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お麩2.0の時代~腐女子が「麩」女子になり、オフ会が「お麩会」になるとき

坂口孝則コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家
(写真:アフロ)

お麩という流行

2013年から2015年にかけて、お麩がブームになっているとご存知だろうか。

お麩とは、まさに、あのお麩だ。お味噌汁に入れ、すき焼きに入れる小麦グルテンを主原料とするものだ。

現在、腐女子は「麩」女子に書き換えられ、オフ会はお麩料理を楽しむ「お麩会」と意味が変容している。このブームは2013年あたりからきており、雑誌「クウネル」がまっさきに2013年1月発売号で「料理の風景。山形・新潟・宮城。食べれば、うふふ、お麩の旅。」を取り上げたほか、雑誌「como」は2013年11月発売号で「美容効果に期待大!テレビでも話題のお麸ってスゴイ!おいしい活用術」の特集を組んだ。

また、2015年も、「お麩」をキーワードにさまざまな料理特集が組まれた。その多くがダイエットや、低カロリー、健康食品という観点から注目しており、お麩は古くて新しい食材のようだ。

お麩がもたらす料理革命

このお麩でどんなものが作れるのだろうか。

ベジタリアンなど食肉習慣のないひとが大豆ミート(擬似肉)を食すのは有名だが、お麩を使った唐揚げは鳥肉にそっくりだと話題だ。また、角煮にすれば豚と間違うほどという。その他、お麩を上手く使えば、肉料理が代替できるとされ、カツ、ハンバーガーなどにも代替できる。その他、お麩は、グラタン、ピザ、ラザニア、フレンチトースト、ラスク、プリン(!)などにも変容するのだ。

ちなみに、私は個人的にお麩で代替した唐揚げとグラタンを食べた。大豆ミートよりも、鳥の唐揚げに近いと感じた。またグラタンはほとんど変わらない。もちろん食べ過ぎは意味をなさないだろうが、私のようなおじさんにとっては、ダイエット食品として活用できるだろう。

その一例でいえば、

・酢豚:豚488Kcal、にたいし、お麩355Kcal

・グラタン:パン526Kcal、にたいし、お麩184Kcal

とカロリー的に優しい。

まさにお麩2.0ともいうべき料理革命が、おじさんの知らないところで進んでいる。ぜひ、ご一読ならぬ、ご一食をお願いしたい。

お麩の歴史

お麩はもともと中国仏僧から伝来したものといわれている。日本では当初、限られた層のみが食し、貴重なタンパク質とミネラルの摂取源だった。その後、千利休がお茶会で提供するなど、徐々に知名度をあげていく。江戸時代、18世紀後半から19世紀初頭にはお麩は、大量生産業者の出現によって市民権を得ていく。

昭和に入ってからは、度重なる戦争によって小麦が手に入りにくくなったこともありお麩業界は低迷。また、近年では小麦の多くを輸入に頼ることからも、お麩業者は減少の一途をたどっていた。昭和初期に1000を超えると推定されるお麩の事業所数は、いまでは150ていどにすぎない。協同組合全国製麩工業会もわずか30年前には300社弱だった加入業者も、いまでは100社弱となっている。

そもそも、日本は食文化の洋風化により、純和風の食品加工業者は斜陽の憂き目を見てきた。しかも、お麩は、前述のとおり原材料は外来品に頼らざるをえない弱点をもっている。さらにお麩の製造工程は、原材料である小麦グルテンの取り扱いが難しく、その多くが職人技に依存していることからも、これまでの業界低迷が尾を引いている。つまり、後継者が育っておらず、安穏とはしていられない。

もっともこのところのお麩ブームは一過性のものという見方もある。オーガニック、マクロビオティック、ダイエット、自然食品、健康食品……さまざまな言葉にまみれたバズワードともいえるだろう。

しかも、お麩とその関連商品をあわせて日本の市場は150億円ていどだ。これが倍になったとしても大ブームというには、まだまだ小さなインパクトといえるかもしれない。古来の食品が、一周して先端の食品になるのは面白い。とはいえ、ホンモノのトレンドとなるか。現在は一部のブームが、国民を巻き込んだブームとなるか。これからの動向に注目したい。

コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家

テレビ・ラジオコメンテーター(レギュラーは日テレ「スッキリ!!」等)。大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務、原価企画に従事。その後、コンサルタントとしてサプライチェーン革新や小売業改革などに携わる。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、サプライチェーン学講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)、『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)、『モチベーションで仕事はできない』(ベスト新書)など著書27作

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