中国が強調する新型コロナ“海外脅威論”。国外から北京入りなら全員隔離
北京ではきょう16日午前0時から、国外から来る全ての人に対し、指定施設での14日間の隔離措置を採った。日本は感染が深刻な国とされ、すでに隔離の対象とされていたものの、これまでは自宅での隔離が許されてきた。今後は、入国後2週間は、自宅があっても条件を満たさなければ、原則帰宅は許されない。
外国から来た人は指定施設で隔離
北京市政府は、昨日15日の記者会見で上記の措置を発表した。即ち、国外から北京に来た全ての人を対象に、14日間の隔離観察措置を採る。
日本や韓国など「感染が深刻な国」から来た人は、先週10日からすでに14日間の隔離観察の対象とされてきた。今回、その対象を全ての外国に広げた。
隔離場所は中国側が指定した施設が原則。これまでの日本から来た人の例で言えば、北京市内に自宅がある場合は、検温の結果報告などは義務付けられるものの、自宅での隔離が許されていた。今後は原則的にはそれが不可能になる。しかし、反発を考慮したのか、北京市政府はきょう午後開いた記者会見で補足を加えた。
北京市内に単独で家があり、同居人がいない場合は、自宅での隔離観察が申請できるとした。その他、70歳以上の高齢者、妊婦や未成年者など、集中隔離に適さないとされる人たちは、自宅での隔離観察が可能になる。
“指定施設”の費用は自己負担
北京首都国際空港に到着した全ての人は、税関で体温測定など防疫検査を経た後に、入国手続きをする。異常が認められた場合は、そのまま医療施設に運ばれ更に検査を受ける。異常がない人は、空港から数キロ離れたコンベンション施設にバスで移送される。これまで日本から来た人が経験した手続きに従えば、そこに設置された臨時の「受付所」で、自宅などの目的地が所在する区ごとに分かれ、便名や氏名を登録する。
隔離観察の場所は各区が指定したホテルになる。コンベンション施設で手続きを終えた人は、まとめてそのホテルまでバスで移送される。隔離期間中のホテルの宿泊費用は、自己負担である。
感染の脅威は海外から?
北京市政府は、この措置を採るにあたり、「北京の防疫にとって、すでに海外からの流入が主な危険になっている」と説明している。
湖北省を除けば、中国で新たに感染が確認された患者は、12日は3人、13日は7人、14日は16人、15日は12人だったが、4日連続でいずれも海外からやってきた人だった。中国メディアの報道は「海外での感染拡大が中国を脅かしている」というトーンに染まった。
強調される“海外脅威論”
中国共産党の機関紙「人民日報」系の「環球時報」紙は、武漢大学ウイルス研究所の教授の話として、「国外の異なる地区のウイルスの遺伝子型は異なり、毒性も異なる。異なる国から帰国した人は、検疫や治療を複雑にし、新たなアウトブレイクの危険をもたらしうる」との見解を紹介した。言わば“海外脅威論”を補足する形になっている。
こうした“海外脅威論”に対応する水際作戦の強化と並行して、中国が進めているように見えるのが「ウイルスの発生源が中国ではないかもしれない」という印象づくりだ。
遡れば、2月27日、中国政府の衛生部門の専門家グループを率いる鍾南山氏が、広東省・広州の大学で行なったブリーフィングでの発言だ。
「感染はまず中国で発生したが、ウイルス発生源は中国とは限らない」
これまで中国の内部のみ注目していたが、国外でも感染が起きている、という文脈の中で出た発言だ。具体的根拠は示していない。
「疫病を持ち込んだのはアメリカ軍かも」と現役報道官が
最近では、中国外務省の現役報道官、趙立堅氏が3月12日に英語でツイートした内容。
「武漢に疫病を持ち込んだのはアメリカ軍かもしれない」
アメリカの疾病対策センターの高官が、同国のインフルエンザで死亡した患者の中に、新型コロナウイルスの感染者がいた事実を明らかにしたことに対するツイートだ。
以前、別の報道官は「新型コロナウイルスは中国の生物化学兵器の可能性」との説に対し、「無知なでたらめ」と否定した上で、「国際社会が共に陰謀論などの“政治ウイルス”に反対し制止することを希望する」と述べていたにもかかわらず、だ。
感染拡大の激震地が中国からヨーロッパなど別の国や地域へ移るにつれ、中国は、海外からの感染流入から国を守ったという成果をもって、そもそも感染を拡大させた責任と原因の所在を曖昧にする準備を進めているようだ。