両者わずか3安打ずつの戦い 内野ゴロで敗れる《8/29 阪神ファーム》
阪神タイガースの1軍が甲子園に戻ってきました。そしてドラフト2位ルーキーの小野泰己投手が待望のプロ初勝利!いや~よかったですねえ。3点という微妙なリードではあったけれど、今回は“いい予感”がした方も多かったんじゃないでしょうか。本当におめでとうございます!フレッシュオールスター明けに、小さな声でかみしめるように発した「勝ちたいです」という言葉が忘れられませんでした。これで一歩前進した小野投手。ここからまた駆けていってください。
一方、阪神のファームは今週、まずウエスタン・リーグ2位の中日戦(29日と30日がナゴヤ球場、31日はナゴヤドーム)、さらに首位の広島戦(9月1日と2日がマツダスタジアム、3日は豊平どんぐりスタジアム)と続きます。そんな中、今季初めてのナゴヤ球場へ来ました。まだまだ気合い十分な暑さですねえ。お客様は入場時に借りたカラフルなビニール傘を差し、休む間もなく団扇で仰ぎながらの観戦でした。
植田選手が昇格!原口選手は帰阪…
そのナゴヤ球場で、きょう30日は大きな動きが2つありました。まず植田海選手の姿がなかったこと。小野投手に代わって1軍昇格です!昨年の最後に初昇格した際は代走出場のみ。それ以来の1軍で、まずはウエスタン・リーグトップを走る25盗塁の足を見せてもらいましょう。
掛布監督も「彼の足は非常に大きな武器になる。ファームの25個より、重いスチールをしてくると思うよ。短い期間かもしれないけど、いい経験をしてほしい。走ってきてほしいね」とエールを送りました。代打で使われる可能性は大きいかと。「そう、チャンス、チャンス!そこから守れて、打席をもらえて」。監督もすごく嬉しそうです。
もう1つは、残念なニュース。原口文仁選手が試合開始前に球場を離れました。ティー打撃を終えてフリー打撃を始めたものの、何球か打ってバッティングケージを出たのです。掛布監督に何かを言い、監督がトレーナーに声をかけてベンチへ引き揚げています。掛布監督と山下トレーナーの話では「左わき腹の張り」だそうで、そのまま帰阪となりました。
まずチームドクターに診てもらい、その後は鳴尾浜でリハビリするとのこと。本人も初めての箇所らしく心配ですけど、できるだけ早い完治を祈ります。悔しいでしょうね。でも焦らずに。
リーグ一番で50敗到達です…
さて、きのう29日は連打どころか、なかなかヒットの出ない試合でした。阪神は2回に原口選手が放った左前打のみ。中日は4回にようやく初ヒットで、そのあと5回と6回に1安打ずつ。この6回に内野ゴロで1点を先取されます。ようやく9回、阪神に初の連打があったものの同点のチャンスを生かせず、結局は完封負け。これで他の4チームより早く50敗目を喫し、また最下位になっちゃいました。
なお首位の広島は今ちょうど公式戦がありません(きのうまで恒例のJABA広島大会に出場して優勝)。実は、きょう30日も阪神が負けてしまったため、広島を抜いて中日が首位に立ちました。ゲーム差なしで、勝率も8毛という差ですけど。何となく今週は、すべての鍵を阪神が握っているような気がします。
《ウエスタン公式戦》8月29日
中日-阪神 20回戦 (ナゴヤ)
阪神 000 000 000 = 0
中日 000 001 00X = 1
◆バッテリー
【阪神】竹安-福永-●守屋(2勝3敗)-山本-柳瀬 / 長坂-岡崎(8回裏)
【中日】阿知羅(5回1/3)-○金子(4勝2敗1S)(2/3回)-ロンドン(1/3回)-小川(2/3回)-浅尾(1回)-S福谷(2敗7S)(1回) / 杉山
◆本塁打、三塁打、二塁打 なし
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]右:江越 (3-0-0 / 2-1 / 1 / 0) .143
2]中:高山 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .326
3]指:キャン (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .296
4]左三:陽川 (4-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .267
5]一:原口 (4-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .467
6]三二:今成 (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .231
7]二遊:荒木 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .217
8]捕:長坂 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .177
〃打左:緒方 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .240
9]遊:植田 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .206
〃打:西田 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .214
〃捕:岡崎 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .150
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
竹安 3回 52球 (0-1-2 / 0-0 / 2.36) 144
福永 2回 27球 (2-3-0 / 0-0 / 3.27) 149
守屋 1回 23球 (1-0-2 / 1-1 / 5.51) 146
山本 1回 12球 (0-1-0 / 0-0 / 2.83) 138
柳瀬 1回 19球 (0-1-1 / 0-0 / 1.71) 145
《試合経過》
まず投手陣からです。先発の竹安は1回、先頭の友永に四球を与えるも長坂が盗塁阻止!2死後に近藤の打球を体に当てながら捕って送球。3人で片付けました。2回は三者凡退、3回も1四球があったものの他はすべて内野ゴロで打ち取り、予定の3イニングを無安打無失点で交代します。
ついで福永が登板。4回は先頭の三ツ俣に中前打されますが、近藤の遊ゴロ併殺打など3人で終了。5回も先頭の石垣に左前打を許し、続く阿部がバントした打球を自身で捕って二塁へ送るもセーフ(投犠打野選)。しかし古本がバントの構えで2球目を空振りした時、長坂が二塁へ送球。石垣は戻れず1死となり、古本と石岡は連続三振で、ここも無失点でした。
一方、打線は阿知羅の前に1回が3者三振(江越と高山は空振り、キャンベルは見逃し)。2回は1死から原口が左前打しますが、後続は相手の好守備にも阻まれて無得点。3回、4回はともに2三振ずつ奪われての三者凡退です。5回は今成が四球を選んだだけ、まだ二塁すら踏めていません。
ようやく6回、1死から江越がセカンドのエラーで出て盗塁を決めます。次の高山に7球を投げフルカウントとなったところで阿知羅にアクシデント発生。足がつったらしく降板、代わった金子に高山は二飛で2死となったものの、暴投で江越は三塁へ。キャンベルが四球を選び2死一、三塁として4番・陽川を迎えましたが…空振り三振。
チャンスを逃した阪神に対し、その裏の中日打線は先取点を挙げます。この回は守屋が登板。先頭の9番・杉本に左前打を許し、犠打で二塁へ。そのあと暴投や連続四球で1死満塁として、井領が一、二塁間へ放った打球に原口が飛びつくもボールはこぼれ、セカンドの荒木がカバー。自らベースを踏んでアウトとしたのですが、その間に杉山を三塁から還してしまいます。
7回は山本が三者凡退に切って取り、8回は柳瀬が先頭・杉山への四球と犠打で1死二塁となったものの後続を断って追加点は与えず。こちらの打線も7回は三者凡退で、8回は2死から四球を選んだ江越の盗塁失敗で無得点。それどころか、ここまで2回に原口が放った左前打の1安打のみに抑えられていました。
しかし9回、福谷に対して1死からキャンベルが遊ゴロ送球エラーで出ると、陽川は132キロの変化球を右前打して一、二塁。続く原口が初球の151キロの真っすぐを中前打!これで二塁からホームを狙ったキャンベルですが、センター近藤からの見事なダイレクト返球でタッチアウト…。最後は今成が投ゴロに倒れて試合終了です。
掛布監督いわく「THE原口」
試合後の話は原口文仁選手からご紹介します。2回に左前打、9回には陽川選手に続いて中前打。これは惜しくもタイムリーにならなかったものの、チーム3安打(両チーム合わせて6安打)のうち、2安打です。1本目はカウント2-2となって5球目にレフトフェンス際へ大ファウル。この次の直球(141キロ)を打ちました。昨年、ヒットの前によく見られたようなファウルで、本人も納得の様子です。
9回は1死一、二塁で福谷投手の初球(151キロ)をセンター前へ。「相手がいい真っすぐを投げていたので、それを狙って一振りで決めることができました。1軍クラスのピッチャーなので、それがよかったなと思います」。その前の3打席目、7回はロンドンの投手の151キロに詰まって遊ゴロという結果を踏まえ「しっかり修正して入れたのがよかった」と振り返りました。
その原口選手について掛布雅之監督は「ま、らしいやね。速い球に力負けせず積極的に打っていく。原口らしい。これぞ原口。THE原口だよね」とニッコリ。さらに「集中力ですよ。1軍でスタメンも代打も経験しているから、打席でのメリハリのつけ方がうまいんじゃないの?」と続けています。こういう話を書いていると、やはり今回の離脱は残念ですね。でもまだ1軍での出番はあるはず。回復を待っています。
なお、25日のオリックス戦(舞洲サブ)で2ランを含む3安打があったものの、そのあと3試合連続ノーヒットと元気のない高山俊選手のことを質問され「自分の中で悩んじゃってるねえ。もうちょっと吹っ切れると思ったんだけど。(スイングの際に)体が止まらない。ちょっと流れすぎだよね。右足の壁が、ゲームになると流れてしまう」と掛布監督。「(登録抹消から)10日が過ぎて、精神的なものも色々あるんでしょう」
“次のステージ”で投げるためには
変わって投手陣です。先発して3回ノーヒット、無失点だった竹安大知投手は、手応えはを聞かれ「いや…。カウントが悪かったり、それで球数が多くなったりして、決めに行くところで勝負できなかった」と浮かない表情でしたが、打ち取りはほとんどが内野ゴロで、ボール球も低めに外れてのものが多かったように思います。それは意識して?との問いに「そうですね」と答えました。
掛布監督は「最初のフォアボール、盗塁失敗がなければ(0点で終わったかどうか)わからないからねえ。カウント3-2にしたのが、5人くらいいたんじゃない?」と竹安投手の投球を振り返りました。「いいボールもあったんだけど、次のステージで投げるためには、もっともっと強いボールを、という気持ちを前面に出してほしい」と注文しています。
また久保康生投手コーチの竹安投手評は「ヒットを打たれないのは、彼の球種の豊富さ。特徴を持っているからでしょう。どれだけ精度を上げるか、ですね。最終的にカウント負けしているのは、自分の調子とケンカしているとも言えるし、いいボールを投げたい意識の表れと言える」というものでした。
福永投手と守屋投手
福永春吾投手は4回と5回の2イニングを投げ、走者を出しながらも要所を三振で締めています。よかった点を聞いたら「取りたいところで、狙って三振を取れたこと」と言い、次に向けての課題は「フィールディングにおいて、一歩目の早さを求めていきたい」と答えました。これは5回、野選となったバント処理を思い出してのことでしょう。
そして「あとは3球で1ボール2ストライクのカウントに、常に整えられるようにすること」という課題を自身に与える福永投手でした。
最後は守屋功輝投手のコメントです。「試行錯誤しているところで、タイミングが合わないとか、バッターでなく“対自分”になってしまっていたと思います。不安はないと言いたいけど、ゼロではない。いろいろやっていく中で、自分で“これ”というものを見つけ、それをやっていけば自信もついてくるだろうし」
そのあと守屋投手がつけ加えたのは「抜け出したいです」という言葉。苦しんで身につけたものは、いつまでも自分を支えてくれると聞いたことがあります。“抜け出した”先の守屋投手が楽しみです。