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結婚と出産を強く求められ、生きづらさを抱える独身女性を演じて。「社会の見方がもう少し変わったら」

水上賢治映画ライター
「Eggs 選ばれたい私たち」

 子どものいない夫婦に卵子を提供するエッグドナー(卵子提供者)に志願するアラサー女性を描く映画「Eggs 選ばれたい私たち」。

 現在の日本社会においての、ある種、結婚と出産を強く求められる女性の生きづらさに言及する本作について、主演のひとりである川合空に聞くインタビューの後編へ。前回のインタビューに続き、演じた葵の話から。

純子と葵が直面する生きづらさや悩みは、

女性ならばどこかで遭遇することで特別なことではない

 まずは葵という役を演じ切って、どんなことを考えただろうか?

「今までの自分を振り返る時間になった気がします。

 レズビアンである葵を演じることで、自分がLGBTQの方々に対して今までどのように接してきたのか振り返り、こういう態度をとっていてもしかしたら相手を傷つけてしまっていたかもしれないと考えるきっかけになりました

 葵の目線で言うと、差別を気にするなだなんて私は思いませんが、葵のように『どうせ誰にも認めてもらえない』というように考えすぎることで、自分で自分を苦しめてしまう。『自分で自分を決め付けない』。そう考えて生きていくことで少し人生が生きやすくなるのではないかなと思います。

 この作品で純子と葵が直面する生きづらさや悩みは、女性ならばどこかで遭遇することで特別なことではない

 なので鑑賞する皆さんも、自分の身に置き換えて考えられることができるのではないかと思います。男性の方々も現代女性の悩みや考えていることを知る良い体験になると思います

 純子には純子の選択、葵には葵の選択があり、みなさんの立場だったらどうするのか?考えるきっかけになったらうれしいです。

 その上で、自分が出したひとつの答え。『自分ならばこうしたい』と思った意見を大切にしてもらえたらと思います」

社会の見方がもう少し変わったらなと感じることが多々あります

 川崎監督は、本作で、男性上位の社会での女性の生きづらさに明確に声を上げている。川合自身は社会に対して憤りを感じたり、不満を覚えたりしたことはあるだろうか?

「目上の男性からのセクハラやパワハラ、女性だから舐められて、悔しい思いをしたことがあります。

 そして、社会の見方がもう少し変わったらなと感じることも多々あります。

 たとえば、私は今29歳でこの春に大学を修了したんですけど、『まだ学生やっていたの』という目は確かに周囲にあって(笑)。

 ストレートで大学に入って卒業して、新卒で就職するのが当たり前で、少しでもそこから外れると落伍者と言いますか、ちょっとうまくいってない人のような目で見られてしまう

 人それぞれ目指すところは違って、進み方も早い人もいれば遅い人もいる。

 社会にはそれに対しての寛容さがほしいところはありますね」

「Eggs 選ばれたい私たち」 川合空  筆者撮影
「Eggs 選ばれたい私たち」 川合空  筆者撮影

なかなか一歩を踏み出せない人たちの背中を押すような表現者になりたい

 本作では葵を演じ切った川合だが、俳優のみならずアーティストとしても活躍している。

「それほど多くのキャリアを積み上げてきているわけではないので、言うのはおこがましいんですけど、私は、やりたいことがあるけどなかなか一歩を踏み出せない、周りの目が気になってしまってやりたいことをできない、そんな人たちの背中を押すような勇気を与えていけるような表現者になりたいと思っています。

 なので、自分自身も女優業にくくらないで、美術・アートの世界、デザインの世界、いろいろなことにチャレンジしたいと思っています。

 自分でも全部中途半端で『何がやりたいのか分からない』と悩んだ時期があったんですけど、あるとき、どれも自分の中ではすごく大切で、やりたいことであることに気づいた。

 それでコツコツと自分なりに続けていたら、いろいろなことが積み重なって、今回のように劇場公開できる映画に携わることもできた。いま、美術でも自分のやりたいことがちょっとずつ形になりつつある。

 だから、自分を縛りすぎないで、目の前にあるやりたいことをやっていきたいと思っています」

「Eggs 選ばれたい私たち」より
「Eggs 選ばれたい私たち」より

「Eggs 選ばれたい私たち」

監督・脚本:川崎僚

出演:寺坂光恵 ​川合空 三坂知絵子ほか

アップリンク渋谷にて公開中

詳しくは、こちら

場面写真はすべて(C)「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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