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あの「Google Glass」はどうなった? 実は今も健在、新市場に活路

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(提供:Google/Shutterstock/アフロ)

 かつてスマートフォンのあとに来る次世代情報端末として期待されたメガネ型ウエアラブル機器。それらは、「スマートグラス」と呼ばれ、米グーグルの「Google Glass」をはじめとする製品が脚光を浴びた。

 しかし、プライバシー侵害などの問題が取り沙汰された後、グーグルは2015年に開発の中止を決定。それから4年、今はスマートグラスが世界的にメディアで大きく取り上げられるようなことはなくなった。

製造、物流、医療の現場で導入

 だが、ここ最近のスマートグラスは、新たな市場である産業部門に活路を見いだし、一定の成功を収めていると米国の市場調査会社eマーケターが報告しており、これが興味深い。

 eマーケターによると、すでにスマートグラスの導入が始まっている産業分野には、製造業、物流業、医療機関などがある。

 例えば、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や、物流大手のドイツポストDHL、医療機関の米サッター・ヘルスが、スマートグラスを利用し、業務に役立てている。 

 工場などでは、作業手順を確認したり、機器の操作説明書を参照したりするといった用途でこれらのデジタルアシスタント機器が不可欠となっている。今の工場は、製造工程がかつてより複雑になっており、情報端末で効率的に作業を進める必要がある。

 また、物流大手のDHLでは、 ピッキング(物品の選び出し)や梱包などの作業にGoogle Glassを使い、作業時間を25%短縮することに成功した。

 医療機関のサッター・ヘルスでは、医師が患者の病室を訪れる際、Google Glassで診療情報などを確認できるようにしている。

産業向けGoogle Glassの登場

 Google Glassは、もともと、グーグルの次世代製品研究部門「Google X」が手がけていたが、同社が2015年に持ち株会社制へと組織再編したのに伴い、親会社アルファベット傘下の「X」と呼ばれる事業が扱うようになった。

 その後、同社は、「Glass Enterprise Edition(グラス・エンタープライズ・エディション)」と呼ぶ、産業用途のスマートグラス事業を立ち上げた。

 それ以来、同社は「グラス・パートナー」という、ソフトウエアのカスタマイズやカスタマーサービスを行う外部企業と提携し、顧客の用途に合った製品を開発・販売している。

出荷台数、2022年には3270万台へ

 米調査会社ABIリサーチによると、グーグルがGlass Enterprise Edition事業を立ち上げた一昨年(2017年)におけるスマートグラスの世界出荷台数は、わずか23万台。しかし、これが2022年には、3270万台に増大すると、同社は予測している。

 現在のスマートグラスの価格は、700ドル~2000ドル(約8万円〜22万円/例:エプソン製品)。今後、価格が低下していけば、普及に拍車がかかるのではないかと、業界関係者は期待している。

  • (このコラムは「JBpress」2019年1月23日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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