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見取り図が千鳥・かまいたちに続くスター候補である理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家

ここ数年、テレビで大活躍しているお笑いコンビが千鳥とかまいたちの2組である。彼らはもともと大阪を拠点として活動していたが、ある時期に東京に移り、そこからじわじわと仕事を増やし、現在では冠番組を複数持つ売れっ子になった。

大阪で育った芸人は、大阪の劇場やローカル番組で芸人としての腕を磨くことができる。そして、全国ネットの番組でその蓄えた力を解放することで、一気にスターダムにのし上がっていくのだ。

そのような大阪芸人が売れるための王道を今まさに歩んでいるのが見取り図の2人である。巨漢で長髪の盛山晋太郎と、細身でおとなしそうなリリーのコンビ。パッと見の印象はヒップホップユニットのCreepy Nutsに似ている。彼らは2018年から3年連続で『M-1グランプリ』の決勝に進んだことで、その面白さが全国の人に伝わり、東京のテレビの仕事も順調に増えていった。

芸人としての見取り図の最大の魅力は、盛山の独特の節回しの甲高い声のツッコミである。これには一度聞いたら忘れられない中毒性がある。しかも、盛山は新しい言葉を自分で作ったり、状況を的確にたとえたりするワードセンスにも秀でている。彼が漫才の中で使っていた「あたおか(頭おかしい)」という言葉が若者の間で流行したこともあったほどだ。盛山はラップを聴くのが好きで、自身でもラップをすることを趣味にしている。独特のツッコミフレーズや造語のセンスはそこで鍛えられたのかもしれない。

漫才では、相方のリリーがひょうひょうとした態度で予測不能な角度からボケを放つ。それに対して、盛山がクセのあるパワフルなツッコミを返すことで、大きな笑いが生み出される。

彼らが「南大阪のカスカップル」という名物キャラクターになりきるショートネタも根強い人気がある。盛山が南大阪にいそうなガラの悪い若い男性・力也を、リリーがその男に黙ってついてくる金髪の女性・綾を演じる。彼らはこのキャラクターでCM出演も果たした。

見取り図は漫才が面白いだけでなく、バラエティ番組でも見事な立ち回りを見せている。野球で言うと走攻守揃った万能プレーヤー。千鳥、かまいたちに続いて王道をまっすぐ進む見取り図に死角はない。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行う。主な著書に『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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