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先発三本柱の1人が離脱し、ブランク3年の39歳にカムバックの道は開けたのか。163勝&2560奪三振

宇根夏樹ベースボール・ライター
コール・ハメルズ(サンディエゴ・パドレス)Feb 23, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 サンディエゴ・パドレスの先発三本柱は、他のチームと比べても見劣りしない。昨年、ダルビッシュ有ジョー・マスグローブは、2人とも30試合の先発マウンドに上がり、防御率3.10と2.93を記録した。ブレイク・スネルは、24先発で防御率3.38だ。タンパベイ・レイズ時代の2018年には、サイ・ヤング賞を受賞している。

 だが、マスグローブは、開幕に間に合いそうにない。パドレスの発表によると、2月27日にウェイト・ルームでトレーニング中、自分の足元にケトルベルを落としてしまい、左足の親指を骨折したという。MLB.comのAJ・キャッサベルは、投球再開まで「少なくとも数週間」とボブ・メルビン監督が語った、と報じている。

 一方、パドレスでは、コール・ハメルズがカムバックをめざしている。

 実績は申し分ない。フィラデルフィア・フィリーズが地区5連覇を成し遂げた2007~11年に、フィリーズで5シーズンとも規定投球回以上を投げたのは、ハメルズだけだ。2008年のポストシーズンでは、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズのMVPとワールドシリーズのMVPに選ばれた。また、15シーズンに挙げた163勝は今世紀の14位タイに位置し、2560奪三振は6番目に多い。

 ただ、最後の登板は、2020年9月16日だ。この年は1登板にとどまり、その後は、マイナーリーグでも投げていない。2021年の夏にロサンゼルス・ドジャースと契約を交わしたが、故障に見舞われ、登板することなく退団した。今年1月、ハメルズは、他2投手とともに公開練習を行い、先月半ばにパドレスとマイナーリーグ契約を交わした。ノン・ロースター・インバイティ(キャンプ招待選手)として、スプリング・トレーニングに参加している。

 マスグローブの出遅れに伴い、開幕ロースターには別の投手が加わる。もっとも、ハメルズがそうなる可能性は低そうだ。

 パドレスは、6人ローテーションでシーズンに臨む予定だった。三本柱以外の3人は、マイケル・ワカニック・マルティネスセス・ルーゴだ。このプランについては、ワカの入団直後に「パドレスがこの投手を加え「6人ローテーション」とする理由は、ダルビッシュ有にあり!?」で書いた。

 なので、ローテーションは、マスグローブを除く5人で組むことができる。マスグローブの代わりにロースター入りするのは、先発投手ではなく、リリーフ投手だろう。その場合、ハメルズは、開幕から試合で投げられる状態であったとしても、候補から外れる。あるいは、候補から外れなくても、他の投手より順位は低くなる。レギュラーシーズンの通算423登板のうち、ハメルズがリリーフ投手としてマウンドに上がったのは、2011年の1試合しかない。ポストシーズンに向けた、最後の調整登板だ。

 昇格のチャンスがハメルズに巡ってくるのは、シーズン途中の故障、もしくは不調による配置転換で、先発投手が4人以下になった場合か、ローテーションの谷間くらいではないだろうか。もちろん、その際も、ハメルズが昇格するとは限らない。

 カムバックのスタートラインには立ったが、実現までの道のりはまだ険しい。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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