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H&Mが、画期的なサステナブル商品に光を当てた新コンセプト始動 第1弾はサボテンや廃棄ゴミを使用

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
サステナブルな素材にデザイン性を組み合わせている 写真はすべてH&M公式

 「H&M」が、よりサステナブルで高度な技術を活用した新コンセプト「イノベーション・ストーリーズ」(Innovation Stories)を打ち出す。「サステナビリティにおける先進的な製造工程をクローズアップしたもの」(H&M広報)で、2021年を通じて複数のシリーズを発表していく。第1弾は「サイエンス・ストーリー・コレクション」(Science Story Collection)。サボテンや、ヒマシ油(トウゴマ)など植物由来素材を用いた商品や、漁網やその他の廃棄ナイロンから100%再生されたナイロン繊維「ECONYL」、プラスチックや食物、コットンなどの廃棄ゴミを使用した商品など25型を3月18日に発売する。

第1弾「サイエンス・ストーリー・コレクション」、注目の素材とその特徴

素材その1:サボテン/素材名:Desserto

原材料は、平べったい肉厚の葉(実際は茎)が特徴のウチワサボテン。レザーの代替えとなる植物由来のヴィーガン素材で、クルエルティフリー(動物不使用)。水などの天然資源の使用量も削減。「H&M」では初使用。

素材その2:ヒマシ油(トウゴマ)/素材名:EVO by Fulgar

ヤツデのような葉を持つトウゴマは、他の植物には適さないような乾燥土壌地で自然に育つ植物。その種子からとれるヒマシ油から作られたバイオベースの糸。軽量でストレッチ性、速乾性が高い機能性素材。水を大量に必要とせず、食用の農耕地も必要としない再生可能な資源として注目。「H&M」では初使用。

素材その3:漁網など。100%再生ナイロン繊維/素材名:ECONYL

漁網やその他の廃棄ナイロンから100%再生されたナイロン繊維を使用。天然資源の保護や、海など地球環境をキレイに保つことをサポート。「プラダ」(PRADA)や「バーバリー」(BURBURRY)、「H&M」などでも使用。

素材その4:搾油用の麻種子の残りカス/素材名:Agraloop (Hemp Biofibre)

Agraloopは、食用作物ごみや農業廃棄物を新たな天然繊維へ変える革新的な製造工程。H&M創業家が設立した「H&M基金」による、ファッション業界の変革を促進するイノベーションアワード「グローバル・チェンジ・アワード」2018年の受賞アイデアから実用化したもの。Agraloop Hemp Biofibre は、搾油用の麻種子の残りカスを原料とした高品質の天然繊維。

素材その5:廃棄コットン/素材名:Texloop Rcot

廃棄コットンをRCOTというリサイクルコットンへと再生する製造工程。通常はリサイクルすると繊維が短く細くなってしまうが、技術力により元の繊維と同等の品質を保つことができ、さらなるリサイクルが可能となる点が画期的といわれている。

素材その6:木材繊維60%、プラスチックごみ40%のセルロース繊維/素材名:Eastman Naia Renew

サステナブルな方法で調達された木材繊維60%と、プラスチックごみ(カーペットの繊維やプラスチック製パッケージなど)をリサイクルしたもの40%から作られたセルロース繊維。

革新的でサステナブルな製造・デザインで、ポジティブな変革を推進

 「イノベーション・ストーリーズ」について、H&Mは「サステナブルなファッションの発展を推進し、ポジティブな変化を起こしていく事に長年取り組んできました。最新のイニシアチブである『イノベーション・ストーリーズ』は、イノベーションやサステナブルな製造およびデザインを示す、方向性のあるコンセプトで、ポジティブな変革をより一層推し進めるものです。シリーズとして発表する各コレクションでは、未来のファッションを象徴するような、サステナビリティの最先端の取り組みをフィーチャーし、イノベーションをさらに次の段階へと押し上げていきます。新たな素材を試験的に起用するプラットフォームとなる本コンセプトの下、2021年を通して、複数のコレクションを発表していく予定です」と説明。

 クリエイティブアドバイザーを務めるアン=ソフィー・ヨハンソンは、「この新しいコンセプトは、H&Mのサステナブルで循環型ファッションシステムを目指す旅をつないでいくものです。『イノベーション・ストーリーズ』で、お客様に愛され、誇りに思っていただけるような魅力的で長く着用できるアイテムを作ることで、私たちをさらに成長・発展させてくれると願っています」とコメント。

 コンセプトデザイナーのエラ・ソッコルシは、「『イノベーション・ストーリーズ』は、私たちの実験を次のレベルに押し上げるためのプラットフォームで、科学者や開発者と協同で行っている研究に希望を与え、私たちの進歩的な発想に光を当てるもの。『サイエンス・ストーリー』は、これらの素晴らしい素材の裏側にある、長年の研究と実験に敬意を表しているものです」と説明する。

 リサイクル素材やバイオ素材など、地球環境に負荷の少ない素材から生まれた「コンシャス・コレクション」(Conscious Collection)に続く、サステナブルコレクションになる。

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ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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