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なぜ仕事ができる人は、席を離れるとき、きちんと椅子を戻すのか?

横山信弘経営コラムニスト
(写真:アフロ)

私は企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタントです。現場でのコンサルティング支援のみならず、セミナーや講演のオファーも多く、年間100回以上はコンスタントに実施しています。対象は、企業経営者か中間管理職の皆さん。人数で表現すると、だいたい年間5000名近い方の前で話している計算になります。

何事も、継続して量をこなしていると、いろいろな傾向に気付くものです。本日のテーマである、仕事ができる人は、きちんと椅子を戻す、という傾向も、そのうちの一つです。

たとえば業績の悪い企業の課長や部長が集まるセミナーでは、セミナーの後、ほとんどの椅子が出しっぱなし。お茶やミネラルウォーター、缶コーヒーなどもテーブルの上に置きっぱなし。ヒドイ受講者は配られた資料すら持ち帰らず、そのまま帰ってしまいます。

いっぽう、成長意欲の高い社長、すでに業績が安定しているにもかかわらず、さらに学びたい、もっと業績を伸ばしたいと考える経営者が集まるセミナーでは、このような傾向は見られません。セミナーや講演が終了した後、当然、自分の椅子はきちんともとに戻しますし、他の方の椅子まで戻したり、余った資料を集めてセミナーの事務局スタッフへ持ってくる社長もいます。

これはセミナーや講演の会場だけで見られる傾向ではありません。

前述したように、私は「絶対達成」をスローガンにしているため、とにかく意欲的な企業経営者や管理者と仕事をすることが多い。一緒に食事をするときに気付きます。相手がトイレなどで席を離れるとき、ほとんどのケースで椅子をそのままにせず、きちんと戻すのです。オフィスを訪ねても同じことが言えます。仕事ができる人の椅子が出しっぱなしになっていることはありません。

たとえ、机の上が書類の山で埋もれていたとしても、椅子だけはきちんと戻っているのです。

これは単なる偶然か、それとも何か因果関係でもあるのか。ずっと疑問を持っていたので、ある経営者にこのことを質問してみると、明確な答えが返ってきました。

「他者視点があるかどうか、ですよ」

と。「他者視点」とは、自分の行動が他者にどのような影響を与えるかを客観的に気付くことができる視点、のことです。

セミナーを受講したあと、椅子を戻さずそのまま会場を後にしても、何も問題はありません。お金を支払ってセミナーを受講しているのであれば、自分が飲んだペットボトルのお茶をテーブルの上に置いて帰って何が悪いんだと思う人も多いはず。飲食店で食事をした後も同じ。食べたら食べっぱなし。椅子も出しっぱなし。何も問題ありません。そうなのです、何も問題がないのです。

ただ、本コラムで述べたいのは、仕事ができる人は、椅子をもとに戻す習慣のある人が多く、おそらくそれは「他者視点」が備わっているからだろう、ということだけです。

仕事のできる人の多くが早起きです。しかし、早起きしていれば仕事ができるようになるわけではありません。同じように、席を離れるとき、椅子をきちんと戻すことを続けていれば仕事ができるようになるわけではないのです。ただ、どうせなら、そのような「他者視点」のあるビジネスパーソンと付き合うほうがよいとは言えるでしょう。いい影響をもらえ、新たな良い習慣を自分にもたらしてくれることは確実だからです。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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