白と黒のシンデレラ!? アナ雪を経てディズニー・プリンセスはどう変貌しているのか
ここ数年、これまではアニメーションが主だった「おとぎ話」が、実写映画化される傾向が続いている。「不思議の国のアリス」に「赤ずきん」、「ジャックと豆の木」、「白雪姫」などに続いて、今年の4月には『シンデレラ』の実写版が公開。製作はもちろん、ディズニーだ。
「アナ雪」以前から求められてきた自立したヒロイン像
ディズニーが映画で描くプリンセスは、初の長編アニメーションの『白雪姫』以来、長〜い歴史を刻んできたが、プリンセス物語の常識をガラリと変えた最近の作品といえば『アナと雪の女王』だろう。「アナ雪」の斬新な点は、大きく2つ。ひとつは、プリンセスが姉妹=2人という点。そしてもうひとつは、真実のキスが、理想の相手=王子様との愛をもたらすわけではない、という現実的な側面だった。最終的に達成されるのは、アナとエルサ、姉妹の愛の再確認で、おとぎ話の定番である「王子様とヒロインのめでたし、めでたし」は巧みに回避された。そんな結末、もう時代遅れだよと宣言するかのように…。
アナとエルサの「自立したヒロイン像」が目新しいという意見もあったが、このあたりは、ディズニー・アニメーションの第2黄金期のきっかけを作った『リトル・マーメイド』や『美女と野獣』で、すでに強調されていた。その後の実写映画『魔法にかけられて』あたりでは「王子様との真実のキス」が否定されるというヒネリも発生し始めた。
ちなみにディズニー長編アニメーションにおける自立したヒロインは…
『ポカホンタス』(1995年)
『ムーラン』(1998年)
と続き、その後しばらく途切れることになる。
では、今回の実写版『シンデレラ』はどのように進化しているか? タイトルからして、おなじみの物語を大きく踏み外すことはできない。しかし要所に、予定調和を避けて進化させようとする、ディズニー・プリンセス映画のチャレンジが見受けられた。
新『シンデレラ』のチャレンジは「王子様」の革新!?
まず強く印象に残るのは、シンデレラ役、リリー・ジェームズの「眉」である。髪はブロンドに近いのに、眉だけはほぼ黒に近く、しかもかなり太い! 愛らしいマスクに、この太眉が凛とした印象を与え、キャラクターの芯の強さを表現している。このあたりが現代的で、ディズニーのテーマパークで手を振るシンデレラのイメージとはかなり異なるかも…。でもこのキリリ眉によって、自ら運命を切り開こうとする意志が表現されるわけで、ここはディズニーの大きな狙いだろう。その他にも、シンデレラの生い立ちなど、これまでの「常識」を変える創意工夫がほどこされているが、じつはこの『シンデレラ』で最も革新的なのは、意外や意外、「プリンス」の描写なのである。
プリンスの変貌といえば、『アナと雪の女王』でのハンスは、予想を超えた邪悪な部分もあるキャラクターとして登場。観る者に新鮮な驚きを与えたのが記憶に新しい。『シンデレラ』の王子の「新しさ」は、ヒロインの前では「王子」という肩書きを捨て、ひたすら「一人の男」として扱われようと行動する点だ。初対面のシンデレラに「自分の名前はキットだ」と、あくまでも同等の立場で対応しようとする王子。その姿勢は、ヒロインが最終的に「王子様とのキス」を目的にしても「意味がない」と作り手が宣言しているかのよう。ここに「玉の輿」願望は存在しない。一人の人間として、相手を愛することの大切さ…。雲の上の存在で、あこがれの対象であるプリンスまでも、等身大に描こうとするチャレンジが、『シンデレラ』の隠れた魅力だろう。
邪悪なシンデレラに驚き、その後に王道を観て安心感!
新しいプリンス像に、意志の強いヒロインという側面をもちつつ、これまでのシンデレラのイメージを損なわない、今回の実写版『シンデレラ』に対し、“黒シンデレラ”が登場するのが、やはりディズニーの『イントゥ・ザ・ウッズ』だ。これはブロードウェイのミュージカルを映画化しているので、ディズニーが意図的に創作した邪悪なヒロインというわけではない。ここでのシンデレラは、けっこう野心家で策略もめぐらし、欲望をコントロールしない部分もある、よく言えば「人間的」。ゆえに新鮮! それにしても、このタイミングで“黒シンデレラ”をスクリーンに出すとは…。『イントゥ・ザ・ウッズ』で観客の心をざわめかせ、『シンデレラ』で安心させるという効果も考えていたのか…。いずれにしてもプリンセス像をどんどん進化させようとするディズニーの挑戦は加速しているようだ。
『シンデレラ』
4月25日(土)全国ロードショー
(c) 2015 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
『イントゥ・ザ・ウッズ』
3月14日(土)全国ロードショー
(c) 2015 Disney Enterprises, Inc.