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戦場カメラマン渡部陽一さんの立ち居振る舞いを分析して分かった「愛され力」の秘訣4つのポイント

畠山仁美所作講師

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当日、観客として参加させて頂いたのですが、表彰後のパネルディスカッションに登壇された、戦場カメラマン渡部陽一さんの壇上での立ち居振る舞いがとても印象的で、長年「所作」と向き合ってきた筆者としては分析せずにはいられませんでした。

今回は、渡部陽一さんの好感度の高さ、愛されキャラであり続ける理由を、立ち居振る舞いの観点から4つのポイントに分けて探ってみたいと思います。

1,まるで自分に語り掛けてくれているかのような話し方

内容もさることながら、話し方に惹きこまれます
内容もさることながら、話し方に惹きこまれます

渡部陽一さんといえば、ゆったりとした話し方が特徴的ですが、今回間近で拝見して、動作やアイコンタクトもゆっくり行っていることが分かりました。

渡部さんが顔を会場全体にむけて話す際、視線をきょろきょろ動かさず一点を見つめて話すので、話している間ずっと自分と目が合っているかのように感じていました。

もしかして今、私に向けて語り掛けてくれてる???と錯覚してしまったほど…。(これだけでファンになってしまいます)

噛んで含めるような話し方、大きな身振り手振り、長めのアイコンタクト、すべては自分の意見や考えを確実に誤解なく相手に伝えたい、という強い思いの表れなのかもしれません。

2,「満面の笑み」と「真剣な表情」の絶妙な切り替え

はちきれんばかりの笑顔
はちきれんばかりの笑顔

笑顔は「桜」にたとえられます。微笑みの二分咲き、歯を見せた五分咲きスマイル、そして満開の笑顔。

渡部さんの笑顔はまさに満開!まるで「今この場にいることが楽しくて仕方ありません!」 といった気持ちが溢れているかのような満面の笑みだったかと思うと、人の話を聴くときに見せる ”真剣な面持ち”。その「表情の振れ幅」が非常に大きいのが特徴です。

表情が豊かな人、すなわち感情表現が豊かな人は、相手に対して心を開いている人、素直な人、無邪気な人、といった印象を与えます。

さらに笑顔と真剣な時の表情のギャップの大きさによって人間的な深みを感じさせる点が、渡部さんの大きな魅力となっていると感じました。

3,姿勢とお辞儀の美しさ

「美しい姿勢からの深々としたお辞儀」と、「去り際に立ち止まっての会釈」
「美しい姿勢からの深々としたお辞儀」と、「去り際に立ち止まっての会釈」

時折、背筋を伸ばして姿勢を正す場面が何度かあったことから、常に姿勢を意識しているであろうことが見て取れます。

あまりにも姿勢をよくしていると、ともすれば堅い印象になりかねませんが、そこは渡部さんの表情の豊かさによって見事に緩和されていました。

そして美しかったのがお辞儀です。

最後の挨拶をする際、さっと居ずまいを正し、両膝をそろえ、指先もきれいに整えた状態で、姿勢をくずさず、武士のような凛々しいお辞儀。

もしかしたら…と思って調べてみると、やはり剣道をなさっていたとのことで合点がいきました。

ここでさらに素晴らしかったのが、ゆっくりと上体を起こしていたこと。

お辞儀は、倒すときよりも起こすときをゆっくり行うことで、最後まで心を込めていることが伝わります。どうしてもサッと起き上がってしまいがちなところ、残心(最後まで気を抜かない)を行っていたことに、大変感銘を受けました。

4,去り際まで礼儀正しく

パネルディスカッションが終わり、パネラーの方々が壇上から降りて帰る際、渡部さんは一旦立ち止まり、笑顔で丁寧に会釈をしてから立ち去っていました。

「わざわざ立ち止まって会釈する」は、シンプルですができそうでできないことの一つ。早く立ち去りたい、自分がお辞儀するせいで他の登壇者を待たせたくない、といった気持ちから、どうしてもおざなりになりがちなところ、しっかりと行っていたのはさすがでした。

渡部陽一さんの立ち居振る舞い全体からあふれる「敬意」

今回、渡部陽一さんの振る舞いから感じたのは、終始一貫した礼儀正しさと、司会の方、他のパネラーの方々、観客、すべての人たちへの「深い敬意」でした。

江戸時代の儒学者、佐藤一斎は、「礼儀は鎧、礼儀は人を守る」と言いました。

危険と隣り合わせの地域や、言葉の通じない海外で過ごすにあたっては、自分の身を守るため、また現地の方々と良好な人間関係を築くため、相手に対する敬意と礼儀をもち、それをノンバーバル、言葉以外の表情や態度、振る舞いで分かりやすく表現する必要があるのでしょう。その重要性は、私たちの想像以上なのかもしれません。

お話の内容も大変興味深いものでしたが、渡部陽一さんのフレンドリーかつ礼儀正しい振る舞いに、「誠意ある人との向き合い方」の本質を見た気がいたしました。

●渡部陽一さんオフィシャルサイト

所作講師

日常の振る舞いを見直すことで、心・体・生活を整えるお手伝いをする所作講師。立つ・座る・歩く・物を扱う・挨拶する、といった日常あたりまえに行っている所作を通して、振る舞いだけでなく自分の内面も見つめ直すレッスンが好評。2011年の開講以来マンツーマンレッスンにこだわり、一人一人と向き合ってきた。ブログ【所作美人のヒント】では、バタバタと忙しい日々の中で、所作を通して自分を磨く考え方を発信。著書「一日一分からはじめる『おだやかな人になる所作の習慣』」

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