アポロ11号月面着陸から50年 記念展で「次に月に行く人は?」との問いに・・・
1969年7月16日、アメリカの宇宙船アポロ11号が打ち上げられ、4日後の20日、人類で初めて2人の宇宙飛行士(船長のニール・アームストロング氏と、その十数分後にパイロットのバズ・オルドリン氏)が、月面に降り立った。
この歴史的な出来事から50周年を記念しアメリカ各地では、記念イベントが催されている。
ニューヨークでも7月20日、アメリカ自然史博物館で特別イベントSpaceFestが行われた。創立150周年を迎えた同館は、月で収集された石の展示やプラネタリムでの特別プログラムを提供している。
このたび改装オープンした、同館1階の「アーサー・ロスの隕石ホール」(Arthur Ross Hall of Meteorites)は、太陽系の起源についてのコーナー、惑星の誕生プロセスのコーナー、カンザスや南アフリカ、グリーンランドなど世界各地に飛来した隕石を紹介するコーナーと、大きく3つのセクションで、今も解明されない壮大な宇宙を紹介している。
特に見ものは、アポロがこれまでの間に月面探索中に収集した月の石や、130種類以上もの代表的な隕石の展示品だ。特に隕石は、34トンと世界最大の鉄隕石の一つ、ケープヨーク隕石(別名Ahnighito、アーニギトゥ)がホールの真ん中に鎮座していて圧巻だ。
共に60代のカップルは、「節目の年に、あの大きなエポックを昨日のことのように思い出しました」と語った。当時16歳だった夫はドラッグストアで夏の短期アルバイトをしていたときに月面着陸のニュースを聞いて同僚らと歓喜し、11歳だった妻は興奮しながらテレビを観たという。
「アポロがこれまで採取した石は月の研究にとても役立っている。宇宙研究の歴史と、これからの未来のことがここで学べます」と紹介するのは、同館の隕石専門の地質学者、およびキュレーターのデントン・イベル(Denton Ebel)さん。
アメリカ自然史博物館で収集している月の隕石の半数は、アフリカで採集されたものだそう。イベルさんは、「日米両国は、1970年代半ば以降何十年もの間、アフリカに10人ほどの専門家をそれぞれ派遣しながら、共に力を合わせて隕石を収集し続けている」と、日米の固い協力体制を語った。
参加者からの「いつの日か月で生活できるようになりますか?」との質問に対して、「地下に住む必要がありますが、誰も暗い地下には住みたくないですよね。私もセントラルパークでサンサンと太陽を浴びながら生活したいですから。まぁ、月に住めるようになるには長い年月がかかるでしょう」というのがイベルさんの見解だった。
場所を変え、館内のプラネタリウムでのパネルディスカッションでは、「次に月に行く人は誰だと思うか?」という質問も飛び出した。今年のはじめに中国が世界で初めて、月の裏側に無人偵察機を着陸させたことなどを受け、専門家の意見は「アメリカはカナダやオーストラリアと協力もしているし、特に日本とのコラボレーションは確固たるものだが、50%の確率で中国人かもしれない」ということだった。
イーロン・マスクやブルーオリジンの名は話題に上ったが、昨年大規模な記者会見を開いて、2023年に民間人として初の月旅行をすると世界中に宣言したZOZOの前澤友作さんや、彼の宇宙とアートのプロジェクト「Dear Moon」の話題がまったく出なかったのは拍子抜けだった。(専門家の視点が、あくまでも「開発側」にフォーカスしているからかもしれない)
どちらにせよ感じたのは、人類の月への探求は果てしないということ。誰もが「次回はいつごろ、誰が、どのように?」と興味津々だ。しばらくはこの宇宙ブームが全米で続いていきそうだ。
(Text and some photos by Kasumi Abe) 無断転載禁止