総合格闘技界で注目の宇佐美兄弟が示す「兄弟の意味」
「RIZIN」など総合格闘技で注目を集めているのが宇佐美正パトリックさん(22)、宇佐美秀メイソンさん(21)の兄弟です。ともに幼少期から空手、ボクシングに打ち込み、卓越した格闘センスと華のあるルックスで次代のスターと期待されています。同じジムで日々切磋琢磨していますが、リングという非日常の極みでこそ痛感する「兄弟の意味」とは。
ボクシングから総合格闘技へ
パトリック:初めて格闘技に触れたのは3歳、4歳の頃でした。格闘技が好きな父親に「やってみないか」と言われて行ったのが近所の空手道場でした。
メイソン:年齢的にちょうど「仮面ライダー」とかを見だした頃で、漠然と強さへのあこがれも出てきた時期で、興味本位、遊び感覚で父親についていった。最初はそんな感じのスタートでした。ノリみたいな感じで(笑)。
パトリック:ただ、やってみると向いていたのか大会で結果を残すこともできて、そこから僕は中学1年から、弟は小学6年からボクシングをやることになりました。
大阪の興国高校、東農大と僕はボクシングを続けて、東京五輪の選考会を迎えました。本来のビジョンとしてはオリンピックで結果を残してプロになり、世界で勝負をするということだったんですけど、その道が断たれてしまった。
ちょうどその頃に「EXILE」の皆さんがいる事務所「LDH」が新たに総合格闘技の分野にも進出するという流れになり、そのオーディションがあったんです。これも一つの流れかと思って受けたら合格しまして、そこから総合格闘技の世界に入って今に至るという感じです。
メイソン:僕は中学を出てからカナダに留学しまして。ただ、現地では勉強というよりも、いろいろなヤンチャというか、ヤンチャという言葉では足りないくらいのこともたくさんありました(笑)。
そんな数年を過ごして、日本に戻ってきたらお兄ちゃんが総合格闘技のリングに上がってたんです。しかも、そこでKOで勝っていた。純粋に、その姿がカッコいいなと思ったんです。そこから僕も総合格闘技の世界に入りました。
リングで感じる兄弟の意味
パトリック:小さい頃から毎日のようにケンカもしてましたけど(笑)、パンチを避けるセンスや的確に打ち込むセンスは僕なんかよりもずっと上だったんです。
なので、正直な話、ボクシングを続けてくれたらなという思いもあったんですけど、今は兄弟で同じジムでトレーニングをして、リングに上がる生活をする中で、一緒にやっている意味を強く感じるようにもなりました。
メイソン:日々の練習でも「お兄ちゃんもやってるんやから、自分もやらないといけない。そして、お兄ちゃんができてるんやったら自分もできるはず」と自然と思える。この感覚はすごく大きなものだと感じています。
パトリック:試合の時でも、セコンドについてくれた時の安心感が全然違います。試合中でも、しっかりと声が通るんです。
特殊な空間で、特殊な感情になっている時でも、自然と指示が入ってくる。これが兄弟というものなのか。改めて、家族の意味をリングという非日常で感じました。
パトリック:せっかく兄弟一緒にやっているので、これは兄弟で約束しているんですけど、いつか世界一になって、父親にベルトを巻かせてあげる。それが目標です。今は総合格闘技の世界にいるので、総合格闘技の最高峰と言われるアメリカのUFCのベルトを取れたらと思っています。そのためにも、これからも兄弟で切磋琢磨しないといけないなと。
え?今は兄弟でケンカをするかですか?さすがにもう今はしないですね。
メイソン:今やったら、いろいろ大変でしょうしね(笑)。
パトリック:弟がカナダから帰ってきた時にケンカになったんですけど、その時には僕がフロントチョークで一応押さえ込んだんです。ただ、その後、弟がカナダで覚えてきたとんでもなく物騒な返しをしてきて(笑)。ま、もう兄弟でケンカはしない方がいいと心底思いましたね(笑)。
全ての力はリングで出して、父親にベルトを巻く。そこを目指して頑張りたいと思っています。
(撮影・中西正男)
■宇佐美正パトリック(うさみ・しょう・ぱとりっく)
2000年5月8日生まれ。大阪府出身。身長180センチ。Battle-Box所属。父は日本人、母はカナダ人。幼少期から空手を始め、多くの大会で優勝。その後、ボクシングに傾倒し、大阪・興國高校ボクシング部時代は高校6冠を達成する。東京農業大学へ進学後もボクシングを続けるが、東京五輪出場がかなわず総合格闘技に転向。
■宇佐美秀メイソン(うさみ・ひで・めいそん)
2001年5月20日生まれ。大阪府出身。身長182センチ。Battle-Box所属。宇佐美正パトリックは実兄。兄同様、幼少期から格闘技にのめりこみ、カナダでの生活を経て20歳から総合格闘技の世界へ。