天の川銀河は100万分の1の「極めて希少な」銀河であると判明!?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「天の川銀河は特別な存在だった!?」というテーマで動画をお送りします。
生命が存在し、それを育む環境を持つという意味で、地球は間違いなく特別な惑星です。
では地球が特別なのは、元を辿れば何が原因なのでしょうか?
その疑問の答えは未だよくわかっていませんが、太陽系が特別だからという可能性もありますし、天の川銀河が特別だからという可能性もあります。
そんな中、実は天の川銀河も特別であることを示す研究結果が、2022年12月に発表されています。
今回の動画ではそんなテーマを解説していきます。
●銀河フィラメントとローカルシート
今回の本題に入る前に、まず内容を理解するための前提知識として、「銀河フィラメント」と「ローカルシート」という概念を解説したいと思います。
天の川銀河は、お互いに重力的に拘束し合っている、直径約1000万光年の範囲にある80個以上の銀河の集団「ローカルグループ(局部銀河群)」に含まれています。
さらに視野を広げ、宇宙を非常にマクロなスケールで見ると、数億光年の範囲にわたってほとんど何もない超巨大な虚無空間である「超空洞(ボイド)」を、銀河が高密度で存在する領域が薄い膜状で包み込むような構図が見られます。
このような、宇宙をマクロスケールで見たときに現れる泡状のような構造を「宇宙の大規模構造」と呼びます。
また大規模構造のうち、ボイドを包むように存在する銀河の高密度領域を「銀河フィラメント」と呼びます。
宇宙の大規模構造は重力の影響で、時間とともに銀河フィラメント部分がより高密度になり、ボイドは物質を周囲の銀河構造に奪われてより膨張し低密度になります。
この作用から、ボイドからは斥力が働いているように見え、その結果銀河フィラメントは時間経過とともに平べったい形状になっていきます。
天の川銀河やローカルグループを含む銀河フィラメントを特に「ローカルシート」と呼びます。
ローカルシートは直径約4600万光年に対して厚さ150万光年で、かなり平面に近い形状をしています。
●天の川銀河は特別な銀河だった!?
宇宙にある銀河の多くが矮小銀河である中で、天の川銀河は十分に大きく立派な円盤銀河です。
しかし円盤銀河は宇宙にたくさん存在するので、天の川銀河単体で見ると「特別」というほどではありません。
しかし先述した「ローカルシート」まで視野を広げると、天の川銀河は宇宙の中でも極めて特殊な銀河である可能性が浮上しました。
「IllustrisTNG」というプロジェクトチームは、現在信じられている宇宙論モデルのもとで、数百万個の銀河を含む一辺10億光年の宇宙を世界最大級のスーパーコンピュータ上でいくつも再現しました。
その結果、銀河フィラメントの大きさに対し、その中に含まれる銀河の大きさは非常に小さいという傾向が見られました。
一方でローカルシートのサイズに対して天の川銀河は非常に大きい銀河であり、所属する銀河フィラメントのサイズに対してこれほど大きい銀河は、100万個に1個しか存在しなかったそうです。
別の例えでは、天の川銀河から5億光年の範囲で宇宙を探さなければ、天の川銀河のようなサイズ比の大きい銀河を含む銀河フィラメントを見つけることができない、というように表現されています。
天の川銀河は、それが所属する銀河フィラメントに対する大きさという意味では、宇宙の中で極めて「特別な」銀河であるといえます。
ただし今回のシミュレーションの規模は、結論を断定するには十分ではなく、今後も追加の研究が必要とのことです。
●太陽系も特別な惑星系だった!?
天の川銀河だけでなく、太陽系も特別であることを示す研究成果も、2022年11月に発表されています。
観測技術の大きな進歩もあり、2023年7月時点で系外惑星は約5500個、複数の惑星を持つ「多重惑星系」も約900個発見されており、現在ではありふれた存在といえます。
惑星系の惑星の大きさや並び方を定量的に評価し、太陽系の惑星の並びの希少性を理解するため、ベルン大学などの研究チームは、惑星系を4つに分類する枠組みを開発しました。
このモデルによって惑星系に属する惑星の並びが正しく評価され、他の惑星系とも特徴が比較できるようになりました。
惑星系の4つの分類には、「類似タイプ」「正順タイプ」「逆順タイプ」「混合タイプ」があります。
類似タイプの惑星系では、似たようなサイズの惑星が並んでいます。
また正順タイプの惑星系では、主星の恒星から遠ざかるにつれて惑星が大きくなる傾向があり、逆順タイプではその反対に遠ざかるほど小さくなります。
混合タイプでは、惑星のサイズも並びもバラバラです。
この4つの分類を作ったことで、現時点でも惑星系の性質について判明していることがいくつかあります。
まず、最も一般的なのは「類似タイプ」の惑星系です。
具体的には惑星系全体のうち8割はこれに当てはまるそうです。
そして意外にも、最も希少なのが「正順タイプ」です。
太陽系の惑星の並びはまさにこの分類なので、太陽系の構造が他の惑星系と比べて珍しいものであるという定量的な証拠が得られました。
またこの惑星の並びに関する4つの分類は、その惑星系の初期条件と深い関連があることもわかっています。
惑星系に存在する重元素が少なく、主星の恒星やその周囲の塵円盤の質量が小さい場合、「類似タイプ」の惑星系が形成されやすいそうです。
類似タイプの代表例である「トラピスト1系」についても、その主星が恒星としては小さな赤色矮星となっています。
また重元素が多く、大質量の恒星や塵円盤からは「正順タイプ」や「逆順タイプ」が形成されやすく、中程度の場合だと、「混合タイプ」になりやすいそうです。
新たに得られた結果から、太陽系の惑星のサイズ比や並び方は非常に特異であると言えそうです。
このように、太陽系が他の惑星系と比べてどのような特徴を持っているのかを正確に理解できれば、それに伴って新たに様々なことが理解されます。
まず、太陽系の現在の配列はその形成・進化の歴史に関わっているため、それらを知ることに繋がります。
また、太陽系と性質が似た惑星系には、そうでない惑星系と比べて地球のように生命に適した環境を持つ惑星がある可能性が高いと判断すれば、そのような惑星系にて優先的に生命探査を行うこともできます。
私たちが知る中で、最も特殊な惑星である「地球」。
その特異性の起源を辿ると、どこに行きつくのでしょうか?
私たちの住む環境の特異性は、太陽系、さらに天の川銀河と、非常にマクロなスケールに起源があるのかもしれません。