小笠原で記録的な雨不足 原因と今後
小笠原諸島で雨不足が深刻さを増している。昨年5月からの雨量は570ミリと過去最低を記録した。一年を通してまとまった雨が降らない、異例の事態だ。雨不足は今後も1か月程度続く可能性が高く、いつ渇水が解消されるのか、見通しが立たない。
過去50年で最悪の雨不足
「小笠原諸島の少雨に関する東京都気象情報」が13日、気象庁より発表されました。今年になって3度目です。
小笠原諸島の雨不足は深刻さを増していて、父島にあるダムの貯水率は20%まで低下し、このままでは来月にも枯渇するおそれがあります。
いつから雨が降っていないのでしょう。実は昨年(2016年)春から雨の少ない状態が続いていて、父島では昨年5月から今年3月までの総降水量が570ミリと、同期間の降水量としては1969年以降で最低となっています。
なぜ、ここまで深刻な雨不足になってしまったのでしょう。
調べてみると、小笠原諸島には2つの雨期があることがわかりました。
ひとつは4月から6月の前線による雨シーズン、いうなれば小笠原諸島の梅雨です。父島で雨が一番多い月は5月、ちょうど沖縄が梅雨入りする時期です。日本の南海上で夏の高気圧が強まり始め、沖縄から小笠原諸島にかけて、梅雨前線による雲の帯が形成されます。
もうひとつは9月から11月にかけての台風シーズンです。この2つの雨期で、一年に降る雨の6割を占め、小笠原諸島にとって重要な雨となっています。
昨年の5月は高気圧に覆われる日が多く、日照時間が観測史上3番目に多くなりました。また、8月に台風が2つ、接近したものの、まとまった雨は降らず。一年を通して、雨が少ない異例の事態になりました。
日本列島はユーラシア大陸と太平洋に挟まれ、大まかに冬の雪、夏の梅雨、秋の台風の3つの雨期があります。ひとつが欠けても雨不足が深刻になるのに、小笠原諸島では2つがなかったのです。
小笠原諸島という、大海に浮かぶ島という地理的な要因が大きいとはいえ、1年にわたる雨不足は全国でも例が少ない。
渇水解消のめど立たず
いつになったらまとまった雨が降るのでしょう。きょう(15日)のひまわり8号の雲画像をみると、日本の南海上にはっきりと雲の帯ができています(表紙の写真)。将来、梅雨前線に成長する雲の帯で、小笠原諸島に雨期が近づいていることがわかります。
しかし、来月にかけての予想天気図では小笠原諸島は高気圧に覆われやすいとみられ、この雲の帯が停滞し、雨不足が徐々に解消に向かうか、判断が難しい。現時点で、今後1か月はまとまった雨が降らない予想です。今回ばかりは予想が外れてほしいと思います。
【参考資料】
気象庁:小笠原諸島の少雨に関する東京都気象情報 第3号,2017年4月13日
小笠原村ホームページ:渇水対策について,平成29年4月7日