしかない」が出てくる。
元から「やるしかない」んですけど、さらにスイッチが入るというか「四の五の言わずやるしかない」。この意識になりました。
恩返し
そして、ここから先、何かしらお仕事をさせていただけるなら、それは「新喜劇のため」になるものでないといけない。それも強く思っています。
これは本音の本音なんですけど、新喜劇は命の恩人だと思っているんです。コンビを解散して、東京でグダグダになっている自分が今もお笑いの仕事ができている。リアルな話、ありがたいばかりの収入もいただいている。つくづく感謝しかないなと。
この流れを作ってくださったあらゆる先輩方に頭を下げるしかないんですけど、その恩返しは新喜劇自体にすべきなんだろうなと考えています。
5月26日、初めてなんばグランド花月で自分の公演をさせてもらうことになりました。東京芸人として育った自分としてはなんばグランド花月の重みや怖さもこれでもかと感じていますし、それと同時に、そこでできる意味も痛感しています。
数年前を考えると、まさかです。ただ、そのまさかが起こるのも事実です。
東京でも当たり前のように毎週土曜のお昼に新喜劇が放送される。大阪の人が新喜劇のギャグを網羅しているように、全国の人に知ってもらう。その形を作れるように動く。それしか恩返しの方法はないのかなと思っています。
それを目指すためには当然時間もかかりますし、なんとかその一助くらいにはなりたい。そして、その頃はもうじいさんになっているんでしょうね。
できれば、その歳になってもMr.オクレ師匠ややなぎ浩二師匠みたいに舞台に出て、若手にしこたまイジられていたい。そして、お客さんに喜んでもらいたい。そうなれば、少しは恩返しをなるのか。そんなことも考えています。
(撮影・中西正男)
■千葉公平(ちば・こうへい)
1975年10月24日生まれ。千葉県出身。本名、旧芸名は金成公信(かねなり・きみのぶ)。吉本興業所属。96年、NSC東京校に2期生として入学し関暁夫とコンビ「ハローバイバイ」を結成。2009年に解散後はピン芸人として活動し、10年に菊池健一と「ギンナナ」を結成。19年に解散し、20年に吉本新喜劇座員として再出発し千葉公平に改名。今年4月、新喜劇の鮫島幸恵との結婚と鮫島の妊娠を発表する。YouTubeチャンネル「西成ハウス」を展開中。なんばグランド花月での初イベントとなる「千葉ちゃんと新喜劇ver.弍」を5月26日に開催する。