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古着アップサイクルコンテスト「リクロースカップ」が面白い!循環型と学生交流のプラットフォームを目指す

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
独創的かつ高レベルの作品も多いReclothes Cup。写真は全て事務局提供

サステナブルな消費行動の一つとして「中古品や古着、リメイク・アップサイクル品などを買う」ことが広がっています。新品を製造する際の素材やエネルギーを節約するとともに、廃棄せずに活用することで製品寿命を延ばしてCO2(二酸化炭素)の排出削減につながること、人とかぶらない個性的なものが手に入ること、さらには節約につながることなど、さまざまな価値があります。

そんな中、古着のアップサイクルコンテスト「Reclothes Cup(リクロースカップ)」に注目が集まっています。手がけるのは「本を売るならブックオフ」の合言葉でも知られるブックオフです。このコンテストは誕生のきっかけや、実際に店頭に並ぶ古着から選んでデザインする点など、ユニークかつクリエイティブで社会や環境に良い影響を与える循環型プロジェクトでもあります。このコンテストの意義やその成り立ち、今後のビジョンを、ブックオフグループホールディングスの堀内康隆社長と、Reclothes Cup運営事務局長の山田美有さん審査委員長を務める前「装苑」編集長の児島幹規さんに聞きました。

――1990年にブックオフ1号店をオープンさせて以来、循環型社会の一つの大きなプラットフォームとして発展してきたブックオフ。サステナビリティについてどうお考えでしょうか。

堀内社長:三つお話しさせてください。まず一つ目は、我々の事業が「本」から始まっていることもあり、幅広い年代のお客さまに楽しんでいただける店であり続けたいと思っています。みなさまにお持ち込みいただいたモノは可能な限り受け止め、リユースやリサイクルにつなげていきたいと考えているからです。

二つ目ですが、お客さまがお持ち込みされるモノをしっかり受け止められる環境を作りたいと考えています。当社の「宅配買取」・BOOKOFFとは異なる客層をターゲットにした「プレミアムサービス事業」などにおいても言えることですが、これまで接点のなかったお客さまに対してもアプローチできるよう、できるだけ多くの拠点を作ってきました。

三つ目は、中古品や余剰在庫に「新しい価値を与える」ことに意義を持つという点です。「リクロースカップ」につながる部分ですね。当社では点数ベースで約7割が販売に至るものの、約3割は売れ残っています。販売に至らなかったモノは、9割以上を海外でリユースしたり、リサイクルしたりしているのですが、「新しい価値を与える」ことについても、追求していきます。「持続可能な取り組み」がスタンダードになりつつある現代において、これはビジネスを回していくうえでもとても重要な考え方だと認識しています。

――サステナビリティはとても重要なことですが、サステナブルな商品だから売れるというわけではありませんし、本気で取り組むとお金もかかるため、サステナビリティは儲からないと言われたりもします。けれども、商売として収益を上げなければ、社会貢献活動は継続できなくなり、まさにサステナブルではなくなってしまいます。そんな中で、この「リクロースカップ」には、かなりの資金を投じているようですね。「リクロースカップ」の開催意義と、商売・収益とサステナビリティの考え方をお聞かせください。

堀内社長:リユース市場は今3兆円規模で、今後4兆~5兆円に広がっていくと言われています。けれども、リユースをしている人の数自体は増えていないという統計データもあります。消費者心理の中で、リユースや「もったいない」を実践するのはすごくいいことだ、と頭の中ではわかっていても、日常生活に率先してリユースを取り入れる方はあまり多くないのではないでしょうか。献血などと同じで、誰かの役に立つとわかっていても、定期的にする人は多くないかもしれない。循環型社会の形成やリユースなども同じで、意識と行動の差が大きいと思います。だからこそ、「リユースっていいことだよね」というだけでなく、「楽しいよね」「ワクワクするよね」といった別の要素をたくさん組み合わせていかないと、リユースマーケットは広がらないのではないかと思います。そういった意味では、商売という枠組みを超えて世界観を創っていきたいと考えています。

「リクロースカップ」には、「認知の拡大」と「人財育成」の2つの文脈があります。当社にはアパレルを扱う店舗が約100店舗あり、年間で1,000万点以上の買取を行っていますが、「BOOKOFFがアパレルを取り扱っていること」はあまり知られていません。また、そういう意味では、「リクロースカップ」を通じて認知を拡大させたいと考えています。そしてもう1つ、当社の事業・取り組みを知っていただくようなイベントを能動的に企画・実行してくれる人財の育成につながるので、その点も強く意識しています。

Reclothes Cupを発案し、福岡を拠点に運営事務局長を務める山田美有さん。学生や専門学校などとのパイプ役として、循環型の実現と学生交流プラットフォームづくりに邁進する
Reclothes Cupを発案し、福岡を拠点に運営事務局長を務める山田美有さん。学生や専門学校などとのパイプ役として、循環型の実現と学生交流プラットフォームづくりに邁進する

――発案者であり責任者でもある山田さんは、福岡のブックオフ スーパーバザー ミーナ天神店を拠点にこの活動をしていると聞いています。「リクロースカップ」の着想のきっかけと、抱いていた課題とは?

山田さん:コロナ禍になったのが大きなきっかけでした。もともとお店のアルバイトスタッフに服飾専門学校生がいて、学校の課題を制作するのに古着を使うと聞き、専門学校に私たちの中でどうしても発生してしまう売れずに残ってしまったアイテムを題材として提供させていただくことをはじめていました。そこにコロナ禍が直撃し、コンテストや作品を人々に披露する場がすごく減ってしまっているとも聞きました。今どきの若い子は少し冷めているイメージがあったのですが、その子たちはすごい熱量で一生懸命服を作っていて、学校に行くのを楽しみにしていました。そこで、学生にチャンスを与え、作品が見せられる場所があればいいなと思ったことが一つ。

もう一つは、本気で服の廃棄を減らしたかったんです。長い間アパレルで働く中で、衣服ロスの問題はずっと付いて回ってきました。以前は東南アジアなど海外に輸出や寄付をしたりすることもありましたが、(現地の法律などで)できなくなってしまったりもしていて。私たちは古着を年間1000万点以上買い取りますが、売れ残って行き先がなくなった服を活用した新しくて面白い取り組みによって、お客さまにも目新しいものが提案できたらブックオフの課題解決にもなりますし、学生さんにSDGsやモノを大切にすることを学んでもらえるとも考えました。そこで、リメイク・アップサイクルのブランド「リクロース」のプロジェクトを発展させ、コンテストを開催することを起案し、2021年から取り組んできました。

最終審査会はファッションショー形式で公開。ブックオフが扱う「古着」を自由な発想で価値を高め、人々を感動させワクワクするモノへと生まれ変わらせることで、モノの循環と次世代クリエイターの創出を狙う
最終審査会はファッションショー形式で公開。ブックオフが扱う「古着」を自由な発想で価値を高め、人々を感動させワクワクするモノへと生まれ変わらせることで、モノの循環と次世代クリエイターの創出を狙う

――いろいろなコンテストやアップサイクル企画などがある中で、「リクロースカップ」のユニークポイントは何ですか?

山田さん:応募者にお店に足を運んでもらって、販売しているものの中から素材となる古着を選んでもらって作品作りを考えてもらうところだと思います。1アイテム1500円以下のものならどれでも選んでいただけます。実際にブックオフのお店に足を運んでいただき、どのような古着を扱っているのか知ってもらうことができます。また、学生が応募できるデザイン部門と、一般からも参加できる販売部門とを用意し、公開の最終審査会でデザイン部門通過作品のファッションショーをしたり、実際にアップサイクルした作品を販売することができるのも魅力だと思います。

児島審査委員長:「リクロースカップ」の2回目の開催に当たって相談を受け、山田さんの熱量や、ブックオフの本気度を感じて協力させていただくことを決め、山田さんと話し合いながら今の形にブラッシュアップしてきました。ファッション・アパレルのコンテストが減る中で、学生にとって本当に本当にありがたいコンテストだと思っています。

すべての原点が、山田さんがいらっしゃるミーナ天神にあるお店にあり、一次審査は東京で行いますが、最終審査会や運営などは福岡を拠点に開催しているのもポイントの一つだと思っています。東京に集中しがちな中で、これだけの規模のファッションコンテストを地方で開くことはなかなか他にはありません。

Reclothes Cup審査委員長の前「装苑」編集長の児島幹規さん。「Zoff」のインターメスティック執行役員CDO(Chief Design Officer)。大阪文化服装学院の特別教員も務める
Reclothes Cup審査委員長の前「装苑」編集長の児島幹規さん。「Zoff」のインターメスティック執行役員CDO(Chief Design Officer)。大阪文化服装学院の特別教員も務める

実は一番ユニークなのは、最終審査会のあり方だと思っています。4回目となる今回も500件近くの応募があり、一次審査でデザイン部門40作品、販売部門20作品が通過となりましたが、通常こういったコンテストでは15~20まで絞り込むところがほとんどです。なぜ多くしているのかといえば、一つは全国の学生に福岡に来てもらって、実際に集い、つながる場や機会を提供したいという思いからで、一部、移動費も支援します。

会場となる福岡国際会議場では、500人近い観客を前に公開審査を行い、通過作品のファッションショーに加えて、トークショーも行います。堀内社長と審査員でもあるスタイリストの相澤樹さん、そして、ゲストデザイナーには昨年は「ANREALAGE(アンリアレイジ)」の森永邦彦さん、今回は「beautiful people(ビューティフルピープル)」の熊切秀典さんに登壇いただきます。「このままファッションを続けていていいのかわからない」と悩む学生も多い中で、さまざまな質疑応答などによって、ああ自分だけじゃなかったんだと共感して心強くなったり刺激を受けたりしてもらう機会になっています。さらに終了後には審査員と学生との懇親会の場を設けています。大ファンのスタイリストに会えて嬉しくて泣き出してしまう子もいます。後日、別のコンテストで、「あ、こないだリクロースカップでも会ったよね!」ということも起きていると聞いています。狙っていたことではありますが、リユースのアパレルの価値を高めるプロジェクトを通じて、全国にいるデザイナーや服飾業界を目指す学生や若者たちが交流できて、刺激を受けたり未来を考えたりできる好機を少しでも多く提供したいと考えています。

2023年の受賞者・受賞作品と審査員との記念撮影。ファッションショーのバックステージやトークショー、交流タイムを通じて、学生同士のネットワーク構築や憧れのデザイナーやスタイリストと対話する貴重な機会に
2023年の受賞者・受賞作品と審査員との記念撮影。ファッションショーのバックステージやトークショー、交流タイムを通じて、学生同士のネットワーク構築や憧れのデザイナーやスタイリストと対話する貴重な機会に

また、僕自身、雑誌「装苑」編集長を務めた10年間に、(新人デザイナーの登竜門とされる)装苑賞をはじめ、多くのアワードやコンテストなどの審査員をさせていただき、プロのデザイナーから学生まで、デザイン画や応募作品を山ほど見てきました。コンテストをきっかけにデザイナーとしての道を歩むチャンスをつかんだ若者をたくさん見てきたので、「リクロースカップ」がそのきっかけの一つになってくれたら嬉しいですし、偉そうですが、将来デザイナーとして生きて行けそうかどうかも自分の選考ポイントにしています。

そういう意味でも、一次審査の通過作品を多くして、実際に制作し、ファッションショーで披露できたりお店で販売できたり、就職時にアピールできるようなチャンスにつながればといます。イラストはいいけど、本当にこれが実際の作品として着られるものに仕上がるのかな、と少し疑問な部分があっても、学生が挑戦して才能を発揮してもらいたいという思いを込めて選んでいるところもあります。いい意味で期待を裏切る作品を仕上げてきてほしいなと思いますね。

一次審査のワンシーン。審査員を務める堀内社長(左)やスタイリストの相澤樹さん(左2)らとともに、審査会場の教室一面に並べられた500件近い応募書類を真剣にチェック
一次審査のワンシーン。審査員を務める堀内社長(左)やスタイリストの相澤樹さん(左2)らとともに、審査会場の教室一面に並べられた500件近い応募書類を真剣にチェック

――福岡を拠点に開催されていますが、福岡にこだわる理由は何ですか?

山田さん:たまたま私が今福岡在住だからで、正直、福岡でなくてもいいかもしれません。でも、東京ではない、というところがポイントではあります。東京にはコンテストやファッションショーもあふれていますし、ファッションをやるなら東京に行かなくちゃ、という人も多いと思います。でも、東京じゃなくてもできることはあるし、どこであってもチャンスは自分でつかむしかないもの。みんなが当たり前に集まるような場所ではないところであえてやることで生まれるものもあると思うし、チャンスをつかみにきてもらいたいと思っています。今は福岡で開催していますが、今後はどこか別の地方でも開催するのかなど、考えながら継続していきたいと思っています。

堀内社長:私たちは日本全国で事業を展開しているので、全国どこで開催してもよいというのが基本的な考え方です。リユースは「買取」からスタートする以上、地域に根差したビジネスでもありますので、地域ごとにオリジナリティを出したり、店舗の個性を磨いたりする方針を掲げています。いかにお客さまに喜んでいただけるかを軸とする上で、実行する人間の熱量は非常に大事なことです。本社が決めたからやります、ではあまり面白みもありません。山田はもともと実家が北海道なので、北海道でやってもいいですし、やろうという人間がいればどこでやってもいい。いろいろなところにチャンスがあって、福岡だけでなく、大阪でも金沢でも、どこに行ったとしても学生には挑戦したいと言ってもらえるような場づくりをしたいなと思いますね。ブックオフでは、社会のニーズや課題に応えるために自発的に行動を起こせる人材を求めるとともに、社員のアイデアから新しい企画・事業を立ち上げることを推奨しています。山田はまさにその体現者です。

――社内外の反響などを踏まえたうえで、今後のビジョンを聞かせてください。

山田さん:他の地域のスタッフが見に来てくれたりもしていたのですが、「自分たちが扱う商品でこんなことができるんだ!」と驚き、感動してくれていました。私たちはアパレルを扱っているとはいえ、古着の買取販売なので、アパレル企業っぽくはないんです。それが、博物館や国際会議場など驚くような場所を会場にファッションショーまで開催できたり、デザイナーを志すファッション好きの学生たちと出会えたりして、刺激を受けていますし、回を重ねるごとに協力者が増えています。作品の展示も福岡だけでなく全国を巡回しているのですが、頼み込んでいた立場から、今年は多くの店舗がやりたいと申し込んでくれて興味関心の高まりも感じています。「社員やスタッフも喜んでいました」という声や、「お客さまも興味を持って足を止めてくださるなど、反響があります」などの声もいただいています。

Reclothes Cupの優秀作品は、福岡や渋谷などブックオフの主要店舗で巡回展示される。社内でもプロジェクトに賛同・協力する動きが高まっている
Reclothes Cupの優秀作品は、福岡や渋谷などブックオフの主要店舗で巡回展示される。社内でもプロジェクトに賛同・協力する動きが高まっている

コンテストは始めるところは多いけれども、続かないものも多いので、やはり続けていくことが大切です。いずれはこのコンテストでの受賞を胸を張れるような内容にブラッシュアップし、未来に活躍するデザイナーの登竜門的な存在にしていきたいですね。これをチャンスとして挑戦してくれる人を増やすとともに、「リクロースカップ」を出会いの場として、人と人がつながるプラットフォーム的な存在として広げていきたいですね。コンテストを通じて学校や先生方とのつながりも広がっていますし、これを大切にしていきたいですね。12月1日の最終審査会にもぜひ来ていただきたいと思っています。

児島審査委員長:ブックオフには、10代後半の子たちにチャレンジし、リアルにつながる場を創出いただいていて嬉しいしありがたいですね。やはり、山田さんの熱量によるところが大きいですね。審査には社長も参加され、その本気度や楽しむ姿に触れることで、この会社はすごいなと感じました。僕は編集者だから、編んで集めるのが本業で、いろいろ提案し、一緒にブラッシュアップさせながら化学反応を楽しませてもらっていますし、やりがいも感じています。実はこの春に「装苑」の編集長を降り、7月から「Zoff」を手がけるインターメスティックのCDO(Chief Design Officer)として働きながら、週1回大阪文化服装学院で講義を行うことになりました。この「リクロースカップ」の審査委員長はぜひ継続していただきたいと言っていただきありがたいですし、もはやチーム感、家族感すら漂っています。だからこそ、本気で次のステップをどうするのか一緒に考えてお役に立てたらと思っています。

すでに新店舗の出店時にワークショップをしたり、ミーナ天神内にもラボを設けて、専門学校の卒業生やコンテストの応募者などが集まって、「リクロース」ブランド向けのリメイク、アップサイクル商品も制作してもらっています。今後、リユース、リメイク、リサイクルなどはもっともっと当たり前になっていくので、新品と一緒に並べてもいい提案になるでしょうし、もっと価値が高まることになると思います。今はコンテストの使用アイテムの上限は1500円ですが、レザーやファーなど、サステナビリティの観点から新品が難しくなり、かつ、少し高額なアイテムにも取り組みを広げられたらと考えています。

ちなみに、昨冬には「リクロース」ブランドで阪神百貨店梅田本店でポップアップストアを開いたり、今春にはエシカル&サステナブルな大展示会「NEW ENERGY TOKYO」に「リクロースカップ」でブースを出展したりもしました。たとえば近い将来、イタリアで開催され世界中からバイヤーが集まる紳士服見本市「ピッティウオモ」に出展できたら面白いかもね、など、いろいろアイデアを出し合っています。夢が語れるのもブックオフの素晴らしさでありいい会社なんだなと思いますね。

古着をリメイク・アップサイクルする「リクロース」ブランド。昨冬には若手デザイナーと組み、阪神百貨店梅田本店でポップアップストアを出店した
古着をリメイク・アップサイクルする「リクロース」ブランド。昨冬には若手デザイナーと組み、阪神百貨店梅田本店でポップアップストアを出店した

――最後に、ブックオフがリユース市場を発展させていく方法や、目指すべき方向性、今後の課題などについてお聞かせください。

堀内社長:不要品を売ることができる場面やお店などは圧倒的に増えていますし、CtoCのフリマアプリも広がっています。サステナビリティの文脈で、ものを大切に使おうという声もすごく高まっています。けれどもそれが消費行動につながっているかというと、どちらかというと節約という文脈で使われているのではないでしょうか。昨今の物価上昇に伴いリユース市場も広がっていると言われますが、リユース人口を拡大させていくために、より多くの方々に「リユースが社会や環境にとって良いことであり、楽しいことでもある」と実感していただきたいと考えています。節約マーケットではなく、価値創造マーケットであると考えています。これまでは安く売りさばくことに頼っていた時期もありましたし、労働集約型でたくさん買い取ってたくさん売ることで売上、利益を伸ばしてきた時期もありました。時代の潮目に合わせる意味でも、我々がどういうビジネスモデルを展開し、どう新しい価値を提供して選んでいただける状態を作るかということは、まさに中期経営方針にも掲げていることです。その一つとして、店舗だけでなく、グループ全体でイベント等の開催に積極性を持ち、これまでとは異なるお客さまとの接点を得て、改めて当社やリユースの魅力をお伝えしたいと考えています。

今回はアパレルをキーワードに「リクロースカップ」を行っていますが、コンテストだけでなく「リクロースブランド」が非常に大きなカギになると思っています。大型店にリメイクラボを設けたりもしていますし、いろいろな商材で同じような試みをしていきたいと考えています。3年続いたので次は10年を目指して、続けていくことが大切なポイントだと思っています。

リユース業界をリードする会社として、ほかのリユース企業とも一緒に取り組めたり、環境省とも協議させてもらうなど、少し大きなムーブメントにしていきたいですね。経済的な面ではさることながら、社会意義的にもなくてはならない存在になることで、企業自体の持続可能性につながると考えています。ポジティブにリユースを楽しむ人を増やすため、全力を挙げて取り組んでいきたいと思っています。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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