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バレンタインシーズン 飼い主の甘い意識が ワンちゃんの生命に危機をもたらすことも…

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

もうじきバレンタインデーですね。

チョコレートは、どこに置いていますか。チョコレートが犬や猫の手の届くところにあると、帰宅すると、犬がぐったりしていたり、嘔吐しているかもしれません。室内飼いが増えて、犬が誤飲や中毒を起こすケースが増えています。そのことを解説します。

犬は、もともと食欲旺盛で好奇心が強いため、食べてはいけないものを食べて問題を起こすことがあります。筆者は、そんな犬を数多く見てきました。

誤飲や中毒を起こしやすい犬

・若い犬ほど好奇心が強くじっとしていないので、飼い主が留守のときに、棚などから食べ物を落として事故になりやすいです。

・体が小さいか、体重が少ないと、中毒になりやすいです。

・過去に誤飲している子は、何度もする傾向があります。

・猟犬は、獲物を探す能力があるので、飼い主の留守中に、食べ物を探している可能性が高いです。

この時期、誤飲の多いものを解説します。

チョコレート

撮影筆者
撮影筆者

2月になると、チョコレートやチョコレートケーキを誤飲して来院する子がいます。

チョコレートに入っているテオブロミンが問題になります。

テオブロミンとは

・アルカロイドのひとつです。

アルカロイドの有名なものとして、タバコのニコチンやコーヒーなどのカフェインと同じようなものがあります。

・人がコーヒーなどでカフェインを飲むと、眠気覚ましなどの神経興奮作用やオシッコに行きたくなる利尿作用が発現されます。人はテオブロミンに対して病気になるほど感受性が高くないのですが、犬はこのテオブロミンの感受性が高いので、よく反応します。

・犬はいったんテオブロミンを体に入れると分解して排泄する能力が低いので、毒素が体の中にとどまってしまいます。

犬がチョコレートを食べたときの中毒症状

食べた量にもよりますが、ミルクチョコレートよりビターチョコレートの方が危険度は高いです。ビターの方がテオブロミンの含有量が多いからです。

・消化器症状、下痢や嘔吐。

・神経症状 興奮する、やたらに動き回る、痙攣します。

・オシッコをよくします(頻尿)。

・パンティングをします(喘ぎ呼吸)。

・震えて、ふらつきます。

・ぐったりして、昏睡状態になります。

・犬が大量にチョコレートを食べた時、ひどい場合だと、死に至る可性性もあります。

風邪薬・鎮痛薬

他にも犬が誤飲する問題のあるものは、市販の鎮痛薬や風邪薬です。

冬のこの時期、リビングに置きっぱなしになっていませんか。糖衣錠になっているものに注意が必要です。これらは外側が甘いのでオヤツのよう食べてしまいます。

・イブプロフェンやアセトアミノフェンが含まれています。

腎臓と肝臓の障害を引き起こす可能性があります。量によっては、命に危険を及ぼす場合もあります。

獣医師には正直に申告を

誤飲したからといって、打つ手がないわけではないです。

犬の場合も人間と同様に治療法があります。ただ、犬がどのような薬や食品を食べてしまったか、飼い主が知らない場合もあるし、言おうとしない場合もあります。治療に支障をきたすので、正直に申告して欲しいです。

誤飲の中毒の一般的な治療

・誤飲してすぐなら、吐かせる。

・それが無理な場合は、点滴などをして排泄を早くするように促します。

まとめ

しっかり管理して事故を防ごう

幸い、ほとんどの中毒事故は防げます。

この問題に対する飼い主の意識を高め、家ではペットが手の届かない安全な場所に薬や食品を保管すればいいのです。彼らの多くは、留守番の時間も長いので、誤飲の事故が増えているのです(猫は、犬ほど薬や食品を誤飲しません。絶対にないわけではありません。でも、犬と同様に気をつけてあげてください)。飼い主が毎日、内服している薬もペットの手の届くところには、置かないように。室内飼いの多いいまの時代、ちょっとした飼い主の気のゆるみでペットの事故になるので、気をつけて欲しいものです。楽しいバレンタインデーを過ごしましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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