中国の台湾封鎖に対し台湾は3か月分の米を備蓄
中国が台湾封鎖を実行した場合に備え、台湾の農業部は「少なくとも3か月分の米を分散して備蓄」して中国による兵糧攻めに対抗する方針を示した。中国が軍事演習を実施し台湾への圧力をかける中で、台湾側も守りに余念がない。
台湾を締め上げる中国の「アナコンダ戦略」
台湾では本日10月23日、中国による「グレーゾーン戦術」と「アナコンダ戦略」へ対応に特化した立法院(国会に相当)の外交及び国防委員会が開かれ、関係部門が報告を行った。
「グレーゾーン戦術」とは、言わば戦争状態にならないまでも平時の延長線上で現状変更を図るもの。一方、「アナコンダ戦略」とはヘビがしめつけるように、物流などを止め相手を締め上げるもの。
同委員会への報告で、農業部は、米については、「少なくとも3か月分の米の消費量」を「全土の17の県と市、161の郷と鎮に分散して蓄え、攻撃リスクを分散する」との方針を示した。
サツマイモや大豆を増産
また有事において備蓄した食料を放出する以外の対応として、サツマイモや大豆、耕作期間が短く済む野菜などを優先的に作付けすることや、動物性の蛋白源の安定供給のためには、飼料効率の悪い家畜を減らして、雑食性の水産資源の養殖を拡大することなどにも言及した。
また同委員会での法務部調査局の報告では、一昨年、当時アメリカの下院議長だったペロシ氏の台湾訪問以来、中国軍が「グレーゾーン戦術」及び「アナコンダ戦略」によって、度々、軍用機や海上警備当局である海警局の艦艇を、台湾との中間ラインを超えさせたり、台湾側が設定した制限水域に侵入させたりしていると指摘。中国側の意図について、「台湾との中間ライン、領海ライン、エネルギーのライフライン」を壊して、「封鎖エリア、飛行航行禁止エリア、常態的なパトロールエリア」を確立し台湾の封鎖を図ろうとしていると分析した。
フェイクニュースによる認知戦も
また、法務部調査局は、中国は軍事演習による圧力とともに、フェイクニュースを流して認知戦を仕掛けていると指摘した。その狙いについては、台湾市民に、政府や軍に対する不信感を抱かせ、台湾内部から中国の武力の脅威に対抗できないのではないかという自信を失わせることだと分析した。
中国は今年5月に続き、今月14日にも台湾を取り囲むようなエリアで大規模な軍事演習を実施した。さらに昨日22日は台湾本島から約120キロの距離で実弾演習を行った。また台湾国防部によれば、同日夜に中国の空母「遼寧」の艦隊が台湾海峡を通過、同日午前6時から24時間の間に中国軍機延べ11機が中間ラインを超えて台湾側に侵入した。
中国が圧力を強めるにつれ、台湾ではより現実的な対応策が議論されるようになっている。その事実に空恐ろしさを感じると同時に、今ある平和の均衡状態を平然と崩そうとする行為を忌まずにはいられない。