その香りが誰かを苦しめているかも。香害を防ぐ、柔軟剤の正しい使い方
洗濯研究家の平島 利恵です。
お気に入りの香りの柔軟剤を使った衣類を身にまとうと、気分が良くなりますよね。香りは古くから、心や体を癒すためにも使われてきました。
ですが、香りの感じ方には個人差があり、ご自身にとっては心地よい香りでも、他の方にとっては不快感を与えたり、体調不良を引き起こす原因になってしまうことがあります。
「香害」とは?
「香害」とは、合成洗剤や柔軟剤、化粧品類などに含まれる合成香料(化学物質)によって、頭痛や吐き気など、さまざまな健康被害が誘発されることです。
兵庫県宝塚市教育委員会が市内小中学校の児童・生徒の全保護者にアンケートを実施した結果、「人工香料に不快を感じたことがある」という回答が27.8%、「人工香料により体調不良を起こしたことがある」という回答が7.8%寄せられました。
特に他の児童と共用で使う給食の白衣への意見が多く、「柔軟剤の臭いが強く、頭痛や吐き気など気分が悪くなる」「柔軟剤や洗剤のニオイに敏感で咳が止まらなくなったりアトピーが悪化する子がいるため、(共用の白衣には)柔軟剤の使用を禁止してほしい」という意見も寄せられています。
「香害」になりうるもののひとつに、私たちの生活に身近な柔軟剤があります。周りの方に配慮しながら、柔軟剤を正しく使うためにはどうしたらよいのでしょうか。
柔軟剤の本来の役割とは?
柔軟剤は、衣類を柔らかくする仕上げ剤です。
柔軟剤を使用することで、
- 肌触りが良くなる
- 衣類の毛羽立ち・毛玉を防ぎ、風合いを保つ
- シワがつきにくくなる
- 摩擦が抑えられ、静電気を防止する
- 埃・花粉などの付着を減らす
というメリットがあり、衣類の繊維を整える効果があります。
最近は、魅力的なフレグランス効果を謳った製品も増え、香りづけのために柔軟剤を使う方もいらっしゃると思います。ですが、香りの強さには注意が必要です。
無香料の柔軟剤も発売されているので、香りに疲れた方や、柔軟剤本来の役割だけを感じたい方は無香料を選択するのもおすすめです。
柔軟剤を使ったほうがいい衣類
これからの季節に活躍するニット素材やおしゃれ着はもちろん、柔軟剤には静電気を抑え、花粉やホコリがつきにくくなる効果もあるためアウターに使用するのもおすすめです。
- ニット素材のもの
- おしゃれ着
- アウター
柔軟剤を使わないほうがいいもの
柔軟剤で繊維をコーティングすることにより、吸水力や撥水耐火の機能が低下します。また、柔軟剤は静電気を抑止するため、静電気で埃を集めるマイクロファイバーも機能が低下します。
- タオル
- 撥水加工・耐火加工されたもの
- マイクロファイバー
柔軟剤を使っても衣類が臭う理由
洗濯の際に落とし切れなかった雑菌の繁殖がニオイ・黒ずみの原因です。
柔軟剤を使う時には、衣類が清潔に洗われている必要があります。洗い・すすぎが不十分で汚れが残っている衣類に柔軟剤を使用すると、汚れごとコーティングしてしまうため、衣類が黒ずんだり、嫌なニオイが発生します。
汚れを落とすのは洗剤の役割
消臭を謳った柔軟剤も増えていますが、コンディショナーで頭皮の汚れを落とすことができないように、衣類の汚れそのものを落とすのは洗剤の役割です。
ニオイや黒ずみが気になる方や、柔軟剤を入れても香りがしないという方は、洗濯の際に次の3つのことを見直してみてください!
■衣類量
衣類量は少ないほど、汚れが落ちやすくなります。通常の洗濯で7~8割、汚れやニオイが気になるものは5割程に減らして洗濯しましょう。
■すすぎ回数
1回すすぎではすすぎが不十分で、すすぎ切れなかった汚れや雑菌が衣類に戻ってしまいます。すすぎの回数は2回以上、汚れの酷いものを洗うときは注水すすぎ、お肌の弱いご家族がいる場合は3回すすぎがおすすめです。
■洗濯槽の掃除
洗濯槽が黒カビだらけでは、どんなに丁寧に洗濯をしても、洗濯槽の黒カビが衣類に移ってしまいます。洗濯槽は黒カビが繁殖しやすい場所なので、月に一度はクリーナーで掃除をしましょう。
洗剤・柔軟剤は適量を
洗剤も柔軟剤も、適量使用することが大切です。
特に、衣類のニオイが気になるからと柔軟剤を規定量以上入れるのは絶対にNG!
多すぎる柔軟剤成分は、洗濯槽の黒カビの原因にもなり、さらに衣類が臭う要因となります。
衣類を清潔に洗った上で、適量の柔軟剤を使用し、誰かを苦しめない香りのまとい方をもう一度考えてみませんか?