年末年始台風なしは22年連続 令和4年(2022年)の台風は発生数・上陸数は平年並み
熱帯域の雲
令和4年(2022年)もまもなく終わりますが、日本の南の熱帯域には台風の卵となる積乱雲のかたまりがありません(図1)。
南シナ海で雲が多くなっていますが、12月31日9時には周囲より気圧が低い低圧部ができるという予想です(図2)。
低圧部の中から熱帯低気圧が発生し、それが発達して台風になるには時間かかかりますので、12月31日24時までに台風発生はなさそうです。
ということで、平成12年(2000年)の台風23号以降、22年連続で年越しの台風はなさそうです(図3)。
21世紀最初の平成13年(2001年)の正月、フィリピンの東海上に台風23号があって北東に進みました。
この台風は、21世紀最初の台風である台風1号ではなく、20世紀最後の台風23号で、越年した台風です。
台風の統計がとられている昭和26年(1951年)以降、越年した台風は5個あり、このうち4個は昭和、1個が平成です(図4)。
つまり、21世紀後半には10年に1個くらいあった越年台風は、21世紀になってから20年もないのです。
ちなみに、越年台風5個のうち、3個はフィリピン南部に上陸しています。
新型コロナウイルスの影響がなかった時代であれば、フィリピンへは越年ツアーで多くの観光客がおとずれますが、台風はありがたくないというか、迷惑をかける越年客です。
令和4年(2022年)の台風
フィリピンの東海上では、インド洋から南シナ海を通ってやってくる西風と、太平洋高気圧の南へりをまわる東風がぶつかり、モンスーントラフと呼ばれる気圧の低い領域ができています。
ここで、熱帯低気圧が発生し、その熱帯低気圧が台風に発達するのですが、東部太平洋赤道域の海面水温が高くなるというラニーニャ現象がおきると、モンスーントラフの位置が平年より北西にずれます。
このため、ラニーニャ現象のおきている今年、令和4年(2022年)の9月までの台風の発生場所は、例年より北西、つまり、日本に近い海域にずれています(図5)。
日本に近い海域での発生ですから、日本に影響する可能性は高くなります。事実、令和4年(2022年)9月の台風は日本の近くで発生し、日本に毎週のように影響しました。
9月に発生した7個の台風のうち、6個が接近しています(表)。
令和4年(2022年)の台風発生数は、7月までは平年より少なかったのですが、8月から10月に平年より多く発生し、これまで平年並みの25個発生しています。
また、10月以降の台風接近がなかったのですが、9月に数多く接近したことによって、ほぼ平年並み(0.7個少ない)の台風接近数となっています。
また、上陸数は、台風4号が7月5日6時前に長崎県佐世保市付近、台風8号が8月13日17時半頃に伊豆半島、台風14号が9月18日19時頃に鹿児島市付近に上陸と3個あり、これも平年並みとなっています。
このうち、台風14号では特別警報が発表となりました。
日本の南海上で9月14日3時に発生した台風14号は、9月16日9時には大型で非常に強い勢力となっています。
台風はその後も発達を続け、17日には中心気圧910ヘクトパスカル、最大風速55メートルと大型で猛烈な台風となっています。
このため気象庁では、9月17日11時に緊急記者会見を開き、「経験したことのないような暴風、高波、高潮、記録的な大雨のおそれ」があるとして、暴風波浪高潮大雨特別警報を九州北部と九州南部に発表する可能性について解説しました(図6)。
台風を要因とする特別警報は、最大風速55メートル以上または、中心気圧930ヘクトパスカル以下(沖縄では910ヘクトパスカル以下)で発表されますが、鹿児島全域ではこの基準を満たすとして、9月17日21時40分に特別警報(暴風・波浪・高潮)が発表されました。
また、9月18日15時10分には、宮崎県でも猛烈な雨が降り続いたことから大雨特別警報が発表となりました。
ただ、台風が九州上陸の頃から少し衰弱したこともあり、九州北部での特別警報の発表はありませんでした。
図1、図6の提供:ウェザーマップ提供。
図2、図3、表の出典:気象庁ホームページ。
図4の出典:饒村曜(昭和61年(1986年))、台風物語、日本気象協会。
図5の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。