日本政府はなぜ「タバコ産業からの干渉や影響」を排除できないのか
政府のタバコ規制政策に対するタバコ産業の干渉と影響を評価する世界タバコ産業干渉指数(Global Tobacco Industry Interference Index、GTII)で2023年のランキング結果が発表された。日本の順位は世界90カ国中88位だった。
世界タバコ産業干渉指数とは
世界各国の政策などを対象にしたランキング評価には多種多様なものがあるが、世界の中で日本はどれくらいの位置にいるのだろうか。国内総生産や経常収支で日本は世界3位だが、IMD(International Institute for Management Development、国際経営開発研究所)の世界競争力年鑑(World Competitiveness Yearbook)では64カ国と地域中35位(2023年)と中位だ。
一方、ドイツの環境開発団体Germanwatch eVによるCCPI(Climate Change Performance Index、気候変動パフォーマンス指数)で日本は63カ国中50位(2023年)、世界経済フォーラム(WEF)によるジェンダーギャップ指数で146カ国中125位(2023年)、NGO国境なき記者団(RSF)による世界報道の自由度ランキングで180カ国中68位(2023年)などとなっている。
これらは決して誇れる順位ではないが、こうした世界ランキングにタバコ対策についてのものもある。世界タバコ産業干渉指数(Global Tobacco Industry Interference Index、GTII)もその一つだ。
日本も加盟している国際的な条約「WHOたばこ規制枠組み条約(FCTC)」には、各国のタバコ規制政策をタバコ産業からの干渉圧力から保護するための条項(第5条3項)がある。
世界タバコ産業干渉指数(GTII)は、FCTC事務局から第5条3項の実行ハブとして委託されたGlobal Center for Good Governance in Tobacco Control(GGTC)という機関による調査報告書だ。この干渉指数のポイントが多いほど、政府のタバコ規制政策がタバコ産業から影響を受けていることになる。
2023年の世界タバコ産業干渉指数がこのほど発表され、日本は84ポイントで世界90カ国中88位だった(79位はスイス、80位はドミニカ共和国)。また、日本はこのランキングでずっと最下位か最下位に近い水準を続けてきた(2019年は33カ国中33位、2020年は57カ国中57位、2021年は80カ国中78位)。
タバコ産業から強い影響を受ける日本政府
各国政府がタバコ規制をする場合、タバコ産業は規制を弱体化させることを目的に活動を強めるのが常だ。政策決定プロセスに介入しようとしたり、政策や立法の責任者や決定者に政治献金や寄付をしたり、ロビイングで圧力をかけたりと、タバコ産業はあの手この手で様々な干渉と妨害をする。
FCTC加盟国の日本政府には、タバコ産業からの圧力や容喙からタバコ規制政策を保護する義務がある。FCTCはそのため、加盟国政府の役割として、タバコ産業とのつながりを必要最小限に抑え、透明性を保たなければならないとし、タバコ産業からの寄付を禁止し、公衆衛生政策をタバコ産業の干渉から保護するための規則を制定しなければならないとしている。
ところが、日本政府はタバコ会社(日本たばこ産業、JTI)の株式の33.35%を保有し、名実ともに筆頭株主となっている。これは完全にFCTC違反、国際条約違反であり、今回の世界タバコ産業干渉指数の報告書でも厳しく指摘されている。
また、日本と国交のある各国には外務省が管轄する大使館があるが、GTIIの報告書では少なくとも4カ国(エチオピア、バングラデシュ、タンザニア、カンボジア)の大使館がJTIから支援を受けていると批判している。
今回の世界タバコ産業干渉指数のランキングは、日本政府がタバコ産業からかなり強い影響を受け続けていることを示している。そして、大使館での関係などのように、JTIとタバコ産業の影響が国際的な範囲にも及んでいることをあらわしている。