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オリンピック開催信じ成人式出ない。明治大学・石田吉平の「見本となる行動」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 明治大学ラグビー部の石田吉平は現在、今夏開催予定のオリンピック東京大会に臨む男子7人制日本代表の候補選手として活動中だ。

 身長167センチ、体重75キロと小柄ながら、巧みなフットワークと走りの切れ味で防御網を突破する。

 痛快なプレーぶりで、全国優勝過去13回の強豪で2年生ながらレギュラーを獲得。さらに1年時は男子7人制日本代表の活動に専念し、延期決定前のオリンピックを見据えるつもりだった。

 候補合宿の練習があった14日午後、オンライン取材に応じた。約1年ぶりに7人制へ挑む意気込み、準決勝敗退に終わった大学選手権での悔しさについて語った。

 以下、共同オンライン会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――久々に7人制でプレー。15人制との違いを感じることは。

「15人制と7人制では走行距離が違う。7人制では、体力が必要とされる。体重はキープで、しっかり走りやすい身体にしていこうと考えている。久しぶりに15人制から帰ってきたので、いま(1月14日)は別メニューに取り組んでいます。バイクを使って体力を上げる」

――ブランクをどう埋めるか。

「僕は15人制で試合をしているので、(実戦の)経験はある。ランは自分の思う形になってきた。7人制より15人制の方が(相手を)抜くのが難しい。15人制で抜けたら7人制で抜きやすくなる。(15人制でプレーする間も)7人制を意識して、自分がアタックする時にどう抜くかを考えていました。ディフェンスも克服された。

7人制の試合勘は戻っていないですが、試合を重ねることで克服して代表に選ばれたい。いまは日本代表の動きに関する理解が足りない。人一倍、頭を使わないといけないと感じました。他の選手とコミュニケーションを取りながらやりたいです。他の選手はフレンドリーで、温かく迎えてくれてうれしかったです」

――当分、大学の寮へは戻らない。

「セブンズ合宿に参加するにあたって転々とする。大学には迷惑をかけられない。7月までには7人制に専念しようということになりました。監督とも話し合わなければいけませんが、いまは(代表合宿の期間外は)実家へ戻ることにしています」

――スコッドで唯一の大学生だが。

「最年少らしくアグレッシブにチャレンジしたいですし、この年でここまで経験できることで、未来に自分がリーダー格になった時に(周りを)引っ張れる」

――国内での新型コロナウイルスの感染拡大を受けて。

「人との接触を避ける。ラグビーの合宿以外でも自分が日本代表だと自覚しながら、見本となるように行動したいと思います」

――オリンピック東京大会の開催が危ぶまれているが。

「自分たちはある事を信じて、ある時のためにハードワークするだけです」

――オリンピック東京大会の価値は。

「東京大会は、自分がアスリートであるうちに1回しかないと思う。日本中の皆さんが注目してくれるだろうし、ここが自分のターニングポイント。一番、楽しみというか、チャレンジしたい大会だと思っています」

――将来的に15人制、7人制のどちらを優先するか。

「いまはわからないですが、ひとつひとつの与えられたチャンスを中途半端にせずにやっていきたいというのが、いまの自分の気持ちです」

――選手権について。1月2日の準決勝で、天理大学に15―41で敗れました。

「自分のなかで一番、悔しい試合というか。ボールもあまりもらえなかったですし、強みが出せなかった。ミスも多かった。大分、自分の実力不足というのが出たと思いました。自分からアグレッシブにボールをもらおうと思いましたし、フィジカルの強化もしていきたいと思いました」

――その後は。

「負けてから次の、次の日に実家に帰りました。身体も鍛えていたんですが、基本的にリフレッシュできるようゆっくりしていました。武庫川の河川敷で走って、その近くの階段を使ってトレーニングしています」

――1月11日の成人の日は、大学選手権の決勝があった。

「大学選手権の決勝は家で観て、悔しいと感じました。自分たちがそこに立ててないのが現実。そこに立てていたら明治のラグビーを存分に出せたと、後悔した。この悔しさを忘れないようにやっていきたいと強く感じた。

 成人式は(開催されたが)行けなかった。代表に選ばれてオリンピックで活躍しているという方が、地元の皆にとってはかっこよく映る。成人式に行けなかったことがよかったと思えるようにやっていきたいです」

 幼少期から尼崎ラグビースクールへ通った。中学時代に成長が止まって「自分が小さいと気づいた」が、「大きい相手を倒すのが快感になりました」。謙虚だが堂々としている。

 大阪の常翔学園高校へ進むと、野上友一監督の勧めで15人制のポジションを転向。最前列のフォワードから後列端のウイングに変えた。すると7人制日本代表の予備軍にあたるセブンズユースアカデミーに呼ばれたり、高校日本代表にリストアップされたりと、キャリアアップができた。

 2020年夏に開催予定だった東京大会の延期については、以前から「成長するチャンスができた。1年間延びたということは嬉しかったですし、(その間)もっと必要とされるプレーヤーになりたいなと思いました」と述べていた。目標を果たすべく、ラストスパートをかける。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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