避難所のトイレと災害ストレス:工夫してキレイに使い続けよう:キレイなトイレは命を救う:熊本地震
■避難所のトイレ
4月17日現在、熊本市のホームページ(避難所情報)によると、小中高大の学校、体育館、コミュニティーセンターなど、多くの場所が避難所になっています。熊本大分などで19万人の人が避難していると報道されています。まだ十分な支援物資が届いていない場所もあるようですが、大きな問題が、トイレです。
日本では大人一人が、1日60リットルの水をトイレのために使用しています。私たちは、普段はとても衛生的で匂いもしないトイレを使っています。しかし、水が出なくなった被災地では大変です。
阪神淡路大震災の時も、水が流れないトイレを、みんながどんどん使っていしまい、すさまじい状況になったトイレもあったと報告されています。
避難所のトイレは、災害時ストレス関する大きな問題です。
■トイレは大切。トイレの使い方は、最初が肝心
水が流れないのに、各自が勝手に使えば、たちまちトイレの汚れや匂いは、大変な状況になります。いったんそうなってしまえば、トイレは使えません。水が出るようになっても、詰まってしまって一ヶ月も使えないトイレもありました。
けれども、上手にキレイにトイレが使えれば、トイレは男女別のプライバシーが守られる部屋として、更衣室などとしてとても便利に使えます。だから、最初が肝心です。
基本は、新聞紙などに用を済ませてビニール袋で包んで捨てるということでしょう。トレイに新聞紙を置いておく必要があります(ネコ砂などがあればとても便利です)。
■トイレと災害ストレス
トイレがないことは、とても大きなストレスです。汚れて臭いトイレは、大きなストレスです。ストレスは、イライラや不安を呼び起こし、避難所の人間関係の悪化にもつながり、心と体の健康にも影響します。さらに不衛生なトイレは、心のストレスだけではなく、感染症の危険性すら増やしてしまいます。水が不十分なら、手もきちんと洗えないからです。
トイレ問題による心身の不調は、災害関連死の一因になるという人もいるほどです。兵庫県が作成した資料の中には、トイレは命を守る、だから安心安全快適なトイレを、と書いてあります(避難所等における トイレ対策の手引き(兵庫県))。
仮設トイレは、段差が大きくて高齢者には大変です。狭くて暗い仮設トイレを怖がる子どもいます。和式トイレが辛い人もいます(和式トイレの上に、お尻の部分に穴を開けた椅子を置く工夫もあります)。トイレに行かないで済むように水分を控えて、健康を害する人もいます。
元気な若者も、特に女性は仮設トイレを使うのを辛く感じる人がいます。ずらりと並んだ仮設トイレ。薄い壁に、出入りする姿も丸見え。
ある女性は、ご飯はおにぎり一つでもいいから、トイレを何とかして欲しいと語っていました。
■トイレに関する様々な工夫
・水が流れないのなら、新聞紙とビニール袋を使って、包んで捨てる。
・水はあっても量が不十分なら、拭いた紙は流さず別に捨てる。
・仮設トイレは、たまってきたら棒でならせば、まだ使える。
・仮設トイレは、置き方や置く場所で、プライバシーを確保する。男女別のブロックにする。女性用を多くする。
(ただしプライバシーだけを考えれば人目につかない場所だが、安全面を考えれば人目につく場所へ。良い場所の工夫を。)
・仮設トイレも足りなければ、簡易トイレを作る。阪神淡路大震災では、下水につながるマンホールのフタをはずし、足場を作ったトイレ(マンホールトイレ)が作られたりした。
・トイレをきれいに使うことの大切さを、避難所のみんなにわかってもらう。正しい使い方をきちんと説明する。
■避難所でのリーダーシップ
トイレの問題をはじめ、避難所のスタートにあたって、リーダーシップを取る人の存在が大切です。けれど、リーダーも被災者です。避難所リーダーとして委嘱状をもらっているわけでもありません。リーダーを支える人の存在も大切です。
みんなが協力してより良い避難所を作っていくために、トイレは大切なポイントでしょう。お年寄りや女性、子連れの親や障害を持った人が、トイレのことで困ったら相談ができる雰囲気と人間関係を作っていくことが必要です。
避難所のトイレは、最初の使い方を間違えると、大きなストレスになります。正しく使えれば、男女別のプライバシーが守られる部屋になり、避難所でのストレスを軽減し、私たちの命を守ってくれることでしょう。