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インターンシップ氷河期になる意外~選考落ち続出のカラクリと対策は

石渡嶺司大学ジャーナリスト
会社に到着した就活生。今年のインターンシップはまさかの氷河期に?(写真:アフロ)

◆インターンシップ解禁から1か月

「インターンシップの選考が全然通りません。もう、就活はダメですよね…」

インターンシップの解禁から1か月。夏に実施するインターンシップの選考は佳境を迎えつつあります。

それに伴い、選考に落ちた、志望企業のインターンシップに参加できない、との相談が増えてきました。

中には「やはり、コロナ禍の影響で就職氷河期になった」と勘違いする学生も。

記事タイトルにあるように「インターンシップは氷河期」と感じる学生が多くいます。

◆採用意欲は旺盛でもインターンシップは氷河期?

実態としては、新卒採用を大幅に縮小、または中止とする業界・企業は多くはありません。航空・観光・アパレルなどを中心にあることはあります。

大半の企業はコロナ禍よりも若干減らす程度(またはコロナ禍以前と同程度を維持)という、「現状維持~やや寒冷期」という表現が正確でしょう。

詳しくは今年4月に出した「22卒就活は『まだら氷河期』~5つのポイントとその対策は」をどうぞ。

22卒向け、かつ、4月の記事ですが、23卒もこの記事内容とほぼ同じです。

企業の採用意欲があるのに、インターンシップは氷河期状態。

このアンバランスの理由は、2点あり、定義の厳格化、学生と企業の思惑のズレにありました。

それぞれ、解説していきます。

◆インターンシップは就業体験だけではない

まず、1点目の定義厳格化についてです。

日本でインターンシップが本格的に導入されたのは1997年。

文部省、労働省、通商産業省の3省が「インターンシップの推進に当たっての基本的な考え方」を発表、以降、日本の就活でもインターンシップが広まっていきます。

このインターンシップ、直訳すれば就業体験です。三省合意にもそう書かれています。

が、欧米のような就業体験は運営するのが大変という企業側の思惑、それと、短時間で多くの企業・業界を知りたい学生側の思惑が合致。

三省合意の翌年、1998年には旭化成が1日インターンシップを実施(当時の実施名称は「ウィークエンドビジネスフォーラム」/旭化成・プレスリリース〈1998・10・27付/2000・5・8付〉より)、これが全国に広がります。

以降、日本では、インターンシップが就業体験できるものもあれば、セミナー形式の1日タイプもある、様々な形式が並立することになります。

私が1月に『就活のワナ』を刊行した際、インターンシップの種類を調査したところ、32種類もありました。

■インターンシップの種類

A・説明会・セミナー型

1:会社セミナー

2:業界研究

3:施設・設備・社内見学

4:座談会・懇親会

5:他社とのコラボ

6:就活支援(模擬面接、模擬GD、自己分析体験など)

B・大学連携型

1:大学内での事前研修・研究

2:就業体験

3:就業体験後の発表・プレゼン

4:他大学・企業とのコラボ

5:座談会・懇親会

C・プロジェクト型

1:課題に対するグループワーク

2:ビジネスコンテスト

3:事業化による実務を担当

D・業界団体・企業団体などによる横断型

※Bと同じ

E:仕事体験型

1:社長・役員の同行(かばん持ち)

2:雑用担当

3:見学・同行後の企画書提出・発表

4:研究の補助

5:製造実務の補助

6:営業担当

F・報酬型

1:日当定額制

2:営業担当・成果報酬

3:アルバイターン

G・ユニーク型

1:複数企業コラボ

2:プログラミング

3:選考直結(成績優秀者への内定パス)

4:合宿

※『就活のワナ』(講談社+α新書)より抜粋

※なお、A~Fの7型にそれぞれある小分類(1~6)は、全部実施するわけではない。たとえば、Aであれば「1~4」を実施する企業もあれば、「1」のみ、という企業もある。

※A~Fの7型のうち、2ないし3以上の複合型、というものも存在する。

Aは実質的にはセミナー・説明会と変わりません。

この中にある就活支援型とは、模擬面接や模擬グループディスカッション、自己分析、適性検査の模擬受検、マナー講習などが主な内容です。

大学キャリアセンターによる就活ガイダンスや対策講座、はたまた、有料の就活塾のプログラムとほぼ変わりません。言うまでもないことですが、企業が主催するインターンシップなので参加費用はゼロ。タダで就活のノウハウを得ることができます。

この就活支援型のインターンシップを大規模に始めたのは日伝(大阪市)という東証1部上場の専門商社です。2010年に開始したところ、以降、就職人気ランキングも上昇。2015年には日本経済新聞調査による就職人気ランキングで関西地区1位となりました。この成功を見た他の企業が同様のインターンシップを続々と導入。その結果、2021年現在では、インターンシップで一定の割合を占めるまでに至っています。

アルバイターンは、本来ならアルバイトであるところ、インターンシップと称して募集するものです。企業が学生をだましているも同然のものであり、学生は注意しなければなりません。

◆2020年からインターンシップの定義が厳格化

企業からすれば、インターンシップとは、1日タイプのものが中心です。

就業体験できるものや、大学との連携型は手間がかかりすぎる割に採用に大きな効果があるとは言えないからです。

では、1日タイプのものは就業体験なのか、と言えば、そんなことはありません。

これはおかしいではないか、という声が大学や企業団体から出た結果、2020年に大学団体や経団連などで構成される「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」(以降、「産学協議会」と略)が定義を厳格化することになりました。

これを受け、全国求人情報協会(リクルート、マイナビなど大半の就職情報会社が加盟/以降、「全求協」と略)は、2022卒サイトで1日インターンシップについて「1日インターンシップ」「1Dayインターン」などの名称を使わなくなりました。代わりに、1Day仕事体験などの表記が増えます。

さらに、2021年4月19日、産学協議会は「2020年度報告書」を取りまとめ、この中で、インターンシップについても、さらに踏み込みました。

具体的には、

・インターンシップとは、「自らの専攻を含む関心分野や将来のキャリアに関連した就業体験(企業の実務を体験すること)を行う活動」と定義

・「ワンデーインターンシップ」は、就業体験が十分確保できないことから、この名称は使用しない→「オープン・カンパニー」の名称に統一

・汎用的能力・専門活用型インターンシップ、高度専門型インターンシップを新たなインターンシップとする

この3点です。

1点目の定義は、就業体験を前提とすること、2点目はオープン・カンパニーの名称に変えること、3点目は高度な人材の採用選考も視野に入れています。

細かい内容は同報告書に譲りますので、ご興味ある方はそちらをどうぞ。

産学協議会「2020年度報告書」より。タイプ3・4が2023卒から新設されることになった
産学協議会「2020年度報告書」より。タイプ3・4が2023卒から新設されることになった

なお、本稿では、以降、1日インターンシップの表記で統一します。

◆定義厳格化でインターンサイトが面倒に

このインターンシップの定義厳格化により、2023卒インターンシップサイトは、企業にとって面倒なものになりました。

採用コンサルタントの谷出正直さんによると、定義厳格化が23卒インターンシップに影響が出たかどうかについては、そこまで出ていないとのこと。

「まだ影響は出ていません。たとえば、マイナビ2023の『インターンシップとは何か?』の説明は、これまでのインターンシップの捉え方と同じです。それに、1dayインターンシップという名称を使わないことは昨年3月の決定です。リクナビ、マイナビ、キャリタスの各サイトの表記が変わったこと、1dayインターンシップという名称を使わないようにしたことで、今年、さらに浸透した形になります」

ただ、企業側に取材すると、

「就業体験できるかどうか、やたら誓約書が飛び交うことになった。2022卒向けに比べて2023卒向けは手間という点では相当にかかる」(機械)

などの恨み節が出てきます。

◆就活生はナビ検索だけでは損をすることに

この定義厳格化、就活生にも大きな影響が出ています。

単に「1日インターンシップ」が「1day仕事体験」「オープン・カンパニー」などの名称に変わった、というだけではありません。

2022卒のインターンシップに比べ、就活生はもうひと手間、余計にかかることになりました。

具体的には、インターンシップサイトで企業を検索するだけでは、不十分。

これに加えて、「企業マイページ(ナビサイト上のものではなく企業独自のもの)を登録」または「選考フローにあるインターンシップ説明会に参加」のどちらかが必要です。

まず、前者の企業マイページについて。

企業マイページとは、企業が自社で運営する情報管理システムです。

就職情報サイトを利用しない企業の選考に参加する場合は、この企業マイページへの登録が必須です。

一方、就職情報サイトを利用する企業の場合、就活生は「とりあえずエントリー(ブックマーク)」ということが可能です。

2022卒までは、とりあえずエントリーをした、インターンシップサイトから日程等を確認することが可能でした。そして、企業から「企業マイページに登録してください」とのメールが来ても、登録しないまま、インターンシップ(または1日インターンシップ)に参加することが可能でした。

ところが今年は定義が厳格化しています。

そのため、企業からすれば、本来、実施したい1日インターンシップをインターンシップサイトで告知できません。

そもそも、インターンシップサイトの掲載日程も「日程随時」などが増えました。

リクナビを運営するリクルートは「弊社では「日程随時」が昨年とくらべて大きく増えているという事実は確認できませんでした」(広報)とのこと。

ただ、就活生からは「日程随時って何ですか?」との質問が増えているので、掲載日程が変わっていることは確かです。

インターンシップサイトでは「日程随時」としておき、就活生には、企業マイページに登録を促す、この企業マイページ上で、1日インターンシップの告知をする、これが2023卒インターンシップの大きな変化です。

企業マイページでの告知内容は就職情報会社が関与するかどうか、リクルートとマイナビに取材したところ、それぞれ以下の返答がありました。

企業マイページはリクナビ2023とは別に存在している「企業様のページ」になりますので、リンクを張るかどうかは、企業様にてご判断いただく内容となります。

ただし、当社は、学生の就職活動の負担軽減や早期化の助長を防ぐことを第一に、リクナビ上で収集した個人情報はインターンシップや1day仕事体験について使用するよう、企業様へご連絡しております。

また、リクナビ2023掲載において就職活動開始前に採用活動につながる表記や採用活動と思わしき表記はできないことや、リクナビ2023を通じた学生の個人情報取得に関しても、インターンシップ・1day仕事体験応募受付可能期間外に個人情報を取得することはできない旨、契約時に企業様へご案内し、内容に同意をいただいた上で掲載しています。

上記が守られていない企業様につきましては、「掲載を取りやめる」などの対応をさせていただいております。

(リクルート・広報)

追加機能をご利用いただければ可能です。

ただ基本的に、広報活動解禁前の採用情報へのリンクはお控えいただくようご案内しております。

(マイナビ・広報)

リクナビに限らず、他社でも企業マイページの取扱いはこれとほぼ同じでしょう。

もちろん、1日インターンシップを展開したい企業からすれば、実際には企業マイページで好きに告知することになります。

それに、全ての就職情報会社が求人協に加盟しているわけではありませんし。

◆人数減っても企業は「十分」

インターンシップサイトで1日インターンシップを告知できない、そうなると、企業からすれば十分な就活生を集められず、母集団を形成できません。

そのため、オープン・カンパニーなどの呼称が定着するだけでなく、就業体験できるインターンシップが今度こそ定着する、そう解説する記事もありました。

ところが、こうした解説や定義の厳格化は全く意味がない、との意見が採用担当者から多数出ています。

確かに、企業マイページまで登録する就活生はインターンシップサイトだけだった2022卒に比べれば各社とも減っています。それで企業が困っているか、と言えばどうもそうではないようです。

「人数は減った。それでは困る、と経団連や産学協議会は企業側が折れることを期待したのだろう。が、人数を集めさえすればいい、という発想はあまりにも古い。うちだと、確かに2022卒のエントリー数と2023卒の企業マイページ登録者数は半減した。それでも、その分、就活生の質は確実に上がっている。うちとしては半減しても、それで困ることは特にない」(IT)

「企業マイページ登録者数は2022卒のエントリー数に比べて減りました。減った分、学生の質は上がっていて、うちとしては歓迎しています。役員に報告すると、『そんな面倒な話になるなら、いっそ、就職情報サイトを使うのはやめたらどうか』との意見も出ています。結局、定義の厳格化で損をするのは就職情報会社さん、それに企業マイページ登録を知らない・しない、正直すぎる学生ではないでしょうか」(食品)

どうも、経団連や産学協議会の思惑とは違う方向に進んでいるようです。

◆選考フローで「インターンシップ説明会」という妙手

就活生にとって、2022卒と2023卒が大きく異なるのは、企業マイページ登録だけではありません。インターンシップサイト説明会も2023卒の大きな特徴です。

6月にインターンシップサイトがオープンしてから、「実施時期が12月とか2月なのに、掲載を始めている企業がある。これはどういうことか?」との質問が就活生から寄せられました。

確かに6・7月から冬開催のインターンシップについて、サイトに掲載する意味はありません。

私は最初、企業名を告知したいだけか、と考えていました。

しかし、こうした企業は、なぜか、選考フローを発表しているところが多く、その中に「インターンシップ説明会に参加」が入っています。

そこで、取材を進めたところ、「インターンシップ説明会」と掲載している企業の一社が匿名を条件に答えてくれました。

去年までは1日インターンシップだったものをインターンシップ説明会、と看板を変えているだけです。これなら、ナビにも掲載できるので。説明会参加の就活生には、その場で企業マイページの登録を促します。そこで、改めてセミナー・説明会の告知をしていきます。去年に比べて面倒ですが、致し方ありません。

なんか、酒類提供の自粛要請があっても、ウーロンハイを「ウーロン茶濃いめ」と称して出すようなものです。

確かに、産学協議会は、インターンシップ説明会を実施してはならない、とはしていません。

いや、どの企業が始めたかはわかりませんが、うまい手を考えたものです。

定義の厳格化、そして、それに伴う「企業マイページ登録」「インターンシップ説明会」の増加、これがインターンシップ氷河期につながる要因の一点目になります。

◆就活生が敬遠するオンライン開催、企業は拡充へ

インターンシップ氷河期の要因、二点目としては、企業と学生の思惑のズレが挙げられます。

企業からすれば、コロナ禍以降、オンラインでの1日インターンシップやセミナー、初期選考を拡充する方向にあります。感染リスクを考えれば、オンライン開催の拡充は当然でしょう。それにオンライン開催だと、コロナ禍以前は採用しづらかった地方の就活生も参加しやすくなります。

一方、対面形式であれば、定義の厳格化もあり、実施するとしても少数での開催が中心となります。手間がかかる以上、これも無理はありません。

それと、インターンシップの夏開催については、1日タイプのものを含めて「秋・冬のセミナーや選考につながりにくい。だから実施しても意味はない」と否定的な意見、「早期に動く就活生は結果的に大学の偏差値とは無関係に優秀・熱心な就活生が多い。それならば、夏実施のインターンシップも意味はあるのでは」との肯定的な意見、それぞれ分かれます。

全体としては、横ばい傾向にあるようです。

インターンシップ実施月のピークは、主要サイトを調査したところ、例年通り「8月」がトップです。今年は各月で前年を上回り、「6月」「10月」「11月」がより上回りました。

掲載社数も、インターンシップサイトオープン時点(6月1日)で、延べ1万5000社。これは前年比99%でほぼ横ばいです。(採用コンサルタント・谷出さん)

企業の実施状況(8月)は、前年から微増程度になるのではないでしょうか。

それでもオンライン1Dayであれば、参加人数の制限は緩いので、参加学生割合は22卒よりアップすると考えます。(文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所長・平野恵子さん)

一方、就活生からすれば、オンライン開催は「大学がオンライン授業なのにインターンシップまでオンラインで受けたくない。どうせなら対面がいい」と考えます。

しかも、対面形式で、内容は就業体験が可能なものを就活生は希望する傾向にあります。

企業は感染リスクを考えてオンライン・1日タイプで実施したい。

就活生は、対面形式・就業体験型を希望する。

この思惑のズレがインターンシップ氷河期を招いているのです。

インターンシップ実施日数が一番多いのは、「1日」の1day仕事体験。「複数日程」は、「1か月」を除いて、前年を下回りました。

オンラインインターンシップ実施企業数は、マイナビは掲載企業の約44%、キャリタスは掲載企業の約28%。

企業からすれば、「オンラインインターンシップ」=「1日のセミナータイプのインターンシップ」となり、セミナー型はこれまで同様というか、より行われるようになり、複数日程を行う企業は減少しています。

全体でみると、『1day仕事体験』『オンラインインターンシップ』としてセミナー型が増えています。

もし、就活生が1日のセミナータイプやオンライン開催を敬遠する、ということであれば、インターンシップ全体の参加者数が増えていることもあるので、志望企業に受かりづらい、と感じるのは無理もありません。(採用コンサルタント・谷出さん)

◆定義の厳格化は愚策でしかない

定義の厳格化、企業と就活生の思惑のズレ、この2点からインターンシップ氷河期につながる事情をここまで解説しました。

率直に言って、私は定義の厳格化は、意味のない、愚策と考えます。

1998年に旭化成が1日インターンシップを始めてから23年間、日本の就活市場で1日インターンシップは完全に定着しています。

それを、「そんなものは就業体験ではない」だのなんだのと、定義を厳格化したところで、消滅することはないでしょう。

それどころか、企業マイページの登録、インターンシップ説明会の実施など、就活生からすれば、分かりづらさに拍車をかけ、混乱を招いているだけです。

結果、損をするのは「インターンシップ=就業体験」と思い込んでいる(思い込まされている)就活生や大学、そして、定義の厳格化に付き合わされる企業や就職情報会社です。

定義の厳格化を決めた産学協議会は、大学教育と採用を守ろうとして、結果としては何も守れていないことに、いつ気づくのでしょうか。

◆23卒就活生はどうすればいい?~その1・企業マイページはひたすら登録

定義の厳格化は実にくだらない、愚策です。

とは言え、23卒就活生(あるいは現在、2年生の24卒就活生も同じ)は、この愚策がある、という前提で就活を進めなければなりません。

その対策としては点あります。

まず、1点目は「企業マイページの登録」です。

就活生からすれば、面倒であっても、企業マイページで1日インターンシップの情報を取ることができます。

志望度が低いとしても、今年は登録しておく方がいいでしょう。

◆23卒就活生はどうすればいい?~その2・インターンシップ説明会もダメ元で参加

2点目はインターンシップ説明会への参加です。実質的には1日インターンシップであるため、こちらも参加していくといいでしょう。

◆23卒就活生はどうすればいい?~その3・オンライン開催を敬遠しない

3点目はオンライン開催のインターンシップを敬遠しないことです。

全てでないにしても、オンライン開催の企業が多い以上、参加していく方がいいでしょう。

◆23卒就活生はどうすればいい?~その4・評価の高い逆求人型サイトも登録

4点目は、逆求人型サイトの活用です。

逆求人型サイトとは、学生が基本情報のほかに自己PRなどを登録。それを見た企業が気になる学生に対して、選考や説明会参加のオファーを出す、という形式の就職情報サイトです。従来型のサイトと異なり、学生→企業ではなく、企業→学生であるため、逆求人型と呼ばれています。

この逆求人型サイトは、小規模な企業のものも含めて乱立状態でした。が、2022卒で大きく抜け出したのが、offerbox(iplugが運営)キミスカ(グローアップが運営)です。

offerboxのトップページより。石渡調査では地方の理工系学生の支持も強かった
offerboxのトップページより。石渡調査では地方の理工系学生の支持も強かった

「いくつか登録したけど、中にはオファーがあまりない逆求人型サイトもあった。その点、offerboxとキミスカは大手企業も多く、利用してよかった」(22卒・関西大・男子)

など、学生側の評価は高いです。

企業側も同じで、私が取材したところ、offerboxが頭一つ抜け出し、キミスカがその後を追う、それ以外の社は大きくリードを許している状態のようです。

キミスカのトップページ。石渡調査では関西より首都圏の学生からの支持が厚かった
キミスカのトップページ。石渡調査では関西より首都圏の学生からの支持が厚かった

なぜ、逆求人型サイトが企業に利用されるのか、それは選考・説明会のオファーが学生次第だからです。

「逆求人型サイトは、説明会や選考のオファーが企業側の好きにできる。それと結果論だが、offerboxやキミスカは良質な学生が多く、ハズレがない」(IT)

「マイナビやリクナビなどは大学が学生に対して強制的に登録させます。その点、逆求人型サイトは自己PRの記載など、就活生の手間がかかります。その分、しっかりした学生が多い印象を持っています」(商社)

◆23卒就活生はどうすればいい?~その5・業界は無理に絞らず、広く浅く

インターンシップは就業体験のものだけでなく、『1day仕事体験』『オンラインインターンシップ』も含めて参加を検討してみてください。

インターンシップ期間中は準備期間でもあるので、まずは、企業だけでなく、仕事や業界、社会そのものを知り、選択肢を増やすことです。

その中から興味の持った企業(業界、仕事、社風、価値観)で絞込みをしていってください。

その後、また興味ある要素で広げ、絞込みをする。を繰り返していくといいでしょう。

人や情報と出会い、自分が共感できること、できないことに分けて、その理由を言語化して把握する中で、行動することが納得いく就活につながると考えています。(採用コンサルタント・谷出さん)

私も同感で、3年生夏~秋の就活は広く浅く、で十分でしょう。

それと、別稿で改めますが、業界研究の意義は崩壊しつつあります。一部の専門的な業界・職種ならまだしも、多くの業界・企業では結果的に、複数の業界を志望し内定を得る就活生が増えています。

そのため、無理に業界を絞る必然性はあまりありません。

では、志望業界が不明ならどうすればいいでしょうか。これも谷出さんに聞きました。

学生からの質問で、特に興味のある業界、仕事がないんですけどどうすればいいですか?という質問が多くみられます。今週、行ったキャリアの授業の中でも質問を受けました。

その時のアドバイスの1つは、

「3業界×3つの従業員数規模=9社のインターンシップ」に参加する、というものです。

業界で選ぶのはすべてではないですが、分かりやすさ、という点で目安になります。

その業界は、3つをランダムに選ぶもよし。もしくは、「知っていて興味のある業界」「名前は知っているが興味のない(知らない)業界」「全く聞いたことのない(知らない)業界」

の3つから業界を選ぶことを勧めています。

従業員数規模は、これも目安ですが、「1名~300名」「300名~1000名」「1000名以上」。

ここに加えるなら、ベンチャー(スタートアップ)企業を加えてもいいでしょう。

9社参加すれば、間違いなく視野は広がります。(採用コンサルタント・谷出さん)

もちろん、夏休みに他に予定があれば、9社無理に参加しなくてもいいでしょう。

夏休みは就活が全てではなく、アルバイトやサークル、ゼミ活動などもあるはず。

それぞれ、自分にとって何が必要か、何社のインターンシップに参加すればいいか、就活生がそれぞれ考えてみてください。

加筆・修正(2021年7月12日15時45分)

本稿で、リクルートと表記すべきところをリクルートキャリアと記載しておりましたので該当部分を修正しました。

リクルート社並びに関係者の方にお詫びします。

加筆・修正(2021年7月13日13時15分)

本稿で、「マイナビからの回答は、なし」としていた部分について、こちらのメール確認不足により、期日までにいただいていた回答を見落としていました。

そのため、該当部分を削除・修正し、いただいた回答を加筆しました。

マイナビ社並びに関係者の方にお詫びします。

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

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