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現在の熱帯域は台風25号の兆候なし 過去には小数点のついた台風番号の台風があった

饒村曜気象予報士
台風になりそうもない熱帯域の雲(11月23日15時)

寒い勤労感謝の日

 令和4年(2022年)11月23日の勤労感謝の日は、日本の南岸と北陸を2つの低気圧が東進したため、北海道は概ね晴れましたが、九州~東北にかけての広い範囲で雨が降り、雷を伴って激しく降りました(図1)。

図1 地上天気図(11月23日15時)
図1 地上天気図(11月23日15時)

 また、南西諸島も雨が降りやすく、雷を伴って激しく降りました。

 気温は平年並みか平年より低く、特に関東地方では12月下旬の寒さの勤労感謝の日となりました。

 東京の最高気温15.3度は、未明に観測されたもので、日中の気温は11度位です。

 昼間の方が夜より寒く、1日で約10度も気温が下がったのです(図2)。

図2 東京の気温変化(11月22~25日)
図2 東京の気温変化(11月22~25日)

 しかし、休み明けの24日は、大陸からの高気圧に覆われ、北陸や東北で朝まで雨の残る所があるものの、関東から西の各地は天気が回復して、晴れて気温が平年より高くなる所が多くなる見込みです。

 東京では、1日で約10度も気温が上昇します。

 前日との気温差が大きいので、服装選びには注意が必要です。

 このように、日本は秋と初冬の間を行ったり来たりしています。

台風の発生

 熱帯域は11月といってもまだ海面水温が高く、台風が発生するとされる海面水温27度以上の暖かさがありますので、条件が整えば、台風が発生する可能性があります。

 熱帯域は11月といっても夏が残っています。

 しかし、現在の熱帯域は積乱雲が少なく、台風はおろか、台風の卵である熱帯低気圧の雲の塊もありません。 

 気象庁では毎年1月1日以後、最も早く発生した台風を1号とし、以後台風の発生順に番号をつけていますので、令和4年(2022年)は、これまで台風が24個発生しているため、次に発生する台風は、今年25番目ということで、台風25号となります(表)。

表 令和4年(2022年)の台風発生数・接近数・上陸数(接近数は一つの台風で月をまたぐ場合があり、月の値の合計は年の値より大きくなる)
表 令和4年(2022年)の台風発生数・接近数・上陸数(接近数は一つの台風で月をまたぐ場合があり、月の値の合計は年の値より大きくなる)

 なお、一度発生した台風が衰えて「熱帯低気圧」になった後で再び発達して台風になった場合は同じ番号をつけます。

 台風の番号は整数しかないように思えますが、過去には、台風40.1号と台風40.2号という小数点のついた台風番号を持つ台風があります。

小数点の台風番号

 台風番号は、台風の発生順につけられますが、台風番号順に発生しているとは限りません。

 一見矛盾しているようですが、台風統計が行われるようになった昭和26年(1951年)以降でも、次のような実例があり、珍しいことではありません。

昭和27年の7号(8月5日9時)、8号(8月5日3時)

昭和29年の11号(9月2日9時発生)、12号(9月5日9時発生)、13号(9月1日9時発生)

昭和38年の11号(8月25日21時発生)、12号(8月24日15時発生)

昭和40年の17号(8月15日15時発生)、18号(8月14日15時発生)

昭和40年の21号(9月1日15時発生)、22号(9月1日3時発生)

昭和44年の12号(9月30日9時発生)、13号(9月30日3時発生)

平成18年の7号(8月6日3時)、8号(8月5日21時)

平成21年の7号(8月3日21時)、8号(8月3日9時)

平成28年の10号(8月21日21時)、11号(8月20日9時)

令和4年の10号(8月5日15時)、11号(8月4日9時)

 どうして、こういうことが起きるかというと、気象庁では,常に新しく入手した資料などをもとに再解析を行い、最善なものを記録しているためです。

 現業的な作業過程で、12号、13号の順で命名した後、遅れて入った資料を加えた解析の結果、13号の方が先に発生したことがわかっても、ひとたび発表した台風番号は混乱を防ぐ意味で変更しないという大原則があるからです。

 また、再解析の結果、台風として扱わなくなった場合には、その台風番号は欠番となります。

 台風統計が行われるようになった昭和26年(1951年)以降では、昭和29年(1954年)の2号と10号の2例があります(図3)。

図3 気象庁ホームページにある昭和29年(1954年)の台風10号
図3 気象庁ホームページにある昭和29年(1954年)の台風10号

 反対に、再解析の結果、新たに台風の発生が認められた時は、小数点のついた台風番号をつけることになっています。

 昭和26年(1951年)以降、小数点のついた台風番号はありませんが、過去には、昭和25年(1950年)に台風41号と台風42号の間に、新たに2つの台風が発生していることが明らかになったため、41.1号台風と41.2号台風と名付けられています。

 つまり、この年は,台風41号の次が台風41.1号で、台風41.2号、台風42号と続いています(図4)。

図4 小数点のついた台風番号の台風の経路(昭和25年(1950年)の台風40.1号と台風40.2号)
図4 小数点のついた台風番号の台風の経路(昭和25年(1950年)の台風40.1号と台風40.2号)

 いずれにしても、

一度発表した台風番号は混乱を防ぐために変更しないこと、

気象の解析は台風も含めて、常に見直し、できる限り最善のものとすること、

という形で残されていることによって、発生順序と矛盾する台風番号となったり、欠番台風や小数点つき台風を生む原因となっています。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図3、表の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図4の出典:饒村曜(昭和61年(1986年))、台風物語、日本気象協会。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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