「突然”折れる"若者たち」特集における若年無業者220万人は「求職型」を含む数字。
先日、8月3日のNHKニュースおはよう日本の特集は「当然"折れる"若者たち」と題し、若年無業者について取り上げた。私たち、認定NPO法人育て上げネットの取り組みや支援プログラムを通じて出会った若者も取材に協力してくれた。
元々は、立命館大学の西田亮介氏との共著「無業社会-働くことができない若者たちの未来(朝日新書)」をディレクターが読んで、番組企画を立てたものだ。
ここで使用された「若年無業者」という言葉がネットでも広がっているが、220万人の若年無業者が誰を指しているのかが錯綜しているようだ。特に、「ニート」と同義であることが目立つが、若年無業者をニートと捉えた場合、220万人という数字はあてはまらない。
「無業社会」のなかで活用した200万人(若者の16人にひとり)は、平成17年7月に内閣府がまとめた「青少年の就労支援に関する研究調査」における若年無業者の3類型を活用して算出したものである。
若年無業者には「求職型」「非求職型」「非希望型」があり、求職型とは「就職希望を表明し、かつ求職行動を起こしている若者」であり、一般的には「(完全)失業者」と認識されているのではないだろうか。いわゆる、就職活動をしている若者だ。その求職活動は、毎日ハローワークに通っているのか、自宅でネット検索をしてるのか、そもそもどのような行動を指して求職中であるとするのか個別に把握するのが難しい。
また、実際には就職活動をしている若者と、していない(できない)若者の間を区切ることが簡単ではない。
本書および番組での220万人は、求職活動をしている(完全)失業者で15歳から39歳の若者、つまり、求職型を含む若年無業者の数を積算したものである。
混乱しやすいのは、平成22年に同じく内閣府から発表された「若年無業者(15歳~39歳)数及び割合~就業構造基本調査(平成19年)の再集計~」では、以下のように定義し、「非求職型」および「非希望型」のみで集計していることではないだろうか。
厚生労働省のサイトでは、「ニート」を以下のように定義している。
こちらは年齢が34歳で区切られているため人数も異なっている。
ちなみに、共著者の西田氏は、以下の書籍から教育やトレーニングを受けていない未就業の15歳から34歳の潜在的な若年無業者483万人という数を紹介している。
「日本の若者と雇用-OECD若年者雇用レビュー:日本(明石書店)」
どの統計調査を活用し、何を定義としておいているかにより、その印象や数値は大きく変わっていく。私のように統計調査を見ることが不得手だと、数値や定義を確認するだけでも苦労する。
これまでも「ニート」「ひきこもり」「触法青年」など、さまざまな言葉で若者が区切られ、語られ、支援の呼びかけが行われてきた。それはそれで時代の問題や一定の役割も担っていた。一方、個別呼称によるイメージが先行することで、定義とは無関係にその像が固められてきたことも事実だろう。
「ひきこもり状態の若者は自宅でずっとネットをしている」「ニートは働く気がない」など、定義には含まれておらず、まったくいないとは言えないが、当然全員(圧倒的多数)がそうであるとも言えないはずだ。それは一定のバイアスがかかってはいるが、支援現場では共有されていることでもある。
若年無業者という言葉が今後どのようになるのかはわからないが、ひとつだけ期待するのは、どのような状況や状態であるのかがわからなくとも、200万人を越える若者が無業という状態で存在していることを、私たちがどう捉えていくのか広く議論がなされることである。
(参考)