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藤井聡太二冠(19)竜王戦準決勝で八代弥七段(27)得意の矢倉を受けて立つ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

「それでは時間になりましたので、八代先生の先手番でお願いいたします」

 8月6日10時。大阪・関西将棋会館において第34期竜王戦・本戦準決勝▲八代弥七段(2組2位)-△藤井聡太二冠(2組優勝)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 藤井二冠は関西、八代七段は関東の所属。本局は藤井二冠のホームである関西将棋会館でおこなわれます。

 対局室は5階、御上段(おんじょうだん)の間。

 8時41分頃、八代七段が入室し、下座に着きました。本日は赤いネクタイです。鞄から腕時計、ペットボトルに入った水とお茶、ウェットティッシュを取り出し、畳の上に置きました。

 豊島将之竜王は現在31歳。その下の年齢で竜王戦七番勝負に登場している棋士は、まだいません。

 永瀬拓矢王座(28歳)、八代七段(27歳)、藤井二冠(19歳)。誰が挑戦権を得ても、初の竜王戦七番勝負登場となります。

 八代七段は2017年2月、全棋士参加棋戦の朝日杯で優勝という偉業を達成しました。

 八代七段は、タイトル挑戦の経験はまだありません。竜王戦2組準決勝では渡辺明名人(37歳)に勝利。決勝で藤井二冠に敗れたものの、もし本戦で藤井二冠に勝ち、さらには永瀬王座、豊島竜王にも勝てば、現代四強をすべてなぎ倒すことになります。

 8時44分頃、藤井二冠入室。左手には紙コップ、右手には黒いリュックを手にしていました。永世名人4人の書が掛かる床の間を背にして上座にすわり、扇子、デジタル時計などを取り出して置きます。

 藤井二冠はウェットシートで念入りに手を拭いたあと、お盆もきれいに拭きます。

 一呼吸をおいたあと、両者一礼。上位者の藤井二冠が駒箱に手を伸ばし、駒袋を取り出してひもをほどき、盤上に駒をあけました。

 両者駒を並べ終わったあと、藤井二冠は駒袋のひもを丁寧に結んでから、駒箱にしまいました。

 記録係が藤井二冠側の歩を5枚取って、振り駒。表の「歩」が2枚、裏の「と」が3枚出て、八代七段の先手と決まりました。

 竜王戦2組決勝では藤井二冠先手。戦型は比較的じっくり組み合う矢倉になりました。藤井陣はバランス重視、八代陣は穴熊の堅陣。結果は藤井二冠が寄せ合いを制して勝っています。

 定刻10時。記録係が対局開始の合図をして、両者「お願いします」と一礼。持ち時間5時間の対局が始まりました。

 八代七段は正座した腿の上で両手を組み、しばし瞑想。気息を整えたあと、初手に角筋を開きました。

 藤井二冠はいつもと変わらず、まず紙コップに注がれたお茶を飲みます。青いハンカチで手を拭き、またいつもと変わらず、飛車先の歩を突きました。相手がどのような戦型で来ようとも正面から受けて立つ、王道スタイルです。

 八代七段は得意の矢倉の立ち上がり。

 対して藤井二冠は早めに7筋の歩を突き、手早く桂を跳ね、急戦辞さずの姿勢を見せます。

 序盤の細かな駆け引きで、八代七段は急戦をけん制。現代最前線の矢倉となりました。

 29手目。3筋から歩を突っかけ、まず動いたのは八代七段でした。角交換で両者の駒台には角と歩が乗ります。

 42手目。藤井二冠が4筋の歩を突いた局面で、12時、昼食休憩に入りました。形勢はほぼ互角です。 

 竜王戦本戦の持ち時間は各5時間(一分未満切り捨てのストップウォッチ方式)。昼と夕方、それぞれ40分の休憩をはさんで、通例では夜に終局となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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