阪神・石井将希投手 早く1軍で見せたい、持ち味の“投げっぷり”
きのう10月5日に行われた巨人戦(甲子園)で、阪神3年目の高橋遥人投手がファンを沸かせてくれました。投げては3安打1失点に14三振を奪うプロ初完投勝利!打ってはプロ初タイムリーを含む2安打!続くヒットで一気にホームへ滑り込む走塁!そして、ほのぼのキャラ全開のお立ち台まで、甲子園にいらした方も、テレビ観戦の方も、存分に楽しまれたでしょう。高橋投手のあのナチュラルさ、本当に癒やされますよね。
さて、そんな高橋投手と同期の石井将希投手がきのう5日、1軍に昇格しました。9月30日に支配下登録された石井投手ですが、今回は同じ日に支配下復帰を果たして4日に昇格、即登板した横山雄哉投手と入れ替わる形での昇格です。(横山投手の記事はこちらからご覧ください。→阪神・横山投手が3年半ぶりの1軍登板「感謝の気持ちをボールに込めて」)
きのうは高橋投手が完投したので石井投手の登板機会はありませんでしたが、同期の姿を目に焼きつけて奮起しているはず。近いうちに初めての1軍マウンドも経験できると思いますので、楽しみにしたいですね。
ではまず、きのうの試合前に広報から届いた石井投手のコメントをご紹介します。
Q.1軍に合流し、甲子園のグラウンドに入った時の気持ちは?
「最初は緊張しましたが、体を動かしていくうちに体も緊張もほぐれていったかなと思います。ファームでも何度か甲子園で試合をさせてもらったので、同じ気持ちで投げられるようにしっかり準備したいです」
Q.周囲からどのような言葉を掛けられた?
「矢野監督やスタッフの方々からも、とにかく思い切って頑張れ、と声を掛けていただいたので、打者に対して思い切って投げ込んでいきたいと思います」
Q.1軍初登板で心掛けることは?
「打者に対して向かっていく姿勢や投げっぷりが自分の持ち味だと思っているので、その持ち味を1軍のマウンドでも発揮できるように頑張りたいです」
12試合連続無失点の安定感
石井投手は上武大から2017年の育成ドラフト1位で入団しました。同期には馬場皐輔投手、高橋投手、熊谷敬宥選手、島田海吏選手、谷川昌希投手、牧丈一郎投手がいます。石井投手は阪神が6年ぶりに獲得した育成選手だったんですね。そして3年目の今季、期限ぎりぎりの9月30日に支配下登録され、背番号は121から93に変わりました。ここで各年度の成績を振り返ってみましょう。
【2018年】
12試合(先発1、完了5) 14回
0勝0敗0S 防御率 9.00
安打22(本塁打0)、三振7、四球10
失点14(自責点14)
【2019年】
48試合(完了10) 41回2/3
2勝2敗1S 防御率 3.46
安打37(本塁打5)、三振21、四球18
失点17(自責点16)
【2020年】※10月5日現在
20試合(完了3) 19回1/3
0勝0敗0S 防御率 1.86
安打14(本塁打0)、三振12、四球8
失点5(自責点4)
9月30日に、支配下登録選手となった心境を聞かれ「正直ホッとした気持ちが一番」だと答えた石井投手。2017年の育成ドラフト1位で入団して3年目を迎え「1年目は何もできずに終わってしまったのですが、昨年ファームで48試合とチームで一番投げさせていただき、色々な場面で使っていただいて自信がつきましたし、ことしに入り課題も明確に見えてきたこともあって、しっかり投げられているのかなと思います」と振り返っていました。
支配下登録された9月末時点では17試合に登板して17イニングを投げ勝ち負けはなし。安打12(本塁打なし)、三振10、四球7で失点3(自責点2)、防御率1.06と素晴らしい成績でした。さらに、新しい背番号「93」のお披露目となった10月1日も、鳴尾浜のオリックス戦で登板して「無意識のうちに力みがあったかも…」と言うように1安打されながらも1イニングを0点に抑えて、防御率は1.00とまた上がっています。
しかも、これで8月9日のウエスタン・広島戦(由宇)から12試合連続無失点というのもすごい!この間に2連投が2度、3連投も1度あったので、試合結果を見ていると常に抑えているという印象ですね。
新背番号で連続無失点を12試合とした翌日の10月2日、広島戦(由宇)にも登板した石井投手。1対1で迎えた7回に伊藤和投手が四球と犠打、捕逸などで1死三塁として、そのあとを受けた石井投手は四球とヒットで1人還し、三振を奪って2死としますが、走者を2人残して降板。代わった高野投手が2点三塁打を浴びたため、約2か月ぶりに失点しました。
しかし4日の広島戦では、6回に登板すると先頭を味方のエラーで出したものの後続をピシャリと断って無失点!今季は、開幕後に行われた非公式戦(社会人や大学との練習試合)でも失点していません。そんな結果をもって、きのう5日に1軍へ出場選手登録されたわけです。
チーム最多登板で自信を得た昨季
横山投手と同じく、石井投手も昨年7月に取材させてもらった時の話をご紹介します。またまたスポニチ大阪版紙面で書いた内容と重なる部分もあるかと思われますので、ご了承ください。
昨年は7月12日の時点で、28試合に登板して防御率が1.82でした。最終的にはチーム最多の48試合に登板して、防御率が3点台になったものの、2018年はシーズン12試合で防御率9.00ですから、大きなステップアップですね。
話を聞いた時、本人も「ことしは遠征にも全部連れていってもらって、すべての試合でブルペンに入っています」と、それがとても充実している様子でした。でも変わったのはそれだけでなく、登板する場面もしかり。1点リードとか同点など接戦の終盤に投げたり、ランナーがいる状況で出ていくこともあり「本当にいろんな場面で投げさせてもらって、すごくありがたい」と語っていました。
たとえ厳しいシーンでも、1年目のようにランナーを出して自ら崩れていくようなことはありません。しっかり抑えて戻ってくる姿は本当に頼もしい限りですね。今季はさらに安定感が増したように感じますね。本人がありがたいと言うように、様々な場面で投げた経験が何より自信になったのでしょう。
引き続き昨年夏の話ですが、香田ファーム投手コーチは当時の石井投手について「うまくなりたい!一日でも早く支配下選手になりたい!という気持ちと、それに取り組む姿勢が彼を動かしています」と分析しました。「躍動感を出していこうと言っているんですよ。育成から支配下にと思うなら、バッターに向かっていく気持ちだけじゃなく、ダイナミックなフォームも必要だと」。そして「いろんな場面で投げられるようになって、信頼感が出てきたんじゃないかな」と香田コーチ。信頼感というのはピッチャーにとって、すごく嬉しい言葉ですね。
実は気持ちを前面に出したいタイプ
また高橋ファーム投手コーチはこんなことを話しています。「春先の彼は、まだちょっと“よそいき”でしたね。育成選手なら、もっとガツガツ来てほしかったのに。去年のこの時期から、それじゃダメだ。ガツガツ来いと言ってきて、今ようやくですかね」。ガツガツですか?いつも穏やかに微笑んでいる印象の石井投手なので、あまりガツガツというイメージがないような…。
でも石井投手本人が言うには「1年目は遠慮もあって、あまり自分を出せなかったんですけど、ことしはガツガツいこうと思って練習の時から声を出してきました!」とのこと。そうなんですね。無理をして?「いえ、もともと気持ちを前面に出したいタイプですよ。すかして投げるのは嫌なんで」。すかして投げるって、たとえば誰だろう?と思って聞いてみましたが、そこはサラリとかわされた記憶があります(笑)。
この取材をした昨年7月は、ちょうどリハビリを終えた横山投手の復帰時期と重なり、高橋コーチは「石井にプレッシャーもかけていますよ。横山が戻ってきたぞ、出てきたぞって」とニヤニヤ。高橋コーチ、何だか楽しんでいませんか?「フォアボールを出さないように、それと向こうが2三振なら3三振を取らないと負けるぞ!って、プレッシャーをかけました」
同じ左腕の横山投手が実戦復帰したことも、きっと刺激になったでしょう。高橋コーチは「育成から支配下でなく、1軍に上がるための努力をしてほしい」というエールを送りました。あの夏から1年が過ぎ、横山投手とともに2ケタの背番号を手にした石井投手。今回は入れ違いでの1軍昇格ですが、これから2人で競い合う姿も楽しみにしています。
<掲載写真は筆者撮影>