なぜレアルはチュアメニを諦めていないのか?エムバペの“獲得失敗劇”と世代交代の波。
夏のマーケットが、開こうとしている。
欧州のフットボールシーンで、移籍市場の存在は重要だ。各クラブ、新たなシーズンがスタートする前に、補強を敢行してチームの強化を図る。
2021−22シーズンの欧州王者とて、それは例外ではない。
レアル・マドリーは昨季、チャンピオンズリーグとリーガエスパニョーラで優勝を飾り、ドブレテ(2冠)を達成した。しかしながらカルロ・アンチェロッティ監督は競争的なチームを維持するために補強の必要性を感じている。
マドリーは、この夏の補強の目玉として、キリアン・エムバペの獲得を掲げていた。だがエムバペがパリ・サンジェルマンと2025年までの契約延長で合意に至り、フロレンティーノ・ペレス会長は次の一手を打たなければいけなくなった。
「レアル・マドリーは、常に世界のベストプレーヤーを獲得しようとしている。エムバペの件は、すでに忘れ去られている。まったく問題はない。マドリーは完璧なシーズンを送ったんだ」
「マドリーのファンは、この選手たちを信じている。だから希望に満ちていて、素晴らしい試合を見ることができた。レアル・マドリーというのは、どのように人生を捉えるか、だ。ソシオのクラブなので、団結が重要になる」
これはフロレンティーノ・ペレス会長の言葉だ。
■フランスの有望株に照準
そのマドリーが現在、狙っているのがオウリエン・チュアメニ(モナコ)である。
マドリーは移籍金6000万ユーロ(約84億円)でのチュアメニ獲得を目指している。だがモナコが移籍金8000万ユーロ(約110億円)を要求しており、交渉が続いている。また、そこにパリ・サンジェルマンが加わり、争奪戦が繰り広げられている。
チュアメニは2020年1月にボルドーからモナコに移籍。モナコはチュアメニの獲得に際して、移籍金1750万ユーロ(約24億円)を支払った。
「チュアメニを獲得するために、私が彼に電話をかけなければいけなかった。当時の私のフランス語で彼を説得するのは大変だったよ」とは2019−20シーズンにモナコで指揮を執っていたロベルト・モレノ監督の弁だ。
「チュアメニは偉大なフットボーラーになりたいという明確な意思を持っていた。学ぶ意欲がすごくて、非常にフットボールにコミットしていた。我々は彼に個別のメニューを組んで、どのような体の向きでボールを受けるべきかを指導していた。ただ、最初は若い選手特有のイージーなミスをしていたね」
2020年夏にモレノ監督はモナコを去ったが、チュアメニはレギュラーポジションを奪取。2020−21シーズン、リーグ・アンで36試合に出場。2021年9月にはフランス代表デビューを果たした。
21−22シーズン、マドリーは若手選手が台頭した。
筆頭はヴィニシウス・ジュニオールだろう。チャンピオンズリーグ決勝のリヴァプール戦では、決勝点をマーク。公式戦52試合22得点20アシストと結果を残した。
ヴィニシウスだけではない。今季のマドリーのビッグイヤー獲得に大きく貢献したのが、ロドリゴ・ゴエスだ。
ロドリゴは今季公式戦49試合9得点10アシストを記録。スタッツだけ見れば、大した数字ではない。だがチャンピオンズリーグのチェルシー戦、マンチェスター・シティ戦と、重要な場面でネットを揺らした。決定的なシーンでは、必ず彼が現れた。
■費用対効果と回収
ヴィニシウス、ロドリゴに加え、フェデリコ・バルベルデ、エドゥアルド・カマヴィンガが大きく成長した。
ヴィニシウス(移籍金4500万ユーロ/約63億円)、ロドリゴ(移籍金4500万ユーロ)、バルベルデ(移籍金600万ユーロ/約8億円)、カマヴィンガ(移籍金3100万ユーロ/約43億円)と彼らの獲得にかけられた費用は決して高くない。
コストパフォーマンスという観点からも、ヤングプレーヤーへの投資は、将来的な回収の可能性が高い。ゆえに、マドリーは22歳のチュアメニに照準を定めている。
マドリーには、カゼミーロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチの盤石の中盤がいる。
そこに、チュアメニ、バルベルデ、カマヴィンガが割って入る。将来的には、スライドするーー。その未来予想図が。ペレスの中では描かれているのかもしれない。