Yahoo!ニュース

『鬼滅の刃』猗窩座と煉獄杏寿郎から学ぶ採用活動の注意点

末永雄大アクシス株式会社代表取締役兼キャリアコンサルタント
(写真:西村尚己/アフロ)

こんにちは。アクシス代表の末永です。

中途の人材採用支援をしつつ、月50万人以上の読者を持つ「すべらない転職」という転職メディアや個人向けキャリアコーチング「マジキャリ」を運営している中で、Yahoo!ニュース上では2013年から「働き方3.0」というテーマでキャリアや雇用分野について発信させてもらっています。

TVアニメ版「鬼滅の刃 無限列車編」がスタートしましたね

TVアニメ版「鬼滅の刃 無限列車編」の放送が全国フジテレビ系列にて10月10日23時15分よりスタートしましたね。

 出版界、映画界に大ブームを巻き起こした吾峠呼世晴氏原作の人気コミック『鬼滅の刃』は、テレビ局にも多大な影響を与えています。2021年9月25日に「土曜プレミアム」(フジテレビ系)でテレビ初放映された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、視聴率21.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)という高い数字を記録しました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/168169a7c221fb3663affd033846d97dcfac48ab

9月25日にも、アニメ版に先立ち「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が地上波で初放送されました。いまだ人気衰えぬ大人気マンガ『鬼滅の刃』ですが、劇場版のメイン登場人物の中に、炎柱・煉獄杏寿郎がいます。

(ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください)

ネタバレになってしまいますが、劇場版のラスト近くで煉獄杏寿郎は、敵側の猗窩座から「お前も鬼にならないか?」と勧誘され、「ならない」と即答するシーンがあります(漫画第63話)。

弊社は転職ノウハウメディア「すべらない転職」や、キャリアコーチングサービス「マジキャリ」を運営しており、様々な方の転職相談やキャリア支援をしている立場から言わせてもらうと、猗窩座はリクルーターとして優秀とは言えません。実は令和時代の採用活動でも猗窩座と同じ失敗をしている経営者や採用担当者の方がいます。

今回は猗窩座がリクルーターとしてどうすればよかったのか、猗窩座が令和の時代に生きていたらとしたら注意してほしいポイントを三つまとめました。

1.スグ勧誘しない

猗窩座は煉獄杏寿郎と出会ってスグに勧誘しています。しかも「至高の領域に近い」と褒めているようで、「至高の領域に踏み入れないのか教えてやろう」と若干の上から目線が入っています。

令和の時代の面接で言うならば、面接官が入室直後に「はじめまして。では自己紹介からお願いします」と言っているようなもの。緊張する面接の場で、いきなりこんな言葉を言われてしまったら余計に緊張しますし、求職者側の印象も良くありません。

心理学の言葉で『ラポール(信頼関係)』という言葉がありますが、最初は「今日は寒いですね」「会社の場所はすぐにわかりましたか?」など世間話から始めることをおススメします。また自分の役職や仕事内容など立場を自己紹介して、相互理解を図ることが大切です。

猗窩座「はじめまして。上弦の参の猗窩座と言います。組織ではナンバー3の役割で、専務的ポジションで仕事をさせてもらっています。煉獄さんは素晴らしい刀をお持ちですね。私なんて肉弾戦ばかりで刀をもったことがないので羨ましいです。」なんて言えば、少しは違ったかもしれません。

2.優秀な人材は時間がかかる

煉獄杏寿郎が「鬼にならない」と断ると、猗窩座は「鬼にならないなら殺す」と戦いになります。一度断られてしまっただけで諦めてしまうのはNG。特に煉獄杏寿郎のような優秀な人材なら現職(鬼殺隊)でそれなりの待遇で活躍していますし、本人の転職意欲が高くても引き留めにあう確率が高いです。

最近ではAIやAWSの分野に詳しいエンジニアが欲しいと相談されるケースが増えてきています。売り手市場のエンジニア採用を成功させるには、転職意欲が高くない人物にアプローチしなければいけないケースも多く、当然ながら一度会ったくらいで「今の会社を辞めて転職します」となるケースのほうが珍しいです。

外部から本部長や役員クラスを採用したいなら、数年がかりも珍しくありません。ましてや十二鬼月と鬼殺隊のような競合他社なら引っ張ってくるケースなら尚更です。本人も「転職したいが、流石にバチバチの競合への転職はマズくないか…」と内心悩んでしまいます。ですので、一度断られてしまっても(相手がしつこいと感じない程度に)諦めずに何度もアプローチすることが大切です。

猗窩座「そうですか。鬼になりませんか。残念ですが、今日はこちらの意向を伝えたかっただけですので今日のところは失礼致します。また頃合いを見て声をかけさせていただきたいと思います。もし興味を持ったらご連絡くださいね。あ、煉獄さんのツイッターをフォローしてもいいですか?」と言って次のチャンスを待っていれば、いつかは煉獄杏寿郎も心変わりしたかもしれませんね。

3. 求める人物像を明確にする

そもそも煉獄杏寿郎を鬼にするのは的外れです。なぜなら『青い彼岸花の捜索』という目的の適任者とは思えないからです。目的から逆算すれば探索能力に優れた人物をスカウトしたほうが良いでしょう。そういう意味では嗅覚に優れた竈門炭治郎のほうが適任者です。

しかし、猗窩座は『強さ』という一点のみで人物評価してしまったために、組織が本当に必要としている人物はスルーしてしまいました。現在の組織でも同じようなことがあり、求める人物像(人材要件)が確立されていないまま採用活動をスタートさせてしまう企業がいます。

スタートアップやベンチャー企業によくあるケースとして、そもそも営業職の前に人事が必要なパターンです。人事評価制度が曖昧なため離職率に歯止めがかからず、それでも営業職だけを募集しているため、定着率が悪い状態のまま採用活動をしている会社をたまに見かけます。ただ猗窩座がそれに気づいたとして、鬼舞辻無惨に進言しても聞く耳をもってくれなさそうですが…。

まとめ

採用活動に行き詰まるとテクニック論や新しいツールや手法に走りがちですが、本質を見失っては意味がありません。自社のことを知ってもらい、相手のことも知る努力をする。

会社のことをウラオモテなく伝え、共感してもらえれば一緒に働く。採用活動とは、あくまでも人と人との巡りあわせであることを忘れないようにしたいですね。

アクシス株式会社代表取締役兼キャリアコンサルタント

青山学院大学法学部卒。新卒でリクルートキャリア(旧リクルートエージェント)入社。 リクルーティングアドバイザーとして様々な業界・企業の採用支援に携わる。東京市場開発部・京都支社にて事業部MVP/西日本エリアマーケットMVP等6回受賞。その後サイバーエージェントにてアカウントプランナーとして最大手クライアントを担当し、 インターネットを活用した集客支援を行う。2011年にヘッドハンター・キャリアコンサルタントとして独立。2012年アクシス株式会社を設立。代表取締役に就任。キャリアコンサルタントとして転職支援を行いながら、インターネットビジネスの事業開発や社外での講演活動等、多岐にわたり活躍する。

末永雄大の最近の記事