マインドフルネスしてますか?瞑想はカンタンだった!ペンとノートさえあればできる瞑想革命『書く瞑想』
マインドフルネス注目の背景にあるもの
このところ、マインドフルネスとか瞑想に注目が集まっています。何しろ最近の人類が日常的に接する情報の数が馬鹿にならない。それは、20年程前の数十倍とも言われています。
それだけの数の情報に接する中で我々の中でなされる判断や決断、単なる記憶の想起などは爆発的に増えていることは想像に難くありません。そりゃ疲れるわけですよね。
というわけで、デジアナリスト・手帳評論家の舘神龍彦です。
私自身もご多分に漏れず、マインドフルネスの本などを手に取り、それを実践してみようと思っていました。ところがこれが微妙にむずかしい。
と思ったところに登場した本書『書く瞑想』(古川武士 ダイヤモンド社)。
これは画期的ですよ。瞑想革命です。その画期的な理由と実際について紹介していきます。
マインドフルネスはなぜ難しいのか
マインドフルネスを巡ってはいろいろな本が出ています。
その中には具体的な方法も細かく説明されています。
ですが、これが微妙にむずかしい。
いや、できるようになればできるのかもしれません。ただ、そのできるようになるのがむずかしい。それは以下のような理由です。
つまり、本に書いてある説明を読みながらそれを再現することがむずかしいのです。
まず、本を読みながら目を閉じて瞑想するのは不可能です。
では、本に書いてあることをいったん覚えてそれを頭の中で思い出しながら瞑想することはできるのか。これならなれればできそうです。できそうですが、そもそも何かを思い出すという行為は、瞑想じゃないじゃん(笑)。
ひょっとしたら私が読み落としている説明があるのかもしれません。
ですが、マインドフルネスとか瞑想関連の本の方法が実行しにくいと感じるのは上記のような理由でした(個人の感想です)。
書けばいい!これならできる
と思っていたところに献本いただいた今回の『書く瞑想』。その名の通り、書くことで瞑想をしようという趣旨の本です。
やり方はざっと以下のようになります。
書く瞑想は大きく以下の3つのステップから構成されています。
1.放電ログと充電ログを書く
日々の生活の中で放電したこと、充電したことそれぞれを毎日記録する。
また、それに対する評価をセルフトークという形で書く
2.書く片付け
月1回集中して、日々のログから見えるパターンを洗い出す。深層の価値観などとじっくり向き合う。
3.書く習慣化
書くことを習慣化する。自らの価値観を明確化しそれに従って行動できることをめざす。
こんな感じです。本書は3つの段階のそれぞれを詳しく説明しています。
充電ログ、放電ログとは
この記事では、1.の放電ログ、充電ログ、そしてセルフトークについて簡単に紹介しましょう。
放電ログとは、「一日の中であなたの感情、気分、エネルギーを下げたものはなにか」という対して、思い浮かぶものをすべて網羅的に書き出すことです。
本書に例としてあげられているのは以下のようなことです。
・早起きがかなわず7時半ぎりぎりにおきてしまった
・お昼ご飯を食べ過ぎた
・洗濯物がたまっている
とまあこんな感じです。感情のエネルギーを奪ったという点で「放電」と名付けられているわけです。
充電はどうでしょう。これは
・書斎でゆっくり30分読書ができた
・クイーンの音楽を移動の車中で聴いた
・腕立て、腹筋ができた
などだそうです。小さな達成感や充実感、学び、つながり、温かさなどが見過ごしていることが味わえて心の充足が得られるというのがポイントのようです。
そして本書によれば、放電ログ、充電ログを書くだけで、放電が少なくなり、充電が増えていくそうです。
セルフトークが大事
この2つのログのそれぞれに対して、「瞑想的」に思いつくまま、無意識的、連想的、対話的に書いていくそうです。
とくに一つの出来事から「深く対話」していくことに重きを置いているようです。より深い感情に気がつくのがその狙いだそうです。
で、これは記入の例が書き文字で書いてあります。
また書き方のポイントが4つあげられています。詳しい内容は本書に譲りますが、これは必要に応じて参照することができるのがありがたいです。
何しろ呼吸法を含む瞑想は、それをおぼえなければならない。
そして本書の方法は、本を参照しながら書くだけです。わからなくなったらいつでもページを開けばいい。これほど気楽な瞑想は、まさに瞑想革命ではないでしょうか。
本書の方法には、前述のように2段階目、3段階目があります。ともあれ、この放電ログ、充電ログとセルフトークだけでも、意味はありそうです。
フォーマットのダウンロードやメルマガも
この本のメソッドを実践するためのフォーマットダウンロードサービスや、メルマガもあります。特にメルマガは、実行のためのリマインドとして機能するように考えられているようです。
本を読んで納得するだけでなく、これらのネットサービスを用意する。
実践のための筋道がきちんと考えてあるのです。
特定のノートやペンを前提としていない
この種の本は、多くの場合、その方法を実践するための文具が登場します。また、そのために文具が作られて販売されるケースもあります。
この『書く瞑想』については、とくに指定のモノはありません。
著者が使っているものとして、A5版のニーモシネ(方眼)や0.38ミリのフリクション(複数色)が紹介されています。ですが、どうしてもこれでなければならないというわけでもないようです。ただ、「書く片付け」というノウハウの実行には、1年の振り返りをする必要があることもあり、A4サイズ以上のノートが推奨はされています。
デジタルでも大丈夫
どうしても手書きと言うことでもないようです。iPadとApplePencilでも、あるいはパソコンによるタイピングでもよいと明言されています。
アナログ、すなわちペンと紙による手書きが推奨される部分もあります。
直感や潜在学習(深い部分の無意識による学習)は大脳基底核で行われている旨の説明がされています。そしてここから知恵を引き出すには手で書くことらしいのです。そのへんの説明も本書にはあります。
伝統を踏まえつつ現代的なニーズにも応える一冊
ダイヤモンド社には古くは『スーパー手帳の仕事術』(山根一真)や、最近では『情報は一冊のノートにまとめなさい』(奥野宣之)などの文具やその使い方をテーマとする書籍の伝統があります。
また、前述したように、情報が過多な現代において、禅に由来するマインドフルネスの考え方や実践方法が注目を集めています。
だから本書は、同社の伝統に乗っ取りつつ、忙しい現代人の興味関心に応えるという2つの流れ、要請、需要の中で成立しているわけです。
この本が提唱している方法はわかりやすい。
書けばいいのですから。
情報量が爆発し、コントロール不可能な原因によって日々の生活が変化し、それに翻弄される。そんな日常に対して書くことで、自分を回復し、理想のビジョンを見つけ出す。そのことで、心と生活と人生が整う。日々の生活の中でほんとうは自分が何を望み、どうしたいのか。これを明確にしてくれる。ムダのない日常とそのための習慣を手に入れる。
その意味で本書はオーソドックスでありながらも現代的な一冊だと言えます。