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大本命・藤井聡太二冠(19)ついについに竜王戦挑決進出! 準決勝で八代弥七段(27)に完勝

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月6日。大阪・関西将棋会館において第34期竜王戦・本戦準決勝▲八代弥七段(2組2位)-△藤井聡太二冠(2組優勝)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時に始まった対局は20時19分に終局。結果は96手で藤井二冠の勝ちとなりました。

 竜王戦本戦初出場でベスト4まで進んだ八代七段は、ここで敗退となりました。

 デビュー以来5期連続ランキング戦優勝という前人未到の偉業を達成している藤井二冠。ついに本戦でも挑決にまでたどりつきました。

 三番勝負で対戦するのは1組優勝の永瀬拓矢王座(28)です。

 藤井二冠の今年度成績は18勝4敗(0.818)となりました。

藤井二冠、恐るべき強さで完勝

 八代七段先手で、戦型は矢倉に進みました。

 藤井二冠が急戦を匂わせたのに対して、駆け引きの末、八代七段が先に動いていく形となりました。

 角交換のあと46手目。藤井二冠は自陣好位置に角を据えます。これがうまいカウンター。八代七段は飛車取りを避け、閑地の端に逃がします。進んでいくうち、両者の大駒のはたらきの違いが、形勢に大きな影響を与えました。

 54手目。藤井二冠は飛車を五段目に浮きます。遊んでいる先手の飛車とは対照的に、後手は飛車を大きく使ってうまく揺さぶります。

 八代七段は桂を跳ねる形をつくって、藤井二冠の飛を追います。対して藤井二冠は、今度はその桂頭をねらって攻めていきます。いつもながら王道の自然な指し回しで、リードを奪いました。

 68手目。藤井二冠が5筋の歩を突き出したところで夕食休憩に入ります。藤井二冠が先に席を立ち、盤の前に残された八代七段は、がっくりとうなだれるような様子を見せました。

 18時40分、対局再開。八代七段はさらに7分を使い、41分の消費時間で6筋の歩を取り除けます。対して藤井二冠は4分で7筋に歩を打ち、十字飛車を含みに巧みに攻め続けました。

 持ち時間5時間のうち、残り時間は八代1時間12分、藤井2時間1分。盤上の形勢も残り時間も、藤井二冠がはっきり優位に立ちました。

 矢倉からへこまされた八代陣はカニ囲いの形。その金銀3枚が利いている焦点に、76手目、藤井二冠は歩を打ち捨てます。これが教科書に出てくるようなきれいな攻め。金桂交換という駒得の実利まで得て、藤井二冠は着実に勝ちに近づいていきました。

 84手目。藤井二冠は得した金を打ち、相手の飛車を召し取ります。最後まで実に自然な流れで、勝勢を築きました。

 96手目。藤井二冠は八代陣一段目に飛車を打ちます。この王手を2分見つめていた八代七段。まだ詰みがあるわけではありませんが、攻防ともに見込みなしと見て、次の手を指さず、潔く投了を告げました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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