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藤井聡太王位、防衛5連覇&永世王位資格獲得か? 渡辺明九段、初の王位獲得か? 夏の王位戦七番勝負開幕

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月6日9時。愛知県名古屋市・徳川園において、伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負第1局▲藤井聡太王位(21歳)-△渡辺明九段(40歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 本局の記録係を務めるのは上野裕寿四段(21歳)。昨年、新人王戦で優勝するなど、将来を嘱望される新鋭の一人です。

 対局開始に先立つ振り駒は上野四段が務めました。その結果、表の「歩」が2枚、裏の「と」が1枚、重なって無効が2枚。

上野「歩が2枚出ましたので、藤井王位の先手番でお願いします」

 本局の立会人を務めるのは、藤井猛九段。これまで多くのタイトル戦に登場し、王位戦では2012年、羽生善治王位(当時)に挑戦しました。このとき、挑戦者決定戦で対戦したのが、渡辺現九段でした。

 これまでに31期ものタイトルを獲得してきた渡辺明九段。近年、新たにタイトル戦に昇格した叡王をのぞけば、王位だけは不思議なことに縁がありませんでした。

 渡辺現九段は2007年と2012年には挑戦者決定戦に進んだものの、深浦康市現九段、藤井猛九段に敗れました。七番勝負登場は今回が初めてとなります。

 藤井聡太王位は2020年、18歳の若さで王位のタイトルを獲得。以来4連覇中です。

 今期防衛を果たすと「通算5期」という条件をクリアして、永世王位の資格を得ます。棋聖戦では「永世棋聖」の資格を得たばかり。早くも「永世二冠」となるのでしょうか。

 渡辺九段は2008年、24歳の若さで永世竜王の資格を獲得。2016年度(2017年)には永世棋王の資格も得ています。

 午前9時。藤井九段が対局開始の合図をします。

藤井猛「それでは定刻となりましたので、藤井王位の先手で対局を始めてください」

 両対局者は「お願いします」と一礼。夏の王位戦七番勝負が開幕しました。

 藤井王位はいつもの通り、茶碗を手にして、お茶を一服。初手は飛車先を突きました。対して渡辺挑戦者は一呼吸をおいたあと、2手目、角筋を開きます。

 進んで渡辺九段は左美濃の構え。定跡形を離れた相居飛車の戦いとなりました。

 藤井王位と渡辺九段の過去の対戦成績は藤井20勝、渡辺4勝です。

 タイトル戦での対戦は過去に5回で、いずれも藤井王位が制しています。

 過去のデータからも、下馬評は藤井王位有利でしょう。しかし、タイトル戦でこれまで敗退したことのなかった藤井王位も、ついに先日の叡王戦五番勝負で、伊藤匠七段(現叡王)にタイトルを明け渡し、八冠から七冠に後退しました。ここから渡辺九段が巻き返していくというドラマも見られるかもしれません。

 王位戦七番勝負は2日制で、持ち時間は各8時間。通例では勝負がつくのは、明日2日目の夕方から夜となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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