ギリシャ戦直前! 日韓比較からも主張したい「日本が勝つべき理由」
”最低限、負けない” 韓国ーロシア戦
ギリシャ戦直前だからこそ伝えたい、日本にとっての「アナザーストーリー」がある。
ホン・ミョンボ率いる韓国代表の話だ。
18日、ロシアと大会初戦を戦った。言ってみれば「不格好」な戦いぶりだった。
ホン・ミョンボ監督自らが「最低限負けない試合を」と宣言して臨んだ大会初戦。4-2-3-1の布陣を敷いたチームの攻撃は完全にロングキック頼りだった。
その割には、ホン自ら「所属チームでサブの選手を呼ばない」との原則を崩してまで招集した1トップのパク・チュヨン(ワトフォード)にはほとんどボールが収まらない。
時折カウンターを仕掛けるが、スピード感が足りない。ソン・フンミンらのシュートも幾度となくスタンドに飛び込んだ。
挙句の果てには……攻撃での「崩し」を放棄したかのような当てずっぽうのシュートを連発した。「打っておけば何かが起きるだろう」という。イ・グノのシュートも完全にそのうちの一本だった。それでもワールドカップ初戦での貴重な勝ち点1をもたらすゴールだった。韓国国内ファンは皮肉を交えながら喜んだ。twitterにはこんな書き込みがあった。
「ゴール:イ・グノ、アシスト:なし(ロシアGK)」
「さすが産油国。GKグローブも滑るように作ってある?」
確かにシュートを打たないよりもマシだが……第3者としては正直なところ観戦が苦しいゲームだった。ロシアもに似たようなサッカーを展開したからだ。シュートの部分を除けば、「これが2010年大会の岡田ジャパンの試合を第3者として見た印象なんだろうな」と思うような印象だった。
とはいえ「狙い通り」だった
韓国、カッコ悪い。
そう言い切ってしまえないところに、もう一つのフラストレーションを感じた。
なぜなら、チームはやろうとしていたことをやりきったからだ。
「不格好」は狙い通りだったのだ。
韓国代表は6月初頭からのマイアミで合宿からほとんどの時間を「対ロシア対策」に割いた。練習では相手にカウンターアタック、セットプレー対策を繰り返し行った。守備ではボランチのハン・グギョンを中心としたボールの奪い方、ラインの保ち方を徹底的にチェックした。セットプレーは守備ならず、自分たちの攻撃チャンスとしても多くの時間を割いた。
そもそも、本大会11ヶ月前、昨年7月の就任会見から「まずは守備の組織を構築する」と宣言してきた。5月8日の最終エントリー発表時も「(韓国は)ブラジルワールドカップに参加する32カ国のなかで最も厳しい挑戦をしなければならない国」と言い切った。
韓国が「守備的サッカー」を実践する理由
日本代表がアジアカップ優勝、ワールドカップ予選世界最速突破、海外組の台頭などアジアのなかで栄華を極める裏側で、韓国は苦しみの続く4年間を過ごしてきた。
2度の監督交代があった。南ア大会直後に就任したチョ・グァンレはパスサッカーを志向したが、2012年8月に札幌ドームで日本に惨敗。その年の12月、大韓サッカー協会との関係の悪化もあり電撃解任された。後任のチェ・ガンヒはKリーグで実績を残したが、代表チームでは選手とのコミュニケーションがうまく行かなかった。2013年6月、ワールドカップアジア予選最終予選の大一番を前に、ボランチのキ・ソンヨンがツイッターで監督批判を行っていたことが発覚。重要局面で中盤の軸を欠く事態になるや、完全なロングボール頼りのサッカーになった。最終節、イランとのホームゲームに敗れたが、他会場の結果に救われ、得失点差わずか1差での突破となった。
チェはもともとKリーグクラブへの復帰を希望しており、2013年6月までの契約時期を終えると更新を希望しなかった。
2013年7月に就任したホン・ミョンボに残された時間は11ヶ月しかなかった。
ロンドン五輪で結果を出した守備ラインを軸に、後は攻撃を構築していくだけ。ホンにはそんな目論見があったようだ。就任直後からほぼ1試合ごとに1トップの選手を入れ替える采配を見せた。しかし清水、徳島に在籍したキム・ドンソプ(ソンナム)らを試していったが、なかなかしっくりこない。2012年のアジアチャンピオンズリーグで結果を残した196センチのキム・シヌクは軸になりえたが、「どうしても彼が入ると選手が無意識にロングキックに頼りすぎてしまう」(2013年7月の東アジアカップ日本戦後)という傾向があり、起用をためらった。今年3月6日のギリシャ戦に原則を崩し、パク・チュヨンを招集。これで決着をつけようとしたが……そうこうしているうちに守備ラインが不安を見せ始めた。
大会までのテストマッチでは散々な結果しか残せなかった。
1月30日 ●メキシコ 0-4
2月2日 ●アメリカ 0-2
3月6日 〇ギリシャ 2-0
5月28日 ● チュニジア 0-1
6月10日 ●0-4 ガーナ
やはり、時間が足りなかった。先日のロシア戦で「最低限負けないゲーム」を狙うのも致し方ない展開だった。
ザッケローニが5月12日の最終エントリー発表でこう宣言したのとは好対照だ。
「自分たちのサッカーをすることが大事で、自分たちにはサッカーのコンセプトがある」
ここにも「破るべき歴史」あり!
いざ大会が幕を開け、両国が初戦を終えた段階でこういう結果になっている。
”カッコいいことをしようとして、それができずに勝ち点0の日本、カッコ悪いことをやると宣言し、それをやりきって勝ち点1を取った韓国”
少々乱暴な言い方だが、あくまで初戦だけを観るならこれが現実だ。
だからこそ、4年間日韓比較を続けてきた立場から、今の日本代表には2つほど破ってほしい歴史がある。
ひとつはACL(アジアチャンピオンズリーグ)でKリーグ勢に苦しめられていること。
完全に近年のACLと、本大会で初戦を終えた現状は重なってしまっている。
「結果を実直に求める韓国にやられる」。
2010年のACL優勝チーム・ソンナムのシン・テヨン監督がこんな日韓比較を口にしていたことがある。
「Jリーグのチームはどんな状況でも中盤にこだわる。Kリーグのチームはそれを捨て、勝負に徹することができる。そこが両者の違いだ」
こんな議論は、ある一点で片づけられる。「内容の伴った勝利が最高」だと。
今の日本代表が求め続けてきたものだ。コートジボアール戦でそれを表現することすらできなかった。数時間後の戦いでは見せつけてほしい。「結果を出すために過程を追求してきたのだ」と。
もうひとつ思うところがある。ここまでの流れは、日韓のワールドカップ史に照らし合わせれば、決してよくない流れだということだ。この「Yahoo! 個人」にも以前に書いたが、02年大会以降、日韓両国の間には「4年間の過程で苦しんだ方が本大会での結果がいい」という事実がある。02年、06年も大会前に苦しんだ韓国が本大会で日本を上回り、逆に10年大会では大会直前まで厳しい批判にさらされた日本が結果で上回った。
今大会も4年間の積み重ねでは日本が圧倒的によく、さらに直前のテストマッチの成績でも日本は5連勝で韓国は1勝4敗だった。
そして、本大会初戦の結果では韓国が上回るという流れになっている。
歴史などぶっ壊してほしい。
別に韓国と直接戦うわけではないが、間違っても「隣人だけが踊る宴」など目にしたくはない。こちらは意識せずとも、必ずあちらは日本と比較してあれこれと書き立てるのだから。
以上、日韓比較から観たギリシャ戦への強い思いでした。
チョン・テセ(4年前にテストマッチでギリシャと対戦、2ゴールを上げた)が見たギリシャ
日本には自信をもって臨んでほしいです。ギリシャだって、グループリーグが発表になった際に「日本には勝てる」と感じたでしょうが。僕が北朝鮮代表として2010年ワールドカップ前に対戦した時にも「アジアを低くみているな」と感じました。もちろん日本は違う見られ方をしているかもしれませんが。
日本が自信を持つべきは、各選手の「アジリティ」です。特にキックフェイントが有効でしょう。僕が4年前にピッチで対戦した際にも、これに相手が多くひっかかった印象があります。
前回大会から10人程度が今大会にも引き続き選ばれているようですが、当然4年前とは選手の状態も監督も違う。
だから、今のチームとは単純な比較はできませんが、あくまで直接対決したチームの全体的な印象を言うのであれば、「確かに選手の体格がよいが、アジリティが低い」ということです。先に言ったキックフェイントのほか、細かいターンも相手は苦手としています。
僕はこの試合で2ゴールを挙げましたが、うち1ゴールは小柄(171センチ)のFWサルピンギディス(PAOK/初戦コロンビア戦にも出場)が守備に下がってきたところをキックフェイントでかわしたものでした。小柄な選手でも決してアジリティは高くなかった。そういった印象があります。
(別の機会に取材したものをここに掲載します。本コラムの主旨とチョン・テセ選手の見解は別個のものです)