「加熱式タバコ」を吸っても「メタボ」のリスクが上がる

メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満、以下、メタボ)は、生活習慣病のトリガーになる危険性がある。喫煙とメタボの関係は以前から知られてきたが、最新の研究によれば加熱式タバコを吸ってもメタボになるリスクが上がることがわかった。
メタボは生活習慣病のトリガーになる
メタボは、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常などの生活習慣病のリスクを上げる。そのため、メタボの段階で生活習慣病を予防できれば、特に狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患による突然死を防ぐことも期待できる。
睡眠不足はメタボのリスクを上げるが、喫煙も以前からメタボの重要なリスクファクターとして知られている。
喫煙は、インスリンの抵抗性への有害な影響といった代謝異常、血管内の血栓の形成促進などの血管内皮機能障害、血中脂質値の異常などを引き起こし、それらが相互に関与し合うことによってメタボになりやすくなるようだ(※1)。
では、加熱式タバコではどうだろうか。加熱式タバコを吸ってもメタボになるリスクが高くなるのだろうか。
韓国や米国の研究グループによる集団(コホート)調査研究によれば、加熱式タバコも従来の紙巻きタバコと同様、代謝異常や血管内皮機能障害などを引き起こし、それによってメタボになるリスクを上げることがわかった(※2)。
この研究は、2019年から2020年にかけて韓国でメタボを発症していない18万3870人(女性40.2%)を対象に、喫煙状況と研究期間中(最大24カ月)のメタボ発症の関連を調べたものだ。
その結果、加熱式タバコの喫煙者は非喫煙者に比べ、メタボの発症リスクが68%上がり、喫煙本数が増えるとリスクも上がり、喫煙期間が3年以上になるとそのリスクが2倍に増えた。そして、加熱式タバコの喫煙者のメタボ発症リスクは、紙巻きタバコの喫煙者のそれよりも大きなものだったという。
加熱式タバコにもリスクが
同研究グループは、加熱式タバコに含まれるニコチンがメタボ発症リスクを上げているのではないかと考えている。
ニコチンはインスリンの抵抗性を高め、脂肪分解などの代謝機能へ悪影響をおよぼすからだ。また、加熱式タバコの有害物質が体内の炎症を引き起こすことで、メタボ発症リスクがさらに上がる。
韓国では日本と同様、加熱式タバコの喫煙者が増えている。喫煙はメタボ発症リスクを上げるが、加熱式タバコも例外ではない。紹介した研究では、非喫煙者と比べ、加熱式タバコの喫煙者のメタボ発症リスクを格段に上げることがわかった。
繰り返すが、メタボは心血管疾患をはじめ、様々な生活習慣病のトリガーになる。そのリスクを下げるために喫煙者ができることは、今すぐに禁煙することだ。
※1-1:Jingya Wang, et al., "Association between life-course cigarette smoking and metabolic syndrome: a discovery-replication strategy" Diabetology & Metabolic Syndrome, Vol.14, article number11, 15, January, 2022
※1-2:Sehoon Park, et al., "Causal effects from tobacco smoking initiation on obesity-related traits: a Mendelian randomization study" International Journal of Obesity, Vol.47, 1232-1238, 26, August, 2023
※2:Yongho Jee, et al., "The effect of heated tobacco products on metabolic syndrome: A cohort study" Tobacco Induced Diseases, Vol.22, doi.org/10.18332/tid/194490, December, 2024