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ビジネスチャンスは柔らか発想から、自宅も賃貸住宅まで付けた美容室

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:Paylessimages/イメージマート)

 ちょっと発想を変えてみればビジネスチャンスは広がる・・・その好例といえるのが美容室付き賃貸併用住宅である。

|月7万円からの支払いで自宅兼美容室

 独立して自分の美容室を持ちたいと考えている美容師は多いそうだ。しかし店を出すとなると、最大の問題となるのが資金にちがいない。しかし、支払いは「月7万円から」を謳う物件企画がある。投資家向けのアパート・マンションの開発・分譲をてがけるフロンティアハウス(本社:神奈川県横浜市)が企画する「My Home&Salon」である。

 この物件は店舗だけではない。マイホームも付いている。物件とマイホームの両方が手にはいり、それでも「月7万円から」なのだ。それが実現できる理由を、フロンティアハウスのアセットコンサルティング事業本部商品企画チーム主任の飯塚謙太さんは次のように説明する。

「まずは賃貸住宅を付けたことです。家賃収入が得られますから、それをローン返済の一部に当てられますから、返済額を安く抑えられるわけです」

 美容室というと、そこからの収入ばかりを考えがちだが、発想を広げてみれば他にも収入を得られる手段はあるというわけだ。これだけではない。飯塚さんが続ける。

「賃貸の物件だとアパートローンを利用することになりますが、それでは金利が2%くらいと高めになってしまいます。しかし住居スペースも付けて、そちらの面積が広いと住宅ローンの適用が可能になるので、金利は1%くらいに抑えられます。月々の支払いを安くできるわけです」

「住居も付いているのに安い」ではなく、「住居も付いているから安い」なのだ。まさに、発想の転換である。

 とはいえ、美容室となると立地条件を気にするのが、これまでの発想である。店を持つ以上は繁盛してもらわなくては困るので、集客のためには人通りのある場所を考えがちだ。

 そうなると人通りのある駅に近いところと考えてしまうのが従来の発想で、そうなると当然ながら地価も高くなってしまう。家賃収入があり、金利を低く抑えられるとしても、なかなか「月7万円から」は難しい気がしてくる。

 だいいち、そんな土地が駅前に都合よく見つかるとも思えない。やはり夢物語・・・という気がしてくる。しかし、その懸念にも、飯塚さんは次のように答えた。

「駅前である必要はないんです。今回の企画は当社が得意とする神奈川県を中心に考えていますが、駅から少し離れるだけで空いた土地や空き家はけっこうあります。土地探しから当社がやりますから、そこも心配いりません」

 そう言われても、納得できないのではないだろうか。開業してみたものの客が来ないのでは、たまったものではない。恐怖ばかりが前面に立ってしまいそうだ。

|駅近くでなくても集客できる秘訣

 もちろん、そこを考慮していないわけではない。そこを考慮した仕掛けも、「My Home&Salon」にはある。

 それは、この物件企画がアレーディア(本社:神奈川県茅ヶ崎市)との共同企画だということだ。同社は茅ヶ崎で人気の美容室を経営している。同社の代表である川井浩二さんが語る。

「うちの美容室も駅からだと歩いて15分から20分くらいかかるので、けっして便利なロケーションではありません」

 にもかかわらず、川井さんの美容室は常に満席状態だという。それは、ただ顧客が来てくれるのを漫然と待っているわけではないからだ。川井さんが続ける。

「まず、ネットの予約サイトを活用しています。ただ掲載しているだけではダメで、口コミ欄に投稿してもらうために工夫と努力をしています。さらにYouTubeにも投稿していて、そこからの来客もあります。そこでも、さまざまに工夫しています」

 川井さんのYouTubeでのチャンネル登録者数は、13万人を超えていいる。そこからの来店客も少なくないのだ。そのノウハウでもって川井さんからのサポートを受けられるのが、この物件企画の魅力でもある。売ったら終わり、ではないのだ。

 飲食店もウェブで検索して出かけるスタイルが定着してしまったといってもいい。そうなると、交通の便が多少悪くても影響しない。美容室も同じで情報で集客できる時代になってきており、そうなると交通の便が良くなくてはいけないというのは過去の常識でしかなくなってきている。

 そうしたなかで重要になってくるのはロケーションを選択するための情報網だったり、集客するための情報発信力ということになる。それをフロンティアハウスとアレーディがサポートするのだ。「My Home&Salon」は従来の不動産物件の概念を飛び出した、情報サポート付きの物件といえる。

 美容室だけではない。発想を転換し、どう情報を活かしていくのか、そこからビジネスチャンスが広がっていく時代になってきている。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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