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良く使われていても、天気予報では使わない用語

饒村曜気象予報士
国語辞典(ペイレスイメージズ/アフロ)

==天気の表現==

 天気は、気温、湿度、風、雲量、視程、雨、雪、雷などの気象に関係する要素を総合した大気の状態で、気象庁では国内用として、15種類に分けています。

【気象庁の15種類の天気】

1 快晴 2 晴れ 3 薄曇り 4 曇り 5 煙霧 6 砂じんあらし 7 地ふぶき 8 霧 9 霧雨 10 雨 11 みぞれ 12 雪 13 あられ 14 ひょう 15 雷

 そして、15種類の天気には番号がつけられ、該当する天気が2つ以上あるときには、番号の大きい天気が採用されます。

 例えば、11のみぞれと、15の雷が同時に観測されたときは、番号の大きい「雷」が天気として採用されます。

天気予報の表現

 昔は、「低気圧ハ発達シツツアリ」など、漢文調の表現でしたが、天気予報がラジオ等の使われるにつれて、日常会話で使われる表現に変わってきました。

 ただ、気象庁では、日常会話でよく使う用語の定義をはっきり決め、誤解をまねくなどの理由で使わなかったり、言い換えをしている言葉があります。

 気象庁が天気予報で使わない言葉の例として、「よい天気」があります。

 「よい天気(好天)」は、意味がいろいろに解釈され誤解をまねきやすいので用いません。少雨のときには、晴れよりも雨のほうがよい天気ともいえません。このため、具体的な天気を明示しています。

「悪い天気(悪天)」も、意味がいろいろに解釈され誤解をまねきやすいので用いず、具体的な天気を明示しています。

 同様に、「雲の多い天気」は「曇りの日が多い」「曇りのところが多い」と言い換えています。意味がいろいろに解釈され誤解をまねきやすく、また晴れか曇りか不明であるので用いません。

 さらに、「荒天」は、わかりづらく、好天と同じ発音なので、「荒れた天気」と言い換えています。

 「不安定な天気」も、大気の成層状態が不安定で、にわか雨や雷雨の起こりやすい天気の意味が普通ですが、晴れの日と曇りや雨の日が小刻みに変わるような天気経過と混同されるおそれがあるので用いず、必要ならば、「大気の状態が不安定」など表現しています。

 なお、「天気が下り坂」は、晴れから曇り、または曇りから雨(雪)に変わる天気の傾向がわかるということで、使用されています。

 身近な言葉を使っていても、天気予報で使われている言葉には細心の注意が払われています。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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