殺虫剤が届かない...「新型コロナウイルス」で深刻化するアフリカのバッタ被害
「外出禁止令」に「ソーシャル・ディスタンス」と、新型コロナウイルスの拡大により人々の接触を少なくする努力が世界中でなされています。
人々が家にとどまることで好都合なのは、野生動物です。人のいない場所は、彼らにとっては楽園。普段なら人目をはばかって歩けない町中を、堂々と闊歩する動物も現れています。イギリス北部では、のんびり幸せそうに歩くヤギの集団、パリではイノシシの親子、チリではピューマ、そして奈良県ではシカが住宅地に出没しています。
バッタの脅威
同じように、この混乱に乗じてアフリカ東部で陣地を広げているのが「サバクトビバッタ」です。
2019年末頃から、ソマリアやケニア、エチオピアなど「アフリカの角」地域を中心に、数十年来で最悪のバッタの大量発生が起きていました。
大きな群れだと、東京23区の4倍に匹敵する大きさで、その中には80億匹のバッタがひしめき、350万人分の1日の食糧を食べ尽くしてしまうといいます。
恐ろしいのはその大食漢ぶりにとどまりません。バッタの大群は一日で130キロも移動し、3カ月ごとに20倍のペースで増えていくのです。
エチオピアで穀物の40%がバッタに食い荒らされてしまうなど、アフリカではすでに大変な食糧難が発生しています。
コロナウイルスの影響
そして追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスが事態をより一層深刻化させています。その理由は以下のようなものです。
1. 各国政府が国境を封鎖せざるを得なくなり、貨物輸送に支障が出ている。そのため殺虫剤や電動噴霧器などの配送が大幅に遅れている。
2. ウイルスが蔓延しているアジアや欧州で、殺虫剤の生産にかかわるサプライチェーンが混乱している。
3. 南アフリカでロックダウンが起きており、バッタの監視に不可欠なヘリコプターの確保が困難な状態となっている。
国連食糧農業機関(FAO)は、現在の制御操作が失敗に終われば、今よりもさらに400万人が食糧難に陥るであろうと、その深刻な状況を伝えています。
聖書とバッタ害
『バッタ(いなご)は一面黒くなるまで地面を覆った。雹の被害を免れた農作物や木の実をすべて食い尽くしたので、エジプトのどこにも緑のものは残らなかった。』
これは旧約聖書「出エジプト記」にある一節ですが、国連は、今起きている被害の程度が聖書レベルだと発言しています。ただ新型コロナウイルスの感染拡大も続いている今、そのレベルでは済まされなくなるかもしれません。