3月の内定辞退に怯える採用担当者の心境とは。
3月1日に23卒向け新卒採用の広報が解禁されたものの、2月1日時点ですでに「本選考を受けた」65.7%と前年より 5.4 ポイント増加(受験社数は平均 3.5 社)、「内定を得た」20.2%は前年同期(13.5%)を上回っている。活動終了者は全体の 3%程度発生(キャリタスリサーチ調べ)しているように、就職活動全体が前倒しになり、企業側も採用手法を科学して早期に内定出しをしているのが実態だ。
そんな中、実は22卒つまり4月に入社を予定している内定者が今から辞退することをリスクとして考え、日々学生からの連絡に怯えているという採用担当者が少なくないという声を聞く。つまり、入社まで1ヵ月を切った3月上旬にまだ内定者が辞退をする可能性があるというのだ。毎年発生する「卒業が出来ずに辞退」という流れではなく、他社への入社、就活浪人、海外留学などを理由とした辞退への懸念が高まっているのだ。
内定承諾は複数社
ひと昔前の内定承諾と言えば、学生も企業も最終的な合意という認識が常識だった。つまり、他社併願で迷い、最終的に自分が入社する覚悟を持てた、かつ他社併願をすべて辞退したことで内定承諾にサインをするというのが常識だった。
ところが、ここ数年の就活生のトレンドになりつつある考え方は、複数社に内定承諾をして、そこからじっくり検討して入社先を判断するというのだ。
実際に22就活を終えた都内大学4年生に話を聞いてみた。
ーーご自身の就活で内定承諾は何社しましたか。
「3社しました。企業側から内定承諾の回答期限を区切られたという理由に加えて、ほぼオンライン就活だったので、本当にどの企業に入社すべきかの判断が全然ついていない状態で1社を決めなければいけなかったので、結果的には3社内定承諾をしました。内定者懇親会や内定式、内定者フォロープログラムを通じて3社それぞれの本質的な内情や社風、働く社員のリアルが見えたので新年早々に2社を辞退して本当に入社する先を確定させました」
ーーまわりの就活生も複数の内定承諾をしていましたか。
「そうですね、複数内定を獲得できた友人の多くは複数社に内定承諾をしていました。もちろん、入社覚悟が出来ていれば1社だけに承諾する友人もいました。とにかく、オンライン就活には限界があると感じていて、内定が出たあとに不安が大きくなりましたし、あまりに自分が本質的な情報を持っていないことに気付きました」
23卒就活で既に内定獲得している関西の大学3年生は、
ーー内定承諾について、どう考えているのか。
「正直、23就活もリアルとオンラインのハイブリッド型なので会社のことや社員について読み込めない部分が活動していると強く感じます。それでも内定を頂けてしまうので、自分が他社とどうやって比較をして覚悟を持てるかの勝負だと思っています。まだまだ先になりますが、複数社の内定承諾をした状態で内定式で役員の話や社員のリアルを体感して、さらに来年日本の経済がどこまで戻っているか、自分が持っている内定先の市場動向を見て1社に絞ることになると思います」
オンライン就活では本質が読み込めない
確かに多くの学生がコロナ禍で企業の本質的な情報を取り切れていないという印象を受ける。当然、面接ではお互い非言語情報が取りづらく、判断できにくい部分は否めない。コロナ禍1年目では採用担当者は手探りでオンライン採用を開発して2年目ではある程度の型化、そして3年目を迎えて企業ごとの差別化も始まっているものの、まだまだ課題は残っているようだ。
では、実際に企業側の採用担当者は内定辞退をどう捉えているのか。
新卒人気企業ランキングの常連の消費財メーカーの採用責任者に聞いてみた。
ーー4月入社の内定者が辞退することを想定していますか。
「まず、毎年ほぼ決まったパーセンテージで卒業が出来なくなってしまう学生が発生します。それ以外では、正直コロナ禍では辞退者の数が少し増えていると思います。理由は明確だと思っていて、企業側が採用活動の中で就活生にご提示出来ている情報が少ない、または立体的ではないのだと考えています。どうしてもオンラインでのコミュニケーションや情報提供が多くなるので、本来対面で伝える際に感じられる情報がコロナ禍のオンライン就活では少ないのだと思います。その為、入社前に不安になったり、他社併願で負けてしまうケースが我々のような大手企業でも当たり前に発生しています。特にこの3月はちょっと怖いですね」
本質的な情報を入手する意識
そもそも就職活動のルールが形骸化され、各社が自由に採用活動を実施しているのが実態の中、ある意味では学生の情報収集や主体性の差で就職活動の質が変わっている。つまり、古い就活の情報を手にしている就活生はオンライン就活では本質的な情報を入手することが難しく、かつ、企業からの評価を受けにくい。一方で、最前線の新卒採用情報や、企業が今学生のどの部分を評価しているのかを把握して活動している就活生は当然、企業から高い評価を得て内定が集中します。
学生が複数社の内定承諾をして企業に虚偽報告をせざるを得ないカオスな状態は、正直不健全であることは大学側も企業側も良く理解はしている。では、この市場をどう変革するのか?という視点がこれから重要になってくるはずだ。
オンライン就活では本質な情報が届けられないという課題を学生視点になってまだまだ科学できるはずですし、学生がまずは自己分析をして、強引に夢を決め込んで活動できるような指導を大学側も就職支援する大人たちもアップデートしていくことが今求められている。
オンライン就活の結果、入社後のミスマッチが急増すると推測されているのであれば、今本気で見直すべきは新時代に向けた本質的なキャリア教育と新しい就活であろう。
内定者フォロープログラムの科学
コロナ禍の就職活動はオンラインが中心で、結果的に就活生は本質的な情報を得ることが難しく、複数社の内定承諾をするという背景があるのであれば企業側は内定承諾を得たあとが勝負になってくる。
内定者が如何に辞退をしないようにするかを考え、、その中でより企業理解を深めてもらう、入社までに社会人としての基礎能力を引き上げることが新時代の内定者フォロープログラムになってくるはずだ。
新時代だからこそ、企業は学生視点で採用活動を見直し、就活生は古い就活ではなく企業が今、本当に何を学生に求めているのかを把握して準備することが必要になってくる。
引き続き、コロナ禍の就職活動には注目したい。
はたらくを楽しもう。