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サクラ 開花の方程式

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
弘前城とサクラ(イメージ)

サクラは自然の温度計

サクラ前線は約2か月かけて本州を北上する(開花日の平年値、気象庁)
サクラ前線は約2か月かけて本州を北上する(開花日の平年値、気象庁)

サクラは日本全国に分布し、野生種や変種、園芸品種を合わせて、400品種以上あるといわれています。木の高さがあるために、地面の気候だけに影響されることがなく、果樹のように人為的な影響も受けにくいため、昔から農耕作業の開始の目安とされてきました。

そのためでしょうか、地方にでかけると、ふとした畑のすみに、サクラの巨木があるのを見かけます。残雪を背景に、ひっそりとたたずむサクラは日本の春の原風景でしょう。

サクラの花の成長は、それまでの気温の経過に大きく左右され、平均気温が10度になるころに咲き出します。平均気温10度というと、福岡は3月中旬、京都・東京は3月下旬、松江・金沢は4月上旬、仙台は4月中旬、青森は4月下旬、札幌は5月上旬で、ちょうどサクラ前線の北上と一致します。まさにサクラが「自然の温度計」といわれるゆえんです。

サクラの開花と天気

手作り春ちらし(津軽塗の弁当箱)
手作り春ちらし(津軽塗の弁当箱)

上流階級で楽しまれていた花見が庶民に広まったのは江戸時代です。八代将軍徳川吉宗が進めた都市計画により、飛鳥山や向島などにサクラの名所が造られました。当時の花見は今と変わらず、花の下にゴザを敷いて花見酒を楽しんだそうです。

大手ビールメーカの「お花見に関する意識調査」のよると、約6割の人がお花見を計画していると回答し、年齢が高くなるほど、その傾向が強いそうです。やはり、男性は花見酒、女性は花見ランチだそうで、私はお花見弁当を作って楽しみます。

サクラの開花に最も影響するのは「気温」で、降水量や日照時間、湿度はあまり影響しません。そのため、サクラの開花日は日々の気温から予想しています。

たとえば、東京の場合は、1月1日から毎日の平均気温を積算して、約500度から600度に達する頃を開花日として予想する方法があります。昨年は積算温度514度で開花しました。

今年は2月末までで、約360度とほぼ例年並みとなっています。もちろん、これからの気温に大きく左右されますが、極端な寒さ暖かさが続かなければ、東京のサクラは3月26日ごろに開花しそうです。

お花見を計画するならば、4月4日(金)、5日(土)、6日(日)がいいかもしれません。

【参考資料】

安藤隆夫:サクラと気象,気象,1983

アサヒビール株式会社お客様生活文化研究所「お花見に関する意識調査」2008

写真はすべて著者が撮影したものです。

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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